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次の一手 問11 答えあわせ(ロングver.)

2014年04月10日 | 次の一手
                        次の一手 問11 出題図



正解図


 『次の一手 問11 答えあわせ(ロングver.)』は、前回の『答えあわせ(シンプルver.)』の補足・詳細版です。大筋は前回に書いた通りで解答としてはそれで十分と思いますが、そこに書かなかった紛れや変化、おもしろい筋についてメモ代わりにここにまとめておきます。

 この「次の一手 問11」の答えは上の正解図の通り「 ▲4三角 ]ですが、それを相手せず、後手が“詰めろ”を掛けてくると、後手玉は詰んでしまいます。そう、「4三角は詰めろ」だったのです。
 その詰め手順をまず確認しておきましょう。


【4三角は詰めろ】

 4三角、7六歩(詰めろ)、2一飛成、同玉、4一飛

図1
 4一飛とここから飛車を打ちます。対して3一に合駒は、何を合駒しても、3二角成から詰みます。3一桂合なら、3二角成、同玉、4二金で、他の合駒なら、3二角成、同玉、4三金、2二玉、3一飛成以下。

 したがって、4一飛に、1二玉と逃げますが、そこで2四桂
 2四同歩に、2三金

図2
 2四桂~2三金、ここがこの「詰将棋」の肝の部分。これがあるから、先の「4三角」が“詰めろ”になるわけです。
 図以下、2三同玉、2一飛成、2二金、3二角成までの詰み


詰将棋 塚田正夫作 9手詰め
 この塚田正夫の9手詰めから、この「次の一手」問題を発想しました。
 塚田さんのこの詰将棋では4三の駒は「馬」ですが、これは生の「角」でも成立しています。



【4三角、8八歩成、同玉、7六桂、同歩、4三金の変化】

 さて、もう一度「正解図」(4三角まで)に戻って、そこで後手4三同金では、3二飛から、わりとあっさり「先手勝ち」となります。(7八金と銀を取った手が後手の玉への“詰めろ”になっているから。これは『シンプルver.』ですでに説明しています。)

 そこで後手は4三の角を取る前に、「8八歩成、同玉」を入れて、それから「4三金」とする。あるいは、さらに「7六桂、同歩」も入れて、それから「4三金」という指し方をすると、先手も簡単ではない。
 それもやはり『シンプルver.』で一部述べていますが、そこでまだ示していないパターンをこれからやっておきます。(すでに説明したことと重複する内容も含まれていますが、微妙に細部が異なっています。)

図3
 この「図3」は、「正解図」(4三角まで)から、8八歩成、同玉、7六桂、同歩、4三金の場面。
 これもやはり、3二飛で、先手が勝ちになります。以下はその確認ですが、先手勝てるが、でも甘く見ると逆転負けにされてしまう。

 3二飛には、(1)2二桂と、(2)2二角の2択です。
 まず(1)2二桂から。

変化図A1
 上の図から、3二飛、2二桂、7八金とすすめた図。
 これで先手が勝っている。後手玉は、2一飛成、同玉、3一金、1二玉、2一銀までの詰み。

 気をつけなければいけないのは、7八金のかわりに、3一飛行成でも後手玉は受けなしの“詰めろ”になるが、これだと先手負けてしまう、ということ。
変化図A2
 後手はここで「角角」を持っているので、7九角以下、先手玉が詰んでしまう。7九角に、9八玉なら、8七角で。7九同金なら、同銀不成、8七玉、7六銀成、7八玉、6八金まで。

 そういうわけで、先手が勝つにはこの場合は「7八金」(変化図A1)しかないのですが、後手はこれを同銀成とするでしょう。以下、同玉、6七角、8八玉、8七歩、同玉、7六角成…

変化図A3
 あらら、これは詰んでしまって、先手負け。
 なにがいけなかったか?
 
