ぐらのにっき

主に趣味のことを好き勝手に書き綴っています。「指輪物語」とトールキンの著作に関してはネタバレの配慮を一切していません。

蜘蛛女のキス

2011年01月17日 | ミュージカル・演劇
今年初観劇はなんと小劇場でのミュージカル版蜘蛛女のキス。昨年フライヤーでみかけて、「こんな小さいカンパニーでやるの?」とびっくりして、観に行ってみることにしました。
ハロルド・プリンス版大好きだったんですよねー。実は原作も映画も二人芝居のストレートプレイも観てないんですけど(汗)
で、2007年の荻田版も楽しみにしていたのですが・・・うーんどうも気に入らず・・・。ハロルド・プリンス版の印象が強すぎた、と言えばそれまでなのかもしれませんが。
そんな訳で今回のカンパニーは、逆にハードル下げて観られるかな、というのもありましたが。
結果的に、荻田版よりはかなりよかったです。荻田版では全く泣かなかったんですが、今回結構泣けました。
荻田版は、ハロルド・プリンス版とかなり違うものを作ろうとしていた感じですが、今回の演出は素直にハロルド・プリンス版をなぞっていたように思いました。と言っても小劇場であれを再現するというのは、それだけでも工夫が必要なので、それが逆に新鮮な感じになっていて、なおかつハロルド・プリンス版の大事な部分を残している形になって、なかなか良かったかなあと思いました。
ハロルド・プリンス版では舞台正面に現れる鉄格子がとにかく印象的ですが、今回の舞台では舞台の背後に囲むように鉄格子を配して、さすがに舞台正面の動く鉄格子はなし。でもかなりハロルド・プリンス版の鉄格子の印象は残したセットでした。
荻田版は洞窟のようなセットで鉄格子がなく、最初の音楽と合わないというのもありましたが、何よりもオーロラが登場する時の場の変化が感じられなかったんですよね。
今回のセットは、もちろん動きはしないんですが、中央が空いているので、華やかなライトがあたると上手いこと違う空間に転換できていました。
アンサンブルのダンサーが囚人服のまま、というのは荻田版と同じでしたが、それでもライトと、帽子などの小道具で、モリーナの夢の中なんだ、というのは感じられました。
オーケストラでやっていた音楽をバンドにアレンジしてしまったのもお見事でした。ラテンっぽいナンバーも多いし、バンドでもそんなに違和感はなかったですね。
ただ、キーボードの音色もうちょっとなんとかならなかったかなあ・・・
そして、ハロルド・プリンス版だと鉄格子が動く場面の音楽、さすがにちょっと迫力不足・・・キーボードの音色次第でもうちょっとなんとかなった気もするんですが・・・まあ鉄格子動かないしいいのかな。
そして、もともとこの話って二人芝居になったりするくらいで、狭い牢獄の中での話なんですよね。そのあたりが、小劇場の舞台にはハマってましたね。大きい舞台で牢の中の二人のシーンをやってるとなんか空間がもったいない感じがありましたから。
しかし、スペースの問題なのかモルヒネ・タンゴのストレッチャーが回転椅子になってたのはうーむ、でしたが・・・せめてもうちょっと診療所らしい椅子にならなかったもんでしょうか(汗)

キャストは、飯野めぐみさんとか麻田キョウヤさんとか、大作ミュージカルのアンサンブルでみかける方が主演クラス。というわけで必然的にワンランクレベルは下がるかな、という感じではありましたが・・・
ヴァレンティンの麻田キョウヤさんはレミゼでクールフェラックやってたんですね。私きっと観てると思いますが最近あまりアンサンブルに愛がないから覚えてないなあ・・・(汗)
オーロラの飯野めぐみさん、調べてて初めて知ってびっくりしたのですが、飯野おさみさんと末次美紗緒さんのお嬢さんだったんですね~。というかこのお二人が結婚してたのすら知らなかった(汗)
「イリアス」の印象的だったコロス=戦乙女(と私が勝手によんでた)の5人のうちのお一人だったんですね。
モリーナの土倉有貴さんは今年のレミゼでジョリだそうです。でも私多分観られない感じ・・・
全体的なレベルはワンランク落ちるかな・・・という感じもありましたが、どのキャストもなかなかイメージに合っていて、上手い配役だなと思いました。
思うに、荻田版はミスキャスト気味だったよなあと・・・(汗)いや多分敢えて違うイメージのキャスティングにしたんじゃないかと思いますが、残念ながら私にはそれが上手く作用して昇華していた、とは思えなかったので・・・再演の金志賢さんは観てないのでわかりませんが。
土倉有貴さんのモリーナが良かったなあ。歌やダンスはそんなに印象強くありませんが(なのでラストのダンスシーンがちょっと印象薄かったかな・・・まあ市村さんレベルを求めてもねえ(汗))、とにかく演技が良かったです。とても優しくてかわいらしいモリーナでした。強いて言えばあんまり気持ち悪くなかったかもですが。ヴァレンティンに対する優しさもですが、特にママに対する優しさがもう涙腺緩ませてくれました。
飯野めぐみさんのオーロラもなかなか良かったです。まあ麻実れいさんまでの迫力はなかったですが、ちゃんと妖しいところ、色っぽいところが出ていて、「らしい」オーロラでした。(前に見たオーロラ、ダンスは上手いんだけどなんかかわいらしくて何か違ったんだよな・・・)
しかも、モリーナに話しかけるところなんかは優しくさえあって。これは麻実れいさんとかチタ・リベラにはなかったところじゃないかなーと思うのですが(笑・チタ・リベラの見たことないですけど)
極楽鳥のシーンなんかは健康的なお色気って感じで、麻実れいさんで見た時はただただど派手さに圧倒されてむしろ怖かったのを思い出しました(笑)
刑務署長も、なんか今まで観た中で一番印象強かったかも。軍服じゃなくてスーツ姿だったのが胡散臭くて良かったのかも(笑)
モリーナの母も、明らかに相当老け役、という感じなんですが、なんかとても良かったです・・・素直に泣けました。荻田版のモリーナママの場面、なんか泣けなかったんだよなあ・・・

演出面では、やはりハロルド・プリンス版を意識した演出が多く、嬉しかったです。
映画の話をしているうちにオーロラが牢の中に入ってくるシーン、小さい舞台ならではで、「オーロラが中に入ってきた」感がすごくリアルに感じられて良かったです。なんか涙腺が緩んでしまって・・・
でも、Viva la guerra, viva la revolucionのところは、「死んだと思ったら復活した!」感が薄かったかなあ・・・。ちゃんと3回起き上がってくれたから良かったけど。
最後のモリーナの夢の中も、ちゃんとママが案内係の格好で皆を案内してくれて良かったなあ。

オリジナルに近い演出で観たことで、改めてこの作品の良さを感じることができたように思います。
ダンサー・イン・ザ・ダークやパンズ・ラビリンスと同じように、辛い現実を生きるために夢を見、最後にはその夢の中に入っていく、という話なんだなあと・・・(ダンサー・イン・ザ・ダークにはそこまでの救いはなかったか・・・)
楽曲の良さも改めて実感しました。

こんな小さなカンパニー(失礼)でも版権が取れるのなら、上演しやすい状態にあるってことですかねえ。
また色々な演出で観られるなら楽しみかなあと思います。
韓国でもやって欲しいな・・・いやパク・ウンテさんが今度二人芝居の方でモリーナやるそうなんですが、なんかミュージカルの方でもウンテさんのモリーナ観てみたいかな、なんて思ってしまったので。

そんなわけで、やっぱりよくできた作品だなあと実感した舞台でした。
コメント (2)
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