
→→→→→→(前エントリの続き)
知的財産活動が中小企業の経営に必要な活動として‘定着’するために、これまで説明した4つの要素が必要であると考えると、‘定着しない’理由として、次の3つのパターンが考えられることになります。
(1) 知識だけでは絵に描いた餅(知識のみのケース)
知財戦略支援において、中小企業に汎用的な知識やスキルを提供するだけで、その企業に合わせた適用がなされていなければ、有効な知的財産活動は行われず、当然ながら定着することもありません。当たりまえですが、中小企業の支援者には、知識やスキルの提供に止まらない、各々の企業にあった適用を支援することが求められるものです。
(2) 目的・位置づけだけではかけ声倒れ(目的・位置づけの明確化のみのケース)
汎用的な知識をベースにして、知的財産活動の経営戦略上の目的・位置づけを明確にするための支援(経営者とのディスカッション等)が行われたとしても、その目的に沿って知的財産活動を実践するための仕組みが整っていなければ、「かけ声倒れ」になってしまい定着しません。経営者が「我が社の知財戦略はこうあるべきである」というコンセプトを提示したとしても、実践を伴わなければ成果を出すことはできません。中小企業の支援者には、戦略立案だけでなく、実践可能な仕組みの構築も求められるところです。
(3) 実践する仕組みだけでは空回り(実践する仕組みのみのケース)
知的財産活動を実践する仕組みだけを整えたとしても、そもそも自社にとっての知的財産活動の目的・位置づけが明確になっていない場合、または目的や位置づけとの整合性がとれていない場合は、日々の業務の中で何のための知的財産活動かという疑問を拭い去ることができません。また、目的が明確でないままに仕組みだけ作っても、その仕組みの維持が目的化してしまうことも起こり得ます。中小企業の支援者にとって、規程類や提案制度などの仕組みの導入は支援のわかりやすい成果となるため、この部分が先行してしまうこともあるかと思いますが、常に支援先の中小企業にとっての知的財産活動の目的・位置づけに立ち返る姿勢も重要です。
以上、「そんなことわかっているよ」という基礎的な事項ばかりですが、実際の取組みを始めてみると「木を見て森を見ず」となってしまうことが少なくありません。大事な原則を頭に叩き込み、随時リマインドすることができるように、シンプルに可視化したものとして作成したのがこの‘定着モデル’です。
知的財産活動が中小企業の経営に必要な活動として‘定着’するために、これまで説明した4つの要素が必要であると考えると、‘定着しない’理由として、次の3つのパターンが考えられることになります。
(1) 知識だけでは絵に描いた餅(知識のみのケース)
知財戦略支援において、中小企業に汎用的な知識やスキルを提供するだけで、その企業に合わせた適用がなされていなければ、有効な知的財産活動は行われず、当然ながら定着することもありません。当たりまえですが、中小企業の支援者には、知識やスキルの提供に止まらない、各々の企業にあった適用を支援することが求められるものです。
(2) 目的・位置づけだけではかけ声倒れ(目的・位置づけの明確化のみのケース)
汎用的な知識をベースにして、知的財産活動の経営戦略上の目的・位置づけを明確にするための支援(経営者とのディスカッション等)が行われたとしても、その目的に沿って知的財産活動を実践するための仕組みが整っていなければ、「かけ声倒れ」になってしまい定着しません。経営者が「我が社の知財戦略はこうあるべきである」というコンセプトを提示したとしても、実践を伴わなければ成果を出すことはできません。中小企業の支援者には、戦略立案だけでなく、実践可能な仕組みの構築も求められるところです。
(3) 実践する仕組みだけでは空回り(実践する仕組みのみのケース)
知的財産活動を実践する仕組みだけを整えたとしても、そもそも自社にとっての知的財産活動の目的・位置づけが明確になっていない場合、または目的や位置づけとの整合性がとれていない場合は、日々の業務の中で何のための知的財産活動かという疑問を拭い去ることができません。また、目的が明確でないままに仕組みだけ作っても、その仕組みの維持が目的化してしまうことも起こり得ます。中小企業の支援者にとって、規程類や提案制度などの仕組みの導入は支援のわかりやすい成果となるため、この部分が先行してしまうこともあるかと思いますが、常に支援先の中小企業にとっての知的財産活動の目的・位置づけに立ち返る姿勢も重要です。
