恩師の御著書「真理を求める愚か者の独り言」より
第一章 或る愚か者の生涯
◆葡萄一粒で故郷を捨てた少年時代◆
先の続き・・・
さて、大和川と石川の支流にはさまれて広々とした平地がありました。
大和川と平行した堤防の内側に大きくUの字形をした農道が
小さな堤防のようにして走っています。
大和川から小さな堤防の農道までの間はよその葡萄畑でした。
農道を隔てて反対側に私の家の田圃がありました。
堤防を降りて、自分の家の稲を見て回ってから
再び堤防へ上がってほっとした時、
反対側の畑の柵が目に入りました。
堤防の上に上がった私は、その畑の柵に
下がったたわわに実を実らせている葡萄を見て、
思わずつまんでみたくなりました。
そこで、そこに降りてこっそり一粒だけ失敬いたしました。