はんどろやノート

ラクガキでもしますか。

はな子と猫と吉祥寺

2008年09月28日 | まんが
 地味ながら、マイ・猫ブームである。
 僕は、90年代は大島弓子の新作をいつもたのしみにしていたのであるが、彼女が、自身が飼っている猫のサバのことを描くようになってから、とくに猫好きでもなかった僕は気持ちがはなれてきていた。13年生きたというサバが死んで、大島さんはグーグーという名の子猫を飼い始め、それを漫画に描き始め、僕は、ああ大島弓子さんは描きたいことをだいたいもう描きつくしちゃったんだ、と感じたのだった。だから『グーグーも猫である』は途中まで読んだけれど、あとは追わなかった。
 そしたら漱石その他の影響で、僕の中で、今「猫BOOM」である。歩く猫が気になるし、むかし途中までしか読まなかった『ジェニィ』(ポール・ギャリコ著)を読み始め、それほど多くないと思っていた過去の僕自身の「猫との想い出」がつぎつぎと出てくるじゃないか。
 そんなときに『グーグーも猫である』が映画化されて封切されたというではないか。 よしこれは、観に行こう。行くなら、予習だ、『グーグー』の原作も全部読もう。
 で、読んだ。 猫が…、マンガのなかの猫が、おもしろい。
 このマンガ原作では、大島弓子さんはグーグー(←ショップで買った)のあと、次々と子猫を拾う。 「あ! 鳴いてる!」と、住んでいるマンションの外からニャーニャーと捨てられた子猫が鳴くたびに飛び出して夜の公園を探し回る大島弓子。大島さんは吉祥寺に住んでいる。その公園は井の頭公園だ。「へー、大島さん、井の頭公園のこんなすぐそばに住んでいたのか…」とそれで僕は知った。猫の鳴き声がきこえるほどの場所に。

 よし、じゃあ、どうせ映画『グーグーも猫である』を観に行くなら、吉祥寺へ行こう! 井の頭公園にも行って、はな子にも会おうじゃないか!

 今年8月8日、地震があって本棚から落ちてきた数冊の本の中の1冊が『父が愛したゾウのはな子』(山川宏治著)である。これを買って読んだ一年前から、僕はいつか井の頭公園のはな子にもう一度(過去に一度会っている)会おうとずっと思ってきたのである。


 そして9月27日(つまり昨日だ)、スケッチブックを持って電車に乗って吉祥寺へ。
 吉祥寺の駅の南口を出て10分ほど歩くと井の頭公園だ。

 「はな子、よわっていなければいいけどな…。」
 という心配はまったく無用だった。
 『父が愛したゾウのはな子』には、はな子という象がいかに茶目っ気があってあそび好きかということが書いてあったが、見ていると、なるほどそれがよくわかった。はな子は常にリズムをとるように、面白いことがないかなーというように、鼻や脚を動かしていた。僕はスケッチをはじめたが、はな子が向きを変えるのでしっかりとは描けない。描いている途中で食事の時間がきて、屋内に入ったので、僕はスケッチはあきらめて、キャベツをばっくりと食べるはな子をずっと見ていた。すごいなー、すごいなあ、象! 鼻の動きがおもしろいし、脚のかたちがおもしろい。見ていて、飽きない。
 はな子のほうでも、人間ってへんだなあ、おもしろいなあと思ったりしているのだろうか。61歳になったはな子…。井の頭公園に来てからはずっと「象」というものに会ったことのないはな子…。


↑キャベツを食べるはな子さん。これだけじゃない、まだまだ食いますぜ~。


 井の頭公園を少し歩く。この公園は広い。大きな池(湖のような)があって、弁天が祭られている。土曜日なので、たくさんの人がいた。
 ここは、神田川(江戸時代につくられた運河)の水源地でもある。


 さて、映画だ。
 吉祥寺駅の北側は、ショッピング街になっている。何度か吉祥寺には来たことがあるが、なぜか僕には、どうもこの街は歩きにくい。 人の流れがつかめないので、前にうまくすすめない…(笑)。


 『グーグーも猫である』、この映画は、最初の10分が秀逸である。
 あとは…人におもしろいよと薦められる内容とは…言いがたい。猫とのコミカルな絡みとか、しっかりしたストーリーを期待してこの映画を見た人は、きっとがっかりするだろう。そういうのは、ない。 おもしろ猫映画というより、これは「吉祥寺人情ものがたり(with猫)」なのだった。そして大島弓子との原作とは、まったくの別の話である。リアルグーグー猫(つまりマンガ版)は、家からまったく出ない猫だけど、映画版グーグーは外を歩き回ります。
 しかし、僕個人としては、それで大満足なのでした。
 この映画には、「井の頭公園」がたっぷりと出てくる。そして、なんと「はな子」も登場する。そうなんだ、はな子は吉祥寺の「顔」なのだ。
 実物の「はな子」に会いに吉祥寺へ来て、映画館に入って、その映像の中でまた「はな子」を観て、そこに「吉祥寺の街」があって「井の頭公園」があって、そして、ニセモノの「吉祥寺の住人たち」がいる。映画の中のニセ大島弓子…漫画家小島麻子(小泉今日子)が、マンガを描いている…そのマンガのタイトルは『八月に生まれる子供』。(←これは数ヶ月前にブログで僕が採り上げた話。) この漫画作品は、リアル大島弓子が描いたものだし、しかし作品の中に描かれた世界と人々は架空である。ホンモノの架空世界をニセ大島弓子が描いていてそれを吉祥寺の映画館で僕が観ている…。 
 そういう、現実と非現実が交差するという不思議感覚をたっぷりと味わえたのでありました。

 そして、もう一度書いておこう。この映画は最初の10分が秀逸である。



  夏目漱石の『吾輩は猫である』から、きっと大島弓子は、『グーグーも猫である』と続けて、この漫画のタイトルをつけたのだろう。
 映画には出てこないが、グーグーをきっかけに、大島さんは、白猫ビー、黒猫クロ、目のみえない猫のタマと拾って育て、さらに増え続けてとうとうマンションでは狭くなってしまった。それで大島弓子は(どこか知らぬが)家を購入し、吉祥寺から引っ越してしまったようだ。
 そしてなんとなんと、現在は13匹(!)の猫が家の中にいるという。一日中掃除ばかりしているという。 きっと猫はさらに増えていくのだろう。
 「吉祥寺の漫画家大島弓子」の姿は井の頭公園に今はなく、彼女、りっぱな「猫おばさん」に進化したのだなあ…。


 それと最近、気づいたことがあるんです。猫を描いた小説、絵、漫画、アニメ、写真集は数え切れないほどあるけれど…、実写の映画で「猫がメインキャラの映画」って、すごく少ないんですよ! 考えてみてください。さあさあ、どうです? 何があります、猫の映画? 

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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (skotoc)
2013-08-12 04:01:36
子猫物語(チャトラン)
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Unknown (Unknown)
2013-12-10 20:53:11
×グーグーも猫である
○グーグーだって猫である
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Unknown (Unknown)
2015-10-19 23:25:47
なぜ大切なタイトル間違えて、しかも
頓珍漢な解釈をしているの‥
返信する

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