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熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

カマラ・ハリス:大統領候補指名受諾演説

2024年08月23日 | 政治・経済・社会
   シカゴで開かれている民主党大会の最終日の22日、大統領候補に指名されたカマラ・ハリス副大統領(59)が受諾演説を行った。黒人、アジア系として米国初の女性大統領を目指して、11月の大統領選で、共和党のドナルド・トランプ前大統領(78)と対決する。
   首席スピーチライターのアダム・フランケル氏の草稿に手を加えながら数週間かけて演説を練り上げてきたというのだが、さすがに検察官のキャリアーがものを言って弁舌さわやかで、感動的なスピーチであった。
   私は、NHKの放映を通じて、全公演を聴講して、解説も読んだ。
   参考にして、感想を述べたい。

   冒頭、母はインドからカリフォルニアへ渡ってきたと自分の生い立ちを語って、「さまざまな政治的な見解を持っている人がいることはわかっている。皆さんに知ってもらいたい。私はすべてのアメリカ国民のための大統領となることを約束する」と宣言した。
   そして「力強い中間層の存在がアメリカの成功に不可欠であることを私たちは知っている。そして、こうした中間層を築き上げることが大統領に就任した際の決定的な目標になる。 (A strong middle class has always been critical to America's success. And building that middle class will be a defining goal of my presidency .)中間層の家庭に生まれた私の思いだ」と述べて、アメリカ社会の根幹はミドルクラスの健全な存在であって、この繫栄あってこそアメリカ社会の活性化と未来があるとの持論を強調した。
   さらに「私は私たちの最も高い志で国民を束ねる大統領になる。人々を導き、耳を傾け、現実的で良識のある大統領になる。そして常にアメリカ国民のために戦う。それが裁判所からホワイトハウスまでの私のライフワークだ」と述べて、非常識極まりない対戦者を揶揄し、「政党や人種、性別などに関係なく、すべてのアメリカ人のために、懸命に働き夢を追い求めるアメリカ人のために、大統領候補への指名を受諾する」と述べ て、アメリカンドリームを匂わせた。

   「今回の選挙は私たちの人生において最も重要であるだけでなく、私たちの国の歴史において最も重要なもののひとつだ。トランプ氏は不真面目な男だ。しかし、彼をホワイトハウスに戻すことの結果は極めて深刻だ。(Trump is "an unserious man" and his return to the White House would have "extremely serious" consequences.) 彼が大統領だった時の混乱や災難だけでなく、彼が前回の選挙で敗れたあとに起きたことの重大さを考えてほしい」と述べて、さらに、恐ろしいと指摘したのは、「大統領公務なら免責」とする最高裁の判断。免責特権が幅広く認められる恐れがあり、大統領の権限が法律で制約されなくなると、「自分ファースト」でモラルを欠き常軌を逸した傍若無人な独裁者が、大統領になればどうなるのか。

   ハリスは、ガザ・イスラエル問題について、イスラエル支持とガザでの平和停戦に言及しながら、「私たちは、世界の歴史上、最も偉大な民主主義の継承者だ。」として、「前向きと信念に導かれ、愛するこの国のために、そして育んできた理想のために戦う」と述べた。ハリスの命の叫びである。
   トランプはNATOから脱退すると脅迫したが、、ウクライナやNATOの同盟国を強く支持する」と述べ、国際協調を重視する姿勢を示した。トランプのように、「暴君や独裁者にすり寄ることはない」 としたのが興味深い。

   移民政策については、 国境管理「法案を復活」 させ、人工妊娠中絶については、「復活法案 誇り持って署名する」として、
   ハリス氏は「ともに戦おう。投票に行こう。これまでで最もすばらしい物語の次の偉大な章を記そう」と述べて演説を締めくくった。 
   
   さて、今度のテレビ討論会でのハリスの対決戦略は、「検察官対重罪犯」で十分だと思う。
  ハリスは、元検察官という自らのキャリアに言及して、「女性を虐待する略奪者、消費者からだまし取るペテン師、自分の利益のために規則を破る詐欺師、あらゆる種類の加害者と私は対決した。だからドナルド・トランプのようなタイプを知っている」と、大統領経験者として史上初めて重罪で有罪評決を受けたトランプと、犯罪者と対峙してきた元検事の姿を浮き彫りにした。
   トランプは、ハリスが追い詰めた重罪犯の資格は十分に持っており、その追求だけで勝負がつく。

   トランプは、ハリスをバカ呼ばわりしているが、箔付のために大学進学適性試験(SAT)を替え玉受験して入学してウォートンを出た学卒より、加州大ロースクールを出た法務博士のハリスの方が知的水準は遥かに上のはずで、その上に、法廷に立った百戦錬磨の敏腕検察官、
   口から出まかせ嘘八百で生き抜いてきたトランプがどう対峙するか。

   また、トランプは、ハリスは共産主義者だとか、ハリス政権になれば、アメリカ経済を崩壊させるとか、第3次世界大戦を引き起こすとか、根も葉もない暴言を口走っている。
   2016年の選挙でトランプが勝ったのは、エスタブリッシュメントを否定して、アメリカの東部から中西部に広がる製造業の集積地帯「ラストベルト(Rust Belt)」で、中間所得層からの転落を恐れる多くの白人労働者の怒りと不満を浮かび上がらせて集票に成功したからであった。しかし、このトランプ戦術は賞味期限切れで、産業構造も労働環境も大きく激変していて、
   今回の選挙は、中間層の取り込み以上に、女性票やマイノリティ票や若年層票がキャスティングボートを握っており、浮動票の帰趨が選挙の結果を制しよう。
   トランプ、そして、保守党の戦略戦術、ビジョンや政策は、既に既知で手垢にまみれている。たとえ、バイデン政権の遺産であっても、今回のハリス演説に徐々に斬新さを加えて独自色を出して、民主党本来の福祉国家政策などのリベラル政策をブラッシュアップすれば、ハリスの勝機は向上するはず。
   A new way forward を、どう叩き付けて、後ろ向きのトランプを粉砕するか、
   とにかく、9月10日のテレビ討論会を期待したい。
   
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