2022年4月21日(木) ウクライナのこと その8
ウクライナ情勢は、緊迫した状況が、連日続いていて、ウクライナ紛争の出口は見えていない。ロシア側は、首都キーウの攻撃から、東側に重点を移していると伝えられている。
下図は、軍事侵攻から、現在までの戦況地図だが、時点をずらしてみると状況が分かる。
(ウクライナ情勢 ロシアによる軍事侵攻 最新情報・解説 - NHK特設サイト 2.html)
以下は軍事進攻が始まった、2/24時点のものだ。
上図で濃い斜線で示すように、クリミア半島と、東部のドネツク州は、侵攻前からロシアの支配下にあったようだ。
以下は、侵攻1か月後の3/24時点のものだ。
そして下図は、最新の、4/19時点のものを示す。
〇要衝 マリウポリの攻防
前図にある、東側の要衝 マリウポリを巡って、ロシア側は、JSTの17時と時限を設定して、武器を捨てて投降するよう要求を突き付け、応じる場合は安全を保障するとしたようだ。
これに対し、ウクライナ側は、要求を拒否し、徹底的に戦うとしている。
ロシア側はこれを不満とし、改めて、時限を設けて、投降するよう要求しているようだが、変化はないようだ。今後、戦闘は更に激化し、一般市民も巻き込んだ、壊滅的な戦いになると言われている。
マリウポリの人口は、侵攻以前は、60万人といわれ、国外などにかなり脱出したと伝えられているが、現在も、10万人もの人が、地下室などに逃げ込んでギリギリの線で耐えているのではと言われている。
両者の停戦交渉も、オンラインで行われているようだが、今後どうなるかは、見えておらず、ウクライナ側は、交渉の中止もあるとしているようだ。
今回の軍事進攻のロシア側の狙いはよく分からないが、指し向きは、ウクライナ東部を、北のハルキウから南のクリミア迄、部分的に占領し、ロシア領に編入し、陸続きで行けるようにすることではないか。クリミア半島の編入に加え、今回も力ずくで領土を広げる指向だ。
プーチン大統領としては、国威が最高に高揚する、5月9日の、ロシアの祝日である対ドイツ戦勝記念日までに、ウクライナの形を着けたい腹積もりではないか。 この日は、第二次世界大戦の終盤、ナチスドイツが、連合国(米、英、ソ)に対し、無条件降伏した日になっている。ロシア側が、ウクライナの抵抗勢力を、事あるごとに、ナチに結び付けることと無縁ではないだろう。
地図に出ている、ウクライナの主要都市は、人口順で、以下のようになっている。
1位 キーウ(旧キエフ) 2位 ハルキウ(旧ハリコフ) 3位 オデーサ(旧オデッサ) 7位 リビウ
11位マリウポリ
〇ノボロシア
ウクライナの東部地域は、ドンバス地方と呼ばれ、特に、ルガンスク州とドネツク州は、ロシア系の住民が多く、分離独立を求めて、新国家を設立し、これを、ロシアが承認してきた経緯もあるようだ。
東部地域全体を「ノボロシア」(ロシア語で、新しいロシアの意味)とし、一時、傀儡政権が樹立されたようだが、現在はどうなっているかは、不明である。
(ノヴォロシア人民共和国連邦 - Wikipedia.html 参照)
ロシア本土と、2014年に一方的に編入したクリミア半島と、地続きの直結したルートを作ることが、指し向きの目標の様だ。
〇フィンランド、スエ―デンが、NATO指向へ
フィンランドは、軍事的な中立を指向し、NATOには加盟しない路線を進んできたが、今回のロシアの軍事侵攻の実態をみて、考え方が変わってきているようだ。スエーデンも、中立指向の姿勢を見直す動きになっているようだ。
特に、フィンランドは、1300kmにも亘って、ロシアと国境線を接しており、第二次世界大戦の終盤、ロシアに攻め込まれ、可なり広いカレリア地方を、割譲させられたという、忌まわしい思いがあるという。
フィンランド、スエーデン両国は、前稿で触れたように、経済同盟であるEUには、1995年に加盟している。
この6月末に、スペインのマドリードで、NATO首脳会議が開催される予定で、フィンランド、スエーデンのNATO加盟が認められることになるだろう。
ロシア側から見ると、南のトルコ、中部の東欧諸国、北部のバルト三国と壁ができ、更に北になるスカンジナビア三国も、新たな壁になると言うことだ。
ロシアとしては、ウクライナのNATO加盟は、絶対に認めないだけに、フィンランド、スエーデンのNATO加盟に対するロシアの反発は大きいだろうか。
〇ロシア黒海艦隊旗艦が、沈没
先日、ロシア海軍の黒海艦隊の旗艦である、巡洋艦「モスクワ」が火災を起こし、曳航途中で沈没したというニュースが、ロシア国防省から発表された。これに対して、ウクライナ側から、あれは、ウクライナ製の2発のミサイルが、モスクワに命中し、破壊されて沈没したものだ、と発表されている。勿論、後者の言い分が正しいだろう。
黒海艦隊は、不法に占領している、クリミア半島のセバストポーリ軍港を拠点としている。
在りし日の、旗艦モスクワ
〇在日ロシア大使館員の国外追放
昨20日の午後、羽田空港から、ロシア大使館の職員8名が、日本政府の、国外追放措置により、強制的に帰国することとなった。航空機は、ロシアが準備したようだ。
言うまでもなく、ロシアのウクライナ侵攻に対する日本政府の、抗議の意思表示で、極めて異例のことという。
今後、ロシア側からの報復措置が予想されるところで、その中には、日ソ間の懸案事項である、北方領土交渉、サケマス漁業問題、サハリン天然ガス開発、なども含まれ、大きな影響を受けることへの覚悟が必要だろう。