熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

ハリス:中産階級活性化の経済政策

2024年08月20日 | 政治・経済・社会
   CNNは、 ハリス米副大統領は16日、庶民重視の経済政策を公表し、1億人を超える中産階級や低所得層の米国人を対象とした新たな減税計画を提案した。と報じた。
   また、副大統領候補にミネソタ州のワルツ知事を選んだことについて「米国を結束させる指導者で、中流階級のための闘士」を探していたと説明した。
   私の注目したのは、「中産階級重視」の経済政策である。

   ハリスのこの中産階級活性化の経済政策の詳細が分からないので、詳論できないが、しかし、かってアメリカには、中産階級の繁栄が、アメリカ社会の黄金時代を現出した時代があったのである。
   経済分析の余裕がないので、わがブログの一部を引用すると、
   第二次世界大戦後30年に及ぶ高度経済成長期には、経済とは、将来への希望を生み出すものであり、きつい勤労は報われ、教育は上昇志向で、より多くのより良い仕事を生み出し、殆どの人々の生活水準が上がり続け、米国では、他には見られないような巨大な中間層が形成されて、米国経済の規模が倍増すると同時に、平均労働者の所得も倍増した。
   企業経営者たちも、自らの役割を、投資家、従業員、消費者、一般国民、夫々の要求をうまく均衡させることだと考えて、大企業は実質的には、企業の業績に利害をもつすべての人に所有されたステイクホールダー資本主義であった。
   アメリカにも、そのような民主主義と資本主義が息づいた素晴らしい時があったのである。 

     ライシュが、大繁栄時代として肯定しているこの第二次世界大戦後の四半世紀には、政府は、「経済の基本取引」を強化、すなわち、完全雇用を目指してケインズ政策を採用し、労働者の交渉力を強化し、社会保障を提供し、公共事業を拡大した。
   その結果、総所得のうち中間層の取り分が増える一方、高所得層への分配は減少したのだが、経済自体が順調に拡大したために、高所得者も含めてほぼ総ての国民が恩恵を受けた。
   個人消費がGDPの70%を占めるアメリカ経済では、ボリュームゾーンの中間層が健全であることが必須で、中間層が、生産に応じて適正な所得を取得して、生産した財やサービスを十分に購買可能な「経済の基本取引」が成立した経済社会であったが故に、生産と需要が均衡して繁栄したのである。

   これは、日本にも言えることで、団塊の世代などは経験していることだと思うのだが、戦後復興効果はあったものの、日本経済はどんどん高度成長を続けて年々所得が上がって生活が向上し、1億総中流家庭と言われる幸せな時期が続いて、Japan as No.1の高見まで上り詰めた。

    ところが、その後、歯車が逆転して、政府は富裕層優遇の経済政策を推進し、賃金の中央値の上昇が止まり、国民総収入のうち中間層に流れる割合は、減少し続けて、大部分のアメリカ人にとって、賃金の伸びが止まっていないかのように生活を続ける唯一の方法は、借金であり、中間層の消費者は、最後の手段として借金漬けとなった。 
    深刻な経済格差の拡大と資本主義の挫折、We are 99%、ウォール街を占拠せよの到来。

   ところで、今日、日経が、「米企業、「株主第一」の修正進まず 労働分配率が低下」と報じた。経営の非民主化、逆転現象である。
   米企業が掲げた「ステイクホールダー重視」経営から「株主第一主義の修正」が進んでいない。利益配分の株主偏重を改め、従業員や地域社会への還元を厚くすると大手企業が宣言してから5年がたったが、労働分配の比率は低下する一方、巨額を株主に投じている。経済格差への不満が社会の分断や不安定化につながる構図は強まっている。 というのである。
 
   徹頭徹尾、弱肉強食の市場経済の魂が刷り込まれたアメリカの経済社会、
   成熟化して若いエネルギーを失ってしまって、もはや、後戻りが効かなくなってしまったアメリカ社会に、「中産階級再活性」の夢を実現できるのであろうか。
   ハリスの経済政策はアメリカ社会の起死回生には必須条件ではあるが、極めてハードルが高いと言わざるを得ない。
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