ぐらのにっき

主に趣味のことを好き勝手に書き綴っています。「指輪物語」とトールキンの著作に関してはネタバレの配慮を一切していません。

ラブリーボーン(ネタバレ)

2010年03月22日 | 映画
PJ監督作品ということで観に行った作品です。いやPJそんなに好きではないんだけど一応LotRファンとしては・・・ね。キングコングも観に行ったし。
事前情報では、結構好き嫌い別れるとか、受け付けない人は受け付けない・・・と聞いていたので自分はどうかなーと思っていたのですが。
うーん、受け付けない人の気持ちもわかるなあと思うのですが、結構描かれていることには共感するなあ・・・という部分もありました。
でも映画の出来としては今ひとつかなあ・・・ただ、見終わった後にすごく強く心に残るものがあって、しばらくずーっと考えさせられました。見ごたえはあった、ということかな。
この映画が受け付けない、という人たちの感想をいくつか見てみた中で、実際に犯罪被害にあった遺族の人たちが見たらどう思うだろう、というのがありました。
確かにそうなんだけど、きっとそういう人たちはそもそもこの映画を観るということ自体できないと思うので、そのあたりは心配しすぎだな、と思いました。たとえば身内にガン患者がいるってだけでその手の映画とかドラマとか見られなくなるものですからね。
・・・でも、そういう人たちを勇気づけるために見せられるような映画でないことは確かですが・・・(汗)
この作品は、結局は大切な家族の死をどうやって乗り越えて行くか、という話なのですが、それが病気だとか事故で亡くなったのではなく、変質者によって殺害されてしまった、しかも遺体は出てこないまま・・・というのがかなり特殊な状況だと思います。
これが病気だとか事故だとかの話だと、確かに単なるメロドラマになってしまってありきたりかな、と思うし、PJが監督することにもならなかったでしょうが・・・でもちょっと「悪趣味」という感がなきにしもあらず・・・
そしてもうひとつ特殊なのは、残された家族だけでなく、命を奪われた本人も自分の死を乗り越える、という過程が描かれていることでしょうか。
結局は人の死を残された人が乗り越えるには、この映画が描かれているように、忘れて開放されること、になるのですが・・・病気や事故で亡くしたって辛いのに、ましてや殺されたとあってはどれだけ辛いことか・・・
遺体が出てこないというのも、かなり辛い状況でしょう。「おくりびと」でも描かれてましたが、遺体と最後のお別れをする、というのは、区切りをつけるためにはかなり大切な儀式だと思います。それができないというのは、それだけ乗り越えるのに時間がかかるということでしょう。
そんな、究極の状況での「死の乗り越え方」が描かれていた、ということなのだと思います。
結局犯人はわかったのに捕まらないまま・・・というのも、前に進むには犯人を恨んでも意味がないのだ、ということを究極の形で表していたな、と。
このあたりにはかなり共感するものがあったのです。
ちょっと話が逸れますが、菅家さんの冤罪事件が取り沙汰されてた時、気になっていたのが、「遺族の人たちはどう思っているんだろう」ということでした。
もし菅家さんが犯人だと信じて恨み続けていたのだとしたらいたたまれないよなあと・・・
この映画を観て、スージーの家族のように、乗り越えていてくれたのならいいな、と思いました。
犯人を恨む気持ちは当然だけれど、復讐には何の意味もない、というのは少し前に見た「復讐者に憐れみを」でまた究極の形で描かれてました。
それでもあの映画では、犯人側にも不幸な理由があって・・・というものでしたけど、この映画の犯人は同情の余地のない変質者ですから、こっちの方が究極かな・・・
復讐はしないまでも、たとえ法で裁かれたとしても、亡くなった人は帰ってこないし、それで気持ちが晴れるかと言えば、多分晴れることはないでしょう・・・
それなら、復讐したり恨んだりすることよりも、自分たちの未来を大切にして前に進んで行こう、そういうことを描いた映画だったんだと思います。
