日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

ステレオタイプ化されたモデルから、多様性へ

2020-06-28 23:08:59 | ビジネス

Huffpostに「時代の変化」を感じさせる記事があった。
Huffpost:グッチの広告が新しい。歯並びが揃っていないモデル、しわを修正しない写真…「美の価値観」を覆す広告を展開

記事よりも、掲載されている写真のほうに目が行ってしまった方のほうが、多かったのではないだろうか?
これまで欧米では当然とされてきた「歯科矯正」。
その「歯科矯正」をしていないモデルを起用した、グッチの新しい口紅のポスター写真。
「重ね付け過ぎてマスカラが固まってしまった」のモデルの写真…これまで、広告のポスターは当然、モデルとして活躍できなさそうない女性たちの、いわゆる「マイナスポイント」となる要素を、あえてクローズアップさせたポスター写真だ。
おそらく、このポスター写真を見て「ギョッとした」方は、多いのではないだろうか?

その理由は、「スタンダードなモデル」の姿とは、全く違うからだ。
上述したように、これまでの標準的なモデル像からすれば「マイナスポイント」であるはずの、「歯並びの悪さ」等はランウェイや雑誌のグラビアでニッコリ微笑むモデルからは、想像できないほどだろう。
そのような「これまで見ることが無かった、スタンダードとは言い難いモデル」を起用したのが、高級ラグジュアリ-ブランドのグッチというのだから、より驚きが大きいと感じている。

「歯並びの悪さ」を、「その人らしさの美」と捉えるのか否かという点は別にして、このようなモデルを起用し、広告のポスターとして使うというのは、記事にある通り「美の多様性」ということを、テーマとしているからだろう。
「重ね付けし過ぎて固まったマスカラ」というのは、単にお化粧のテクニックの問題という気がしない訳ではないのだが、このような「メイクの失敗」であっても、「肯定的にとらえよう!」ということを伝えたいのだろう。

ファッションの世界では、様々な「文言に表せない約束事」がある。
例えば、モデルの身長は170cm以上とか、体重は〇〇㎏以下といったようなことだ。
10代でデビューするモデルの中には、「摂食障害」に陥ってしまうケースも多々ある。
そのため、「痩せすぎたモデルは起用しないように」ということを、モデルエージェントやファッションブランドに求められるようにもなってきている。

このような状況変化で登場してきたのが「プラスサイズ」と呼ばれるモデルだ。
「プラスサイズ」ということばどおり、肥満体形のモデルのことだ。
そして今この「プラスサイズ」のモデルたちの登場によって、これまでファッション業界が目もくれなかった「プラスサイス」のファッションが好調だという話もある。
「プラスサイズ」のファッション・アイコンの一人は、タレントの渡辺直美さんである。

そのような「サイズの多様性」から、容姿の多様性美という変化が起きている、というのが今回のグッチの広告なのだ。
特に「ダウン症のモデル」であるエリー・ゴールドスタインさんの登場は、社会から守られるべき存在としての「障害者」という発想から、障害もまた人の魅力の一部となりえる、ということを伝えているような気がしている。
事実、彼女の笑顔はとてもキュートで素敵だ。

その動きは、ウィメンズにとどまらずメンズファッションにも影響を与え始めているようだ。
WWD Japan:「太っている人が着たい究極の服」ができるまで SNS世代が仕掛けるブランド誕生までの軌跡

言わば「メンズ版プラスサイズ」のファッション、ということになる。
そしてこのような「体形や障害」あるいは「常識」とされてきた、ファッションにおける「美の基準」が、大きく変化し始めている。
「歯科矯正をしていないモデル」さんが今後増えてくるとは思えないが、個人が尊重されるファッションが求められるようになってきている、ということには違い無いだろう。



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