一昨日の夜、TVをつけたら柳美里がでていて、灰谷健次郎のことをしゃべっていた。灰谷氏の暮らした跡をたずねる、という番組だった。それを見て僕は、おやっ、と思った。ずいぶんまえにあるTV番組にこの二人が出ていて、柳が灰谷に食って掛かっていた、というところを僕は見ていたからだ。
そのTV番組は、若者を集めた座談会で、神戸の少年による殺人事件のことをとりあげていた。(筑紫哲也の番組だったかな?) ある少年は「僕は、なぜ殺人をしてはいけないのかわからない」と言い出した。すると灰谷健次郎がその少年に質問をかえしていた。その途中で柳美里が割り込んできて、「灰谷さんは子供の心の中は純真だと思い込んでいる! そんなことはないんです! 灰谷さんは…!」その番組は少年たちが主役なのに、柳が灰谷にむかってしゃべり続けるので討論は進まず、そのまま終わった。
一昨日の番組によると、それはどうやら9年前のことのようで、それがこの2人の唯一の出会いだったようである。9年前の番組の収録後、灰谷氏が柳に「あなたはわたしの書いた本を読んでないでしょう」と言ったそうである。柳さんは「全部読んでいます。」と答えた。灰谷さんは「それであんなふうに言うんだもんなあ…。」とあとは絶句したという。
灰谷健次郎は昨年11月に亡くなっている。
僕は、柳美里の初期の本は何冊か読んでいる。「タイル」という本を最後に、あとは読んでいない。僕の、柳美里の小説の印象はこうだ。
主人公(女性)のまわりで次々と妙なこと(うっとおしいこと)が起こる。状況はゆっくりどんどん気持ち悪い、イヤーな感じになっていく。しかし主人公の感情は最初から最後まで変化しない。ずーっと「灰色」なのである。なにが起ころうとも「灰色」。
それがわかったので、僕は、柳美里の小説に、飽きた。
僕は思った。柳さんのからだの中はきっと「灰色一色」なのだ。まるで柳さんは小説をつかって「どうだ、神様、こんなわたしをハッピーにしてみろ! できないだろう! できないなら、黙っていろ。」と無言で怒り訴えているように思えた。どこまでいっても「灰色」、そんな小説は読みたくないよねェ。
柳さんは灰谷健次郎の熱心な読者だったようだ。灰谷氏の小説には、「優しい瞳でこどもをみまもる大人」が描かれている。少女時代に柳さんは、灰谷さんの本の中にひたりながら、「わたしにもいつかこんなオトナが現れる」と思っていたのかもしれない。けれど、現実はそうではなかった。「優しいオトナ」に出会うことなく「オトナ」になってしまった者はどうすればよいのか。「灰谷さん、あなたが描いたような大人は私の周りにはいなかった! どうしてよ!?」
柳美里はわりとTVによく出るので、出産のこととか、東由多加氏の死とか、作品の裁判のこととかは知っていた。今は子供向けの本も書いているらしい。それで今は児童文学作家の灰谷健次郎にも思いをよせているのかもしれない。児童文学というのは、大人向けの本とはちがって「ずっと灰色」ではいけない。「晴れ間」が少しくらいはないとね。きっと柳さんのからだの中も、いまはいくらか、晴れ間があるのだろう。
ちょっと、ほっとした。
そのTV番組は、若者を集めた座談会で、神戸の少年による殺人事件のことをとりあげていた。(筑紫哲也の番組だったかな?) ある少年は「僕は、なぜ殺人をしてはいけないのかわからない」と言い出した。すると灰谷健次郎がその少年に質問をかえしていた。その途中で柳美里が割り込んできて、「灰谷さんは子供の心の中は純真だと思い込んでいる! そんなことはないんです! 灰谷さんは…!」その番組は少年たちが主役なのに、柳が灰谷にむかってしゃべり続けるので討論は進まず、そのまま終わった。
一昨日の番組によると、それはどうやら9年前のことのようで、それがこの2人の唯一の出会いだったようである。9年前の番組の収録後、灰谷氏が柳に「あなたはわたしの書いた本を読んでないでしょう」と言ったそうである。柳さんは「全部読んでいます。」と答えた。灰谷さんは「それであんなふうに言うんだもんなあ…。」とあとは絶句したという。
灰谷健次郎は昨年11月に亡くなっている。
僕は、柳美里の初期の本は何冊か読んでいる。「タイル」という本を最後に、あとは読んでいない。僕の、柳美里の小説の印象はこうだ。
主人公(女性)のまわりで次々と妙なこと(うっとおしいこと)が起こる。状況はゆっくりどんどん気持ち悪い、イヤーな感じになっていく。しかし主人公の感情は最初から最後まで変化しない。ずーっと「灰色」なのである。なにが起ころうとも「灰色」。
それがわかったので、僕は、柳美里の小説に、飽きた。
僕は思った。柳さんのからだの中はきっと「灰色一色」なのだ。まるで柳さんは小説をつかって「どうだ、神様、こんなわたしをハッピーにしてみろ! できないだろう! できないなら、黙っていろ。」と無言で怒り訴えているように思えた。どこまでいっても「灰色」、そんな小説は読みたくないよねェ。
柳さんは灰谷健次郎の熱心な読者だったようだ。灰谷氏の小説には、「優しい瞳でこどもをみまもる大人」が描かれている。少女時代に柳さんは、灰谷さんの本の中にひたりながら、「わたしにもいつかこんなオトナが現れる」と思っていたのかもしれない。けれど、現実はそうではなかった。「優しいオトナ」に出会うことなく「オトナ」になってしまった者はどうすればよいのか。「灰谷さん、あなたが描いたような大人は私の周りにはいなかった! どうしてよ!?」
柳美里はわりとTVによく出るので、出産のこととか、東由多加氏の死とか、作品の裁判のこととかは知っていた。今は子供向けの本も書いているらしい。それで今は児童文学作家の灰谷健次郎にも思いをよせているのかもしれない。児童文学というのは、大人向けの本とはちがって「ずっと灰色」ではいけない。「晴れ間」が少しくらいはないとね。きっと柳さんのからだの中も、いまはいくらか、晴れ間があるのだろう。
ちょっと、ほっとした。