その点には非常に共感する部分があったのですが。
犯人が捕まらないまま・・・というのも、前にも書きましたが、その究極の形なのかなと。後味は悪いですが・・・
しかし、最後に犯人が無残に死に方をする、というのは、その趣旨からいくとむしろ余計な気がしたんですけど・・・かえって中途半端だよなあ。いらなかったと思います。
途中のちょっとサスペンス仕立てなところも、見ているうちはちょっと引きこまれたけど、映画全体の流れとしてはどうかなあ。結末を知ってもう一度見た時にどう思うか微妙なところです。
あと、霊感の強い女の子(名前忘れちゃった)の扱いも、「え、使い道ここだけですか・・・」という感じでちょっと肩すかしでした。スージーの死に最初に気づいたところとかはちょっと良くて、どう絡んでくるか楽しみにしていたのですが・・・がっかりでした。
あと、いろいろとPJらしい悪趣味なシーンもあったかなあ。特に、スージーの遺体が入った金庫が転がされていくシーンと、スージーが思いを遂げようとしているシーンが交互に映されるのは、ちょっと悪趣味と思えましたね・・・シニカルなアイロニーと捉えるべきシーンかもしけないけれど、私には悪趣味に思えました。
天国のシーンのCGも、WETAにしてはいかにもCGって感じがして(まあ現実世界じゃないのでああいうものかもしれないけど)そんなにすごいとは思わなかったかな。
ただ、天国での殺された少女たちの様子にはちょっと涙を誘われてしまいました。無残な最期を遂げた少女たちだけれど、天国では穢れのないまま、美しいままでいるんだよ、というのは、少しだけ救われる気持ちになりました。
それでも、それはスノードームの中の世界にいるのと同じで、美しいけれどそのまま時が止まってしまっているのですが・・・
ラストのスージーのモノローグの、「私の名前はサーモン。・・・ほんの少しだけ生きた・・・」という件を聞いてたらだーっと泣けてしまいました。
自分の死を認め、自分を置いて先に進む家族を認め、天国に行くことができるようになるまでの物語、でもあるんですよね。
そのスージーの、キラキラ輝いていたけれどほんの短い間で終わってしまったはかない生を思ったら、切なかったです。
全体的に表現方法などで疑問に思う部分もいろいろありましたが、死と残された人たちの再生について考えさせられる作品でした。
原作とどの程度違うのか気になるところですが、ちょっと内容がヘヴィなので原作読む気がしないなあ・・・
あ、PJのカメオ出演はすぐにわかりましが、エンドロール見てたらショッピングモールの客のところにBilly Jacksonって名前があったけど、あのビリーくんでしょうか?
ケイティちゃんの名前は見つけられなかったのですが、今回は出てなかったのかな。大きくなってるだろうなあ。
そういやPJは自身もかわいい娘がいるのによくこういう映画撮ろうと思ったな・・・なんてこともふと思いました。いやだからこそ撮ったのかな・・・

てな訳で今年見た映画の順位。
1.復讐者に憐れみを / 2.Dr.パルナサスの鏡 / 3.ラブリーボーン / 4.かいじゅうたちのいるところ
色々考えさせられましたが、全体的な出来を考えるとこの順位かなあ。

あと今年これから観に行く予定の映画。
公開中「コララインとボタンの魔女」(鑑賞済み)「パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々」「ニューヨーク、アイラブユー」「プリンセスと魔法のキス」(鑑賞済み)「NINE ナイン」
3月27日公開「誰かが私にキスをした」
4月17日公開「のだめカンタービレ最終楽章 後編」「アリス・イン・ワンダーランド」
4月23日公開「ウルフマン」
5月8日公開「9ナイン~9番目の奇妙な人形~」
11月公開「ハリー・ポッターと死の秘宝 前編」
12月公開「ノルウェイの森」
うわー溜まって来たなあ。消化できるでしょうか・・・(汗)
コメント
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