浄心庵・長尾弘先生「垂訓」

八正道と作善止悪

「御垂訓」

2020-12-09 00:07:06 | 浄心庵 長尾弘先生垂訓

 恩師のご著書「講演集」より

             講演集、 三

      癌を克服し、悟って死を迎えた方の話


先の続き・・・

初めて寄せてもらった時、奥さんが外まで見送って下さって、
「実はお医者さんからもうはらわたがみな腐っているので、
よくもって一か月、悪かったら今日か明日か分からないと
言われています。

そんな状態でも助けていただけるのですか」と
言われるので、「よう助けません、
人の命はこれは神様が持っていられるものであって、
そんなものを動かすことはできません。
人はそれぞて何歳までの寿命と神様と約束して
生まれさせていただいております。
寿命は宿命です。

これを避けることはどなたもできません。
もし助かって下さったら、それは、ご主人に寿命があったからです。
助からなかったら、寿命が無かっただけのこと、
それを助けることはようしませんが、
時どきこうして寄せてもらいますと、死ぬ時に苦しみが無いそうです」
とお答えしました。

すると、「そんな結構なことはございません。
癌で死ぬ時は七転八倒の苦しみをしなければ
死ねないのが相場のようです。
その苦しみなしにお迎えいただけるのでしたら、
こんな結構なことはありません。

もうそれで十分ですから、先生どうぞ来て下さい」ということで、
電話を頂いたらすぐ出かけていたのです。
行きますと、或る時はもう大声をあげて泣いていられます。
自分の過ちを知って流れる涙は法の雨です。
「この法の雨は心の曇りを洗い流していただけるから、
精いっぱい泣きなさい、
泣いて泣いて泣ききりなさい」と言いました。

或る時は、声を出さずに、涙を流して泣いておられました。
そんな生活が約半年続きました。
「もう一か月もたない」と、
お医者さんがおっしゃっていられた方がです。
そして、或る日行きまして「Sちゃん、どうですか」と
言葉をかけますと、
「もうどこも苦しくない。ありがたいことです」と
おっしゃるのですね。

しかし、からだを見せてもらえば、相当弱っていられます。
「全然苦しみがなくなりました。ほんとうにお陰様です」と言われて、
それから二日目の朝、実はこうこうでしたと、
電話がかかってきました。

「一昨日行った時は、あんなに元気だったのに」と言いまして、
すぐお悔やみに寄せてもらいました。
「申し訳ありません。お役に立てませんでした」と
挨拶させてもらいますと、
「先生、それは違うのです」と、
奥さんがつぎのように話されました。

昨夜十時頃に、親戚の者を呼んでほしいということで、
ご主人の兄弟、奥さんの兄弟の全部を呼ばれたそうです。
その一人一人に「ありがとうございました。
ほんとうにお世話になって心からお礼申し上げます」、

夫婦仲の悪い兄弟の方に対しては、
「夫婦の仲が良いところに幸せがあるのだから仲良くしてくれ」、
子供の心配のある兄弟の方には
「子供に対してはこのように思ってやらなくてはいけない」、
そして「おおきに、おおきに」と皆さんにお礼を言われて、
一番最後に奥さんに向かって、「長いことお世話になり、
ありがとうございました。

私が心残りなのは、あなたをしんから幸せにしなかったことだけど、
心からお礼を言います。これで最期だよ」と言って、
自ら合掌なさったそうです。
まだ笑っていて元気そうだし、安らかな話し方をされているので、
奥さんが何を言われのですかと、
その合掌されている手をパッと払った時もまだ笑顔をしておられ、
あんなことを言ってと、こちらを向いた時に、
息が切れたのだそうです。



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