三菱を代表するスポーツセダンとして名をはせたランサーエボリューションXが、ファイナルエディションがリリースされて販売終了、ランサーの長い歴史に終止符を打ちました。ランサーの名の付く車は、ダサい他社製ライトバンのOEMモデルのみ残る形になりましたが、ついにこちらも2019年4月をもって販売が終了。海外専売モデルにその系譜を残してはいるものの、日本国内では完全に消滅しました。残念ですが、市場規模や三菱自動車そのものの企業体力を考えても、今後も復活することは絶対にないでしょう。
そんなランサーは、三菱の小型車として着実に代を重ね、ラリー仕様での輝かしい成績と販売台数、車そのものの完成度などを考慮すると、6代目モデルが全盛期であったのではないのかと考えます。
今回の超研究シリーズは、そんな6代目ランサーを、意味もなく深く突っ込みます。なお、おそらく多くの皆さんに人気のGSRエボリューションおよびRSエボリューションは、他のメディアで幾度となく詳細に採り上げられており、特にうちのブログで紹介する必要性が無いことから、省略します。ランサーはエボしか興味ない、普通のグレードなんかどうでもいいという方は、絶対に話が合いませんので、速やかにブラウザの戻るを押してお立ち去りください。
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6代目ランサーは、先代である5代目モデルのキープコンセプトながらも、より明確に個性を打ち出すスタイリングや、高められた運動性能などを武器に「グッドラン ランサー」のキャッチコピーの元に1995年10月に登場しました。バブル崩壊後に設計されたので若干コストダウンが目立ちますが、基本1トン弱の軽量ボディに様々なパワーユニットを有し、幅広いラインナップで、カローラクラスという当時の激戦区に殴り込みをします。
プラットフォームは先代の流用ですが、エンジン搭載方向の逆転や、それに伴う新設計トランスミッションの搭載、より広くなった室内などのアップグレードが行われいます。
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注目のスタイリングは、一足先にモデルチェンジした2代目ディアマンテによく似たもの。とくにリアの大きなおにぎりテールは、このクラスでは個性的で、一目でランサーと分かる個性を得ています。明確なハイデッキスタイルながらも、視界の良さも確保したスタイリングは、現在のカーデザイン現場でも見習ってもらいたいものです。価格が価格だけにクラス相応の質感で仕上げられていますが、細かな部分にも気を払ったプレスラインやフォルムなどが、他の競合銘柄と比較しても圧倒的な個性を得ていると言えます。
フロントにストラット、リアにマルチリンクを配した懸架装置も、コストのかかったものと言えます。サイズを考慮すれば、室内はまずまずの広さですが、余裕があるとは言いがたいです。このあたりは、昨今のスペース効率に優れたセダン車には負けます。Cd値は0.30と、かなり優秀な部類に入ります。
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6代目ランサーのウリの一つは、このINVECS-IIスポーツモード4AT。94年に登場した同社のFTOに搭載されていた、国産初のシーケンシャルゲート付のフルオートマチックです。
Dレインジでの走行は、ファジィ制御による的確なシフトスケジュールでのイージードライブ。そして、マニュアルゲートを駆使してのスポーツ走行もこなせる欲張りなミッション。当時は革新的でした。現在の水準から見ても、シフトレスポンスは俊敏で、なかなか侮れません。シフトダウン時のブリッピングなどといった賢い機能はありませんが、微妙なタイムラグ時にアクセルを「人力で」煽ってやれば、回転合わせ自体は可能です(ちょっとコツがいりますけど)。シフトスケジュールや変速ショックなども悪くなく、欠点という欠点のないミッションと言えますが、設計年次が古いのでトルコンスリップが大きく、3、4速限定のロックアップも領域が限られていることからダイレクト感や燃費で劣ります。また、シーケンシャルゲートの+と‐の位置が逆の方が良いのではないか?との意見も多いです。アイシンあたりで製造していたようで、内製ではないようです。信じられないようですが、遥かに格上のディアマンテと全く同じトランスミッションであり、容量的にはかなりマージンを取った設計をしています。
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今では考えられない、豊富な、いや豊富すぎるエンジンラインアップ。なぜ単一車種に、8種類ものエンジンが必要だったのでしょうか(笑)。
本モデルより、エンジン搭載方向が逆転(車体右側がエンジン先頭に変更)したため、先代モデルや他車種からキャリーオーバーしたエンジンも吸排気系等を中心に新設計されており、互換性はない模様。トランスミッションも新規設計となっています。
・1800DOHC16VALVE I/C TURBO→GSR用のスポーツユニット。エボリューションには敵いませんが、使い切れそうなパワーは必要十分以上。
・1600DOHC16VALVE MIVEC→MR用のスポーツユニット。可変バルブタイミング・リフト機構で、NAエンジンの限界に迫る。
・1600DOHC16VALVE MIVEC-MD→可変気筒システムを採用し、パーシャル時やアイドリング時に2気筒を休止します。燃費の向上が目的の模様。
・1800V6 24VALVE→クラス唯一のV6エンジンで重役気分。先代モデルから排気量が拡大されトルクUPしましたが、SOHCにグレードダウン。
・1500DOHC 16VALVE→普及版パワーユニット。DOHCでエンジン自体はよく回りますが、低回転向けのトルク重視なので、回しても上は全然パワーありません。
・1500 12バルブMVV→前期型専用ユニットで、リーンバーン燃焼の低燃費エンジンです。MVVは、ミツビシ・バーティカル・ボルテックスの略称だそうで。
・1300 12バルブ→廉価グレード用のエンジンで、SOHC3バルブながらECI-MULTIを採用しています。
