日々是マーケティング

女性マーケターから見た日々の出来事

心を動かす広告の作り方

2017-11-20 21:06:59 | CMウォッチ

この夏、家族や夫婦の在り方を描いた牛乳石鹸のテレビCMが、炎上した。
牛乳石鹸CM:与えるもの
個人的には、それほど目くじらを立てる内容なのかな?という気がしたのだが、目くじらを立てたくなるほど社会全体が閉塞感に包まれているのかも知れない。
ただ「閉塞感」という、ことばだけでこのCMの炎上を考えてしまうのも、どこか違うような気がしていた。
それは「性別による、社会的役割」に、縛られている女性が多いのでは?という点だった。
「性別による社会的役割」が、女性に強いていることには、出産・育児・家事(最近では+介護)があり、そのどれもが「女性がやって当たり前」だという社会的認識だと思う。
専業主婦が当たり前だったころは、これらの「性別による社会的役割」を十分果たせただろう。
しかし、今のように18歳以上の女性の就業率は半分以上になり、パートのような非正規雇用から正規雇用で働くなど、働き方も様々な状況になってきている。
男性と同等に働いていても、社内的評価だけではなく社外的評価や社会的評価は、相変わらず女性の方が低い傾向にある。
だからこそ「私たちの気持ちもわかってよ!!」という思いが、炎上というカタチになったのかもしれない。

そして、女性側の気持ちを表現したテレビCMが、P&Gの「JOY」のような気がする。
Huffpost: 「わけあいたいのは、わかりあいたいから」台所洗剤「JOY」の動画が子育て世代に刺さった理由
テレビCMとしても、よくできているCMだと思うし、共感性が高い内容だと思う。
テレビCMだけではなく、実際の制作過程をHuffpostの記事では、紹介がしていあり、むしろ制作過程こそがこのCMの重要なポイントのような気がするのだ。

それは、「本当に伝えたいことは、何だろう?」という、テレビCMとしては当たり前すぎる点を、掘り下げているということだ。
働く女性側も、「ゴミ出しをして当然でしょ」とか「こっちも疲れているのだから、食事の後片付けくらい手伝ってよ」ということだけを言いたいのではない。
「互いに心を寄り添いあいたい。わかってもらいたいし・わかりあいたい」という、思いがありながら目先のやってほしいことを、直接的なことばで言ってしまっているのだ。
表面的なことばではなく、ことばの奥にある気持ちまで掘り下げることができたことで、このテレビCMは視聴者の心に大きく響くことができたのだと思う。

そして、このような「生活者のことばの奥にある気持ちまで掘り下げる」という作業を、テレビCMに限らず企業のマーケティングとして行ってきているだろうか?
このCMを製作過程を読むと、試行錯誤の上一時は製作をストップしてまで、このテレビCMを製作している、ということが分かる。
どこか違和感を感じたら、一度立ち止まり「本質」となる部分を考えなおす、という作業をすることの大切さを、教えてくれているように思うのだ。