経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

定着モデル~その2

2010-06-21 | 企業経営と知的財産
 →→→→→→(前エントリの続き)

 知的財産活動が中小企業の経営に必要な活動として‘定着’するために、これまで説明した4つの要素が必要であると考えると、‘定着しない’理由として、次の3つのパターンが考えられることになります。

(1) 知識だけでは絵に描いた餅(知識のみのケース)
 知財戦略支援において、中小企業に汎用的な知識やスキルを提供するだけで、その企業に合わせた適用がなされていなければ、有効な知的財産活動は行われず、当然ながら定着することもありません。当たりまえですが、中小企業の支援者には、知識やスキルの提供に止まらない、各々の企業にあった適用を支援することが求められるものです。

(2) 目的・位置づけだけではかけ声倒れ(目的・位置づけの明確化のみのケース)
 汎用的な知識をベースにして、知的財産活動の経営戦略上の目的・位置づけを明確にするための支援(経営者とのディスカッション等)が行われたとしても、その目的に沿って知的財産活動を実践するための仕組みが整っていなければ、「かけ声倒れ」になってしまい定着しません。経営者が「我が社の知財戦略はこうあるべきである」というコンセプトを提示したとしても、実践を伴わなければ成果を出すことはできません。中小企業の支援者には、戦略立案だけでなく、実践可能な仕組みの構築も求められるところです。

(3) 実践する仕組みだけでは空回り(実践する仕組みのみのケース)
 知的財産活動を実践する仕組みだけを整えたとしても、そもそも自社にとっての知的財産活動の目的・位置づけが明確になっていない場合、または目的や位置づけとの整合性がとれていない場合は、日々の業務の中で何のための知的財産活動かという疑問を拭い去ることができません。また、目的が明確でないままに仕組みだけ作っても、その仕組みの維持が目的化してしまうことも起こり得ます。中小企業の支援者にとって、規程類や提案制度などの仕組みの導入は支援のわかりやすい成果となるため、この部分が先行してしまうこともあるかと思いますが、常に支援先の中小企業にとっての知的財産活動の目的・位置づけに立ち返る姿勢も重要です。

 以上、「そんなことわかっているよ」という基礎的な事項ばかりですが、実際の取組みを始めてみると「木を見て森を見ず」となってしまうことが少なくありません。大事な原則を頭に叩き込み、随時リマインドすることができるように、シンプルに可視化したものとして作成したのがこの‘定着モデル’です。