・2000TURBO-D→経済派向けのディーゼルターボ。今だったら注目を浴びるでしょうが、当時はディーゼル悪で、出回った数は少ないです。
全車、昭和53年規制をクリア。なお、最終型のみ平成10年アイドル規制もクリアしています。昨今の水増し系アイドルも規制していただきたいところです。
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カラーバリエーションはこちら。黄色系はありませんが、それ以外は手広くカバーする8色ラインアップ。基本的には全年式で同じ色ですが、後期型への変更時にムーンライトブルーはネアーズブルーに、サーストングレーはレガートグレーに、キルダーグリーンはティンバーグリーンにそれぞれ色調が明るいものに変更されています。とはいえ、実際は意図したカラー変更ではなく、単に仕入れる塗料が変更になっただけでしょう。
もっとも数が出たのはサテライトシルバーで、次いでフリートユーザーの多いスコーティアホワイトが出ていると思われます。
・スコーティアホワイト(前後)→ソリッドの白。純白です。
・サテライトシルバーメタリック(前後)→本車両のメインカラー。とても明るい、混じりけのないシルバーで綺麗な色です。
・ロアンヌレッドパール(前後)→どちらかというとオバチャン需要に対応した感のあるワインレッド。やや暗めのワインレッドです。
・ムーンライトブルーパール(前)→スターワゴンやスペースギアなどでお馴染みのムーンライトブルーは、やや暗めのダークブルー。前期のみ。
・ネアーズブルーパール(後)→やや明るめに色調変更したダークブルーで、後期型専用色。
・サーストングレーパール(前)→ややブロンズがかったダークグレーで、わりと見かける機会のある色でした。前期のみ。
・レガートグレーメタリック(後)→より純粋なダークグレーになった色で、後期型用です。
・キルダーグリーンパール(前)→ブリティッシュなダークグリーンで、シックな色合い。前期型用です。
・ティンバーグリーンパール(後)→ややイエローがかったダークグリーンで、より上質な雰囲気を醸し出します。後期型用。
・パルマーレッド(前後)→ソリッド塗装ですが、クリアコート有りです。スポーティなイメージでカッコいいですが、色褪せやクリア剝げに弱いのが残念。
・ピレネーブラックパール(前後)→漆黒のボディカラー。スポーツ系グレードにしか設定されていなかったので、あまり見かけない色でした。
■1995年モデル
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全13グレードで、V6MXサルーン以外全てのグレードで五目マニュアルも選べるワイドラインアップ。ちなみに、最廉価グレードのTは、カタログでは一切写真が掲載されていないレアキャラです。スポーツモード4ATは、GSR、MR、MXツーリングのスポーツグレードのみ。DターボはINVECSじゃない廉価ATなので注意。この年式のみ、ABS装着車は全車4輪ディスクブレーキです。モデル途中でMXサルーンGが追加になりましたが、この年式のみ13インチウィールと変な仕様になっています。詳しくは、MXサルーンGの項目に記載します。
■1996年モデル
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最初の年次改良で、さらにグレードが増え大変なことに。スポーツモード4AT搭載のMXサルーンG、DターボのMX、MXの4WDが追加され、全16グレードの興奮。例によって、V6とMXサルーンG以外は五目マニュアルが選べる超ワイドラインアップ。この年式では、T以外のグレードがABSの標準装備化により、コストダウンで4輪ディスクブレーキではなくなりました(注:スポーツグレードは4輪ディスクを継続)が、4WD車だけはなぜか全車4輪ディスクブレーキとなっています(4WD用だけは、コストダウン化せずに初期ロットのABSを流用しているためと思われます)。
■1997年モデル
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2年目にして、マイナーチェンジ。フロントマスクが大きく変わり、よりディアマンテ風のスタイルを得ました。グレード構成は96年モデルと同様。ただし、1500ccのMVVエンジンがDOHCに換装され消滅。今回は4WDの廉価グレードも4輪ディスクブレーキではなくなりました。14インチウィールキャップのデザインも変更され、かっこよくなりました。
■1998年モデル
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MIVEC-MDモデルが生産終了で消滅しました。MXサルーンGは、専用グリルでおめかししたエクシードに変更となりました。
■1999年モデル
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グレードが大幅に縮小、V6MXサルーン、Dターボ車が消滅しましたが、それでもワイドラインアップで笑えます。全車、平成10年アイドル規制をクリアしたため、E代車だったのがGF代車になりました。余談ですが、うちのランサーは、この年式のエクシードです。
グループAでの活躍でますますエボリューションモデルばかりが取り沙汰されるようになりましたが、終始ワイドラインアップで幅広い需要に応えた6代目ランサー。販売台数もまずまずで、エントリーカー需要はもちろんのこと、ファミリーカー需要やスポーツ趣味にも対応する懐の広さでランサー全盛期を謳歌しました。
2000年にランサー・セディアとして生まれ変わりを図り、スポーツ系グレードはエボリューションモデルのみに集約。GDIエンジンにCVTなど、環境対応と燃費性を向上させたファミリーカーとしての性格を強調しました。
中古車市場では、エボリューションモデルのみが現存している状態で、いわゆる「普通の」ランサーは、ほとんど姿を消しました。今から意図的に手に入れようとしても、なかなか難しいものがありますし、部品の供給もだいふ絶版部品が目立つようになりました。維持管理は上級者向けと言えます。
おのおののグレード紹介は、またおいおい…
※2015年8月13日 初版
2019年4月24日 加筆、修正し復活
2019年5月3日 一部修正