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賃金の上昇と雇用の関係-2021年ノーベル経済学賞-

2021-10-13 20:12:59 | ビジネス

先日発表された「ノーベル賞経済学賞」。
今年も、米国の研究者が受賞した。
CNN:ノーベル経済学賞、「自然実験」に貢献の米大3教授に授与

ノーベル賞の経済学賞に関していえば、ほぼ米国の研究者の独占状態となっているので、米国の受賞は珍しくもない。
これまでと違う、と感じさせたのは「シカゴ学派」と呼ばれる、シカゴ大学出身の研究者が受賞していない、という点と「経済」という生活者にとって、遠いと感じさせる分野において「賃金と雇用」という、生活者にとって身近なテーマを「自然実験」の貢献としたコトかもしれない。

これまで「不況」になると、「雇用調整」という名の「リストラ」がされてきた。
「従業員に支払う給与が、企業にとって大きな負担となる」というのが、その大きな理由だった。
代わりに雇用されたのは、有期雇用と呼ばれる「アルバイトやパート」最近では「派遣社員」という、正社員に比べ労働賃金が安く、当然福利厚生等についても企業負担が少ない(あるいは、企業負担が無い)非正規雇用者が、担うということになっていた。
実は、バブル経済崩壊後、日本の経済が復活しないのはこの「非正規雇用者」が急激に増えたためではないか?という、指摘もされたいた。

しかし、「企業そのものの経営体力がないのに、正規雇用者の維持をするのは、経営上難しい」という理由から、「非正規雇用者」が急激に増え続けている。
日本で問題になりつつある「高齢の親が、無職の子どもの生活を支えている」という、世界的に見てもやや変わった家族関係が出てきたのも「就職大氷河期」と呼ばれた世代以降だと認識している。

このような今まで言われていて、なんとなく企業だけではなく社会全体が納得していた「賃金と雇用」の関係が、どうやら違うらしい、という指摘をしたのが今回のノーベル賞経済学賞の対象となった「自然実験」の結果の一つなのだ。
「賃金を増やした結果は、製品や商品に価格転嫁を行っている為、企業の利益そのものは変わることが無い上、雇用調整そのものも必要が無くなる」ということが、判明したからだ。

とすると、これまで「いざという時の為」という理由で、企業がため込んできた「内部留保」そのものも、「そのいざという時」は、どんな時なのか?
雇用に手を付ける前に、内部留保の一部を雇用に振りあてるコトで、雇用そのものが守られれば、働く人たちは安心して「モノ・コト消費」をするのでは?ということになるのでは?という、考えも出てくるだろう。

拙ブログでも何度か指摘させていただいているのだが、日本がバブル経済崩壊後30年余り、生活者の収入は減り続けている。
リーマンショックで大打撃を受けたはずの米国であっても、日本より生活者の収入は伸びている。
もちろん、米国内にくすぶっている「差別による生活格差」という問題はあるが、社会全体の経済状態が浮上するなくただただ時間だけが過ぎて行っているのは、日本だけなのだ。

そう考えると、今回のノーベル賞経済学賞の受賞理由となった考えは、日本の経済政策はもちろん企業が行ってきた経営の在り方そのものにも大きな一石を投じることになるのでは?
と同時に、「定年まで一つの企業で勤め上げる」という考えから、「積極的な働く人達の流動化」を経済界も考える必要が出てきているのではないだろうか?
それは「45歳定年」という乱暴な言い方ではない、生活者の不安を取り除くような流動性のある人事システムである、ということは言うまでもない。



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