変化図A4
 7八同銀成を、同玉と取ったのが間違いでした。取ってはいけないのです。
 この図のように、8七玉なら、詰みはなく、先手勝ち。 後手玉の受けも効きません。
 (以下、4二角、3一銀、3三角打、4一飛成で受けがない。)

 このように、図3から、「3二飛、2二桂」には、「7八金」で先手勝てる。 “3一飛行成”は先手負け


変化図B1
 次は(2)2二角の場合。 今度は後手の持駒は「角桂」なので、先手玉にここでは詰みはありません。
 ということで、ここでは先手は(ア)3一飛寄成でも勝てます。以下、3三角打の受けには、2二飛成、同角、2四桂、同歩、2三金、同玉、3二角以下、詰んでいます。

 それ以外に、ここで考えられる先手の勝ち方としては、(イ)7八金(ウ)2四桂が考えられます。それを以下に見ていきます。(先手にはこのようにここで有力に思える手が3つあるために、かえって間違えやすい場面なのです。)

 (イ)7八金とすると――

変化図B2
 7八同銀成に、やはり8七玉と逃げて「先手勝ち」。 これが正解。
 (後手玉は2二飛成、同玉、3三角以下の詰みが生じている。)

 ここも7八同玉と取ってはいけない。もし取ると
 7八同玉、6七角、8八玉、8七歩、同玉、7六角成、8八玉、8七歩、7九金、8八金、6九玉、5七桂となって――
 
変化図B3
 詰み。先手、負けました。
 このように、「7六桂、同歩」を入れてある場合は、6七角~7六角成の筋があるので、その筋からの詰みにに気をつける必要があります。

 それで「8七玉」(変化図B2)ですが、そこから後手が受けて頑張ろうとするなら3三角打が考えられますが――
変化図B4
 先手は3一銀と迫る。
 以下、4二金打と粘ってみても、2二銀成、同角、同飛成、同玉に――
変化図B5
 3三角と打って詰んでいます。


変化図B6
 (ウ)2四桂はどうでしょうか。 同歩、同歩となれば、これも「先手勝ち」という気がします。3三金と受けるのは同飛成で無効、3一桂も同飛寄成でやはり無効。受けはありません。
 それに先に「7六桂、同歩」で桂馬をもらったので、この手で切り返して勝つのは気分が良いですし、(イ)7八金よりもこの手のほうが安全そうに見えるかもしれません。
 しかしその判断は誤りで、この道を選ぶと「負け」に転落します。
 桂馬を一枚渡すことで、先手玉に“詰み”が生じてしまうからです。

変化図B7
 2四桂(変化図B6)から、同歩、同歩、8七歩、9八玉、8九銀(図)。
 ここで、8九同玉と、8七玉があります。(どちらも詰み)
 まず、8九同玉から。8九同玉、7七桂、9八玉、8九角、8七玉、7六銀成、8八玉、8七歩、7九玉、6九桂成、同玉、5七桂、5八玉、4六桂…

変化図B8
 4八玉、4七金、3九玉、3八金まで。 ぴったり“詰み”です。

変化図B9
 「変化図B7」から、8七玉の場合は、8七玉、7六銀成、8八玉、8七歩、7九玉、6七桂、6八玉、5七角、5八玉、4六桂、4九玉、3七桂(図)。
 やはり駒が余らずぴったりの“詰み”。
 (途中、6七桂に8九玉には、7七桂、7八玉、7九桂成、同玉、5七角、6八金、同角成以下。)
 桂馬を一枚渡したから、この詰みが生じた。

 それにしても、こういうとくに妙手があるわけでもない「並べ詰め」を実戦で読み切る能力はどうやったら効果的に身につくのでしょうか。いわゆる“詰将棋”は、華麗に持駒を捨てていく手が多く、こういう平凡な手の続く「並べ詰め」はやらないので、一般にある“詰将棋”ばかり解いても、こういう能力は伸びていかないんですよね。
 (『平凡並べ詰め詰将棋ドリル200題』みたいなものを誰かつくってくれないかなあ。)

 さて、以上見てきたように、「3二飛、2二角」となった局面(変化図B1)で、正解手は2つあって、(ア)3一飛寄成、または、(イ)7八金なら、先手勝ち。  しかし(ウ)2四桂は、先手負けになる
 


【正解手以外の手を検討してみる】

問11 出題図
 「問11 出題図」まで戻って、こんどは、正解手以外の指し手について考えます。
 後手の立場に立って、「どう受けるのが正解なのか」と考えてみたい。


