経営の視点から考える「知財発想法」

これからのビジネスパーソンに求められる「知財発想法」について考える

少々古いネタですが

2008-11-10 | 新聞・雑誌記事を読む
 ちょっと古い記事になってしまいますが、業界で話題のIVに関する東洋経済の特集です。いろいろな見方があると思いますし、何よりまだ実体が良く見えてこないというのもありますが、ちょっと気になる部分があります。この記事にもありますが、IVをベンチャー企業に投資するベンチャーキャピタルになぞらえて、「インベンションキャピタル」と位置付けている点です。
 ベンチャーキャピタルはベンチャー企業の株式、IVは特許がそれぞれ投資対象ですが、ベンチャービジネス→先端技術→特許、という連想からか、ベンチャー投資と特許が何か似たもの・関係の深いもののように論じられることがあります。ところが投資対象としてみると、(ベンチャー企業の)株式と特許は、‘存続期間’という点において大きく性質を異にするものです。
 成長企業の株式は、企業の将来性=未来を買うものなので、企業の将来の成長がそのまま価値に反映されるため、株式に投資するとその企業がどのように発展するかという未来に目が行くものです。すなわち、投資対象である株式からの直接得られる利益(インカムゲイン=配当)よりも、投資対象である株式の価値の上昇(キャピタルゲイン=株価の値上がり)への期待が大きくなります。
 一方、特許には存続期間(法律上の存続期間だけでなく特許技術の実質的な有効期間も含めて)があるので、もちろん急速に特許技術が普及する局面では特許そのものの価値も増加しますが、よほどの成長力がないと基本的には存続期間が近づくに従って残存価値は減価していくものです。そのため、将来性が高まることによる特許の価値の上昇(キャピタルゲイン)を期待するのは株式よりも相当ハードルが高いため、存続期間が到来するまでにできるだけ早く投資対象である特許から直接の利益(インカムゲイン=ライセンス料等)を得ておくことが必要になり、必然的に「他者からライセンス料をかき集める」ことが必要になると思います。よって、投資効率を高めようとすれば、事業を成長させるというベンチャーキャピタルのような方向には構造的にいきにくいのではないかと。