以上、「そんなことわかっているよ」という基礎的な事項ばかりですが、実際の取組みを始めてみると「木を見て森を見ず」となってしまうことが少なくありません。大事な原則を頭に叩き込み、随時リマインドすることができるように、シンプルに可視化したものとして作成したのがこの‘定着モデル’です。
その1で、「第一に」として先生が挙げられている点を、どれだけ(時間をかけて)十分に考えるか、ということが重要と思います。しかし実態は、ここを曖昧にしたままスタートするケースが多い。一般論で体制やルールを構築するから、絵に描いた餅や空回りに終わるんでしょうね。第一のハードルをクリアできる(知財活動を行う意味のある)中小企業というのは、かなり限られると思うのです。日本の大半は中小企業ですから。知財(権利取得)に頼らないのも知財戦略であるといえるくらいになりたいものです。
経営者的な感覚を持って仕事をしている人や、経営者その人であれば、必要な活動(目的や位置付けがその企業にとって存在し、しかも優先順位が高い活動)であれば、自分で探してでも知識を獲得し、実践する仕組みを作ります。
しかし、経営者的な感覚を持っていない大部分の人たちが活動をするためには、知識と、目的・位置付け、実践する仕組みに加えて、その活動が自分の役割の重要な一部であるという認識まで与えることが不可欠です。
しかし、このような役割意識を与えたり、変更したりすることは大変な困難を伴います。意識改革であり、何らかの文書を変えればすむというものではないからです。
http://www.patentisland.com/PatStrategicMemo.html
コメント有難うございます。
結局のところ、‘仕組み’の部分を担う知財の専門家(言い方は悪いですがいわゆる知財屋さん)の間でも、‘目的・位置づけ’の部分を「知財は重要」という枕詞のような観念論や「特許は独占権」という形式的な法律論で済まされてしまっていることが多く、そこを知財屋さんに委ねてしまうと空回りとなりやすい。だから、‘目的・位置づけ’の部分には経営者自身に関与いただくしかないのですが、ここの部分が実感としてなかなか理解できないという状況が多いのではないかと思います。ご指摘のとおり、そこを詰めて考えていくと、知財活動が役に立つ中小企業というのはかなり限られてくると思うのですが、一方でここ数年の特許庁の委員会等での活動から、知財活動によってできることが狭く捉えすぎられてしまっていることが多いようにも感じています。ではどういう可能性があるのか、ということについてはエントリを改めて書きたいと思います。
コメント有難うございます
ご指摘のとおり‘目的・位置付け’や‘実践する仕組み’が形だけでは、それもまた「絵に描いた餅」となってしまいます。そういう意味では、上の2つが存在するようで実質的には存在していないという(1)の変形パターンともいえるかもしれませんが、中堅クラスになるとともかく、中小企業ということになると、知財活動は社長+その周辺くらいで行われていることが多いので、比較的問題としては顕在化しにくいかもしれません(むしろ大企業に起こりやすいパターンかもしれません)。
「知財(権利取得)に頼らないのも知財戦略である」というのはまさにそのとおりだと思います。結局のところやろうとしていることを「競争力の強化」ととらえるならば、それが知財活動によるものである必然性はなく、順番としては、
「知財活動を実践すれば→競争力が強化されます」
ではなく、
「(その企業にとって)競争力の強化に有効であれば→知財活動を実践すればよい」
ということになるはずです。
そういう観点からは、知財経営とか知財戦略とかいう言葉は、何か知財が主導するようでミスリードしやすいため個人的にはあまり使わないようにしており、当初は左下部分を「知財活動の実質的な役割」としていたのですが、長ったらしくてわかりにくい(普及を図るにはシンプルな用語を用いるべき)ということで「知財経営・知財戦略」に落着きました。