熟年の文化徒然雑記帳

徒然なるままに、クラシックや歌舞伎・文楽鑑賞、海外生活と旅、読書、生活随想、経済、経営、政治等々万の随想を書こうと思う。

核なき世界を求めて・・・日経・CSIS「トモダチ作戦と日米同盟の未来」

2011年11月08日 | 政治・経済・社会
   日経ホールで、第8回日経・CSISシンポジウムが開かれて、アメリカから来日した外交軍事専門の知日知識人を中心にして日本の専門家も加わり、「東日本大震災、トモダチ作戦と日米同盟の将来」をテーマにして、非常に密度の高いシンポジウムが展開された。
   今回は、特に、大震災の後で、福島第一原発の事故で、原子力そのものに対する大きなクエッションマークがついたので、エネルギーとしての商業的平和利用と核拡散・核軍縮等の安全保障の両面から、原子力の将来について議論された。

   冒頭、ウィリアム・ペリー元米国国務長官が、「核なき世界とフクシマ」と言う演題で、基調講演を行った。
   長官は、冷戦後のウクライナなどの旧ソ連地域での、実際に現場で経験した核廃棄の状況を説明しながら、核兵器テロの恐怖から説き起こして、核なき世界を目指して、如何に、闘って来たかを熱っぽく語った。
   1994年に、国務長官になった時に、核全廃に一歩でも近づくと誓ったと言うのだから、筋金入りの核兵器反対派で、J・シュルツ、H・キッシンジャー、サム・ナンとで結成した4賢人が、ホワイトハウスの大統領執務室で、オバマ大統領に、「核なき世界」の実現に向けた政策のアドバイスをしたと言うことで、これが、オバマ米大統領の、あの世界を感動の渦に導いたプラハでの核軍縮・核廃絶演説に繋がったと言う。
   しかし、イランなどの動向を見ていると、核軍縮、核不拡散への道は程遠い。
   
   一方、アメリカなどエネルギーの50%は、赤字原因でもある外国からの石油輸入に頼っており、この石油への依存度が高まれば高まる程、ロシアやベネズエラ、サウジアラビア、イランなどの危険な地域へ資金が流れて行って、エネルギー安全保障を脅かすこととなり、原子力発電が後退すれば、その危険は益々増幅して行く。
   原子力ルネサンスと称されたように、原子力発電は、本来、クリーンで信頼性高く、安全であったと言うのだが、原子力は、核テロの脅威、核軍縮・核拡散防止とエネルギー安全保障の両面から検討すべきと言うことであろうか。
   ペリー長官は、原子力発電が後退しても、今、進行中のイノベーション等によって、将来のエネルギー需要は賄っていけると言う。
   多少、解決すべき問題はあるがと言って提示したのは、①シエールガス②プラグ・イン・ハイブリッド車③セルロース系バイオ燃料④省エネへの取り組み、である。
   この程度で、原発の代替が出来るとは思えないが、アメリカとしては、原発は止められず、現状程度の維持と言うことのようである。

   戦略国際問題研究所(CSIS)のジョン・ハムレ所長は、冒頭から、はっきりと、日本が、商業的原子力発電事業から撤退するのは間違いだと言う。
   原発は、本来、豊かなエネルギー資源を生み出す地球環境にも優しく、エネルギー安全保障のためにも大切である。
   日本が、たとえ、原発を止めても、隣の中国では、現在20基あるのを、近く50基増やすつもりであり、その影響そして危険を、日本は、もろに受けることになる。
   世界中には、今、400基の原発があるが、これからの30年間に300基増える計画で危険が増幅して行くが、その原発を、誰が建設するのかが問題である。
   欧米日が、この方面から後退すると、責任感の薄い能力の劣った国が、建設を担当することになり、これは、極めて危険なことである。
   したがって、日本は、原発を継続して、商業的原子力産業の巨人・リーダーとして、原子力のプラスマイナスのバランスを上手く取った平和のための、確固たる監督体制を確立して透明でオープンな技術開発を行うことが、日本の国益にも利し、世界のためになるのだと言う。
   
   ヨーロッパでは、ドイツやイタリアは、原発を止めたし、日本でも、今回のフクシマで、一挙に、原発反対が優位に立った。
   これらの国は、第二次世界大戦の敗戦国で、生活環境の破壊と生命の危険が、如何に最悪かを身を持って経験しているので、核アレルギーの強さは格別であり、当然のことであろう。それに、代替エネルギーなどへのイノベーションには、自信がある。
   ところが、中国やインドなどの新興国や発展途上国は、原子力発電への期待は強く、今後、増加の一途を辿るであろう。
   さて、世界最高峰の技術を誇り、原子力発電所建設のノウハウや技術を持った日本は、どう対処して行くのか、ハムレ長官の言うように、商業的原子力産業のリーダーとなるのか、原子力よさようならと言うのか、難しいところである。
   
   
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