熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

Innovationではなくて、Innovator

2018年10月20日 | イノベーションと経営
   有楽町駅前の三省堂に行ったら、「クリステンセン関連書」と言うテロップの書棚があった。
   イノベーション関連の本が、並んでいたが、いつも気になるのは、クリステンセンの学術書、
   The Innovator's Dilemma
   The Innovator's Solution
   Innovator's DNA
   原タイトルでは、上記のように、イノベーターであるのに、翻訳書では、
   イノベーションのジレンマ、イノベーションへの解、イノベーションのDNA
   となって、イノベーターが、イノベーションに変わってしまっている。ことである。
   本の中身は、すべて、イノベーターのジレンマであり、イノベーターの解であり、イノベーターのDNAであって、イノベーションではない。
   
   この点については、随分以前から、このブログでも書き続けているのだが、どうでも良いことではなく、イノベーションとイノベーターでは根本的に違う、読みかえればよいと言う次元の話とは違う。
   例えば、最初のイノベーターのジレンマでは、ジレンマに遭遇して経営危機に直面するのは、イノベーターであって、イノベーションでは決してない。
   イノベーションを起こして革新的な経営に成功したブルーオーシャン経営を志向した経営が、その成功ゆえに、ローエンドから破壊的イノベーションによって台頭してきた新規イノベーターに先を越される、イノベーター、すなわち、経営者が、そのようなジレンマに直面すると言うことである。
   経営学の初歩だと思うのだが、本のタイトルは命であり、むしろ、原題通りのカタカナ表記の方がマシな場合がある。
   昔から、翻訳本、特に、専門的な経済学書や経営学書では、結構誤訳が多いのだが、本当は、日本の翻訳者も、その原本の本国で、その専門領域を勉強してきた、両方の言語とその専門領域を理解できている人が望ましいと思っている。
  
   最近出た本で、
   伊神 満氏の新しい本は、「イノベーターのジレンマ」の経済学的解明 となっており、
   ハーバード・ビジネス・レビューも、5つの「発見力」を開発する法 イノベーターのDNA DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー論文 となっていて、イノベーターと言うタイトルを使用しており、イノベーター何々、というタイトルの本が多くなってきている。
  
   蛇足だが、
   タイトル誤りの酷い例の一つは、日経出版の
   リチャード・S・テドロー著「なぜリーダーは「失敗」を認められないのか」で、
   この本の原題は、Denial: Why Business Leaders Fail to Look Facts in the Face---and What to Do About It で、否認:何故ビジネス・リーダーは、眼前の現実を見誤るのか、そして、それに対処する方法、と言うことであって、翻訳本のタイトルは、原題とは勿論、著者の意図とも中身とも違っていて、あのヘンリー・フォードでさえ、「眼前に展開していた経営環境の変化を直視せずに否認して経営を誤った」と言うことであって、失敗を認められないと言った次元のストーリーではないのである。
   リチャード・S・テドローは、「アンディ・グローブ 上下―修羅場がつくった経営の巨人」というタイトルの素晴らしい本を著した経済史・経営史のハーバードの教授であり、凄い本であることを付記して置く。
   
   タイトルが問題なのかは分からないが、トーマス・フリードマンのベストセラーだろうと思っていた
   「遅刻してくれて、ありがとう(上下) 常識が通じない時代の生き方」と言う立派な本が、三省堂では、売れないのであろうか、まだ、第1版が売られていた。
   これは、原タイトルに近いのだが、安直な本と取られてたのであろうか。
   翻訳本のタイトルの設定は、非常に難しいとは思うのだが、出版社も、それなりの敬意と注意を払って欲しいと思っている。
     
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