 まず、▲4一飛成にはどうするか。

参考図1
 これは△4三角が(後手にとっての)絶好打。 △4三角は8八歩成、同玉、8七角成の詰みを見ており、「後手勝ち」となります。

参考図2
 この問題の場合、基本的には、先手が2段目に飛車を打つ手には「△4二桂」と打って、また1段目に飛車を打ってきたら「△3一桂」と打って、それで先手の攻めを後手は受け止めることができる
 図は、▲6二飛と2段目に飛車を打ったところ。
 これには、したがって、△4二桂と受ける。 
 さらに6一飛行成なら――

参考図3
 △3一桂と打つ。なおも先手は4一飛成と迫るが、この図のように「△4三角」があるので、やはり「後手勝ち」の将棋となる。
 とにかく、この「△4三角」が絶好打なのです。

参考図4
 ところが、微妙な、面白いケースがありまして――。
 これは「問題図」で、▲5二飛と打ち、その手に対し後手が4三角と角を打ったところ。
 この5二飛に対しても、4二桂と受けるのが正解で、それで先手の攻めは続きません。図の4三角は“失着”です。
 けれども、5二飛と、ここに飛車を打たれると“4三角”とこの角を打ちたくなりませんか。
 しかしそれが“先手の仕掛けたわな”だったんですね。

 なぜ4三角が後手の失着だったかというと――
 図から、2一飛成、同玉、3三桂。 こういう手がある。
参考図5
 後手玉は“詰み”。 2二玉なら、2一金、3三玉、2二角、同金、同飛成まで。 よって、3三桂には、1二玉と逃げるが、2一角、2二玉、3二角成、同角、同飛成、同玉、2一角…
 
参考図6
 以下略。
 ほんと、将棋は気が抜けない。(後手は5二飛に4二桂と受けておけば問題なかった。)


参考図7
 こんな手も考えられる。▲4一飛打
 後手は3一桂と受けるが、そこで5二飛成とする。

参考図8
 ここで△4三角はないので(同飛成で意味なし)、後手は4二桂と受けることになるが、先手の狙いは、ここで同飛成、同金、同竜の“二枚換え”で、「どうだ!」ということである。
参考図9
 これには、2二角と受けて、これは「後手勝ち」になるようです。先手玉には「8八飛の1手詰」があります。これを受けるには7九角と打つくらいですが、これには6九銀不成(詰めろ)、8八桂、7八銀不成となって、先手玉は“必至”に追い込まれます。
 先手の工夫は実りませんでした。この「参考図9」で、先手は「角金金桂」と持っていて、その上に7八に「銀」の質駒もあるのでいけそうに見えたのですが、駄目でした。この将棋、飛車を渡すと、もうそれだけで先手は勝てないようです。


参考図10
 最後に、この手を紹介しておきます。「問題図」で、「▲3三角」という手です。
 結果的に、この手は正解手にはなりませんが、場合によっては成立する可能性もある手で、知っておいて損はないです。
 まず、この3三角は後手玉への“詰めろ”になっています。その手順は、2二金、同金、同角成、同玉、3二飛、同玉、5二飛成、4二合、4三金以下。
 ということで、後手はこれを3三同桂または3三同金と取ることになります。するとどっちで取っても、その形が、先手が7八金と銀を取った時に、後手玉の“詰めろ”になっています。「▲3三角」の先手の狙いはそういうこと。

 これに対して、後手はどう対処するのが良いか。この場合は正解は一つではないが、一例を示しておきます。
 3三角には、8八歩成、同玉、3三桂と応じるのがわかりやすいと思います。以下、7八金(後手玉の詰めろになっている)、同銀成、8七玉、3一桂(2一銀以下の詰みを防ぐ)、6二飛、4三角。

参考図11
 やはりここでも出ました、4三角。 以下8六玉には、6七角で。5四銀なら、7六歩が“詰めろ”です。
 これで「後手勝ち」です。


 どうやら、正解手の「▲4三角」の詰めろならば、後手からの△4三角打ちのスペースがないので、先手が勝てる将棋になるという、そういうカラクリのようです。



 以上検討してきた結果、この「問11」の問題図では、▲4三角以外の手では先手に勝ちはない、ということになります。



 以上で、終わりです。
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