2013年5月10日 (金) 富士山を巡ってーUTMF
来月の世界遺産への登録が、ほぼ確実となった富士山を「巡って」の話題が、この所、多いが、当ブログでも、何回かに分けて取り上げてみたい。
手始めに、5月8日朝の、NHKの「あさイチ」でも話題となった、ウルトラトレイル・マウントフジ(ULTRA―TRAIL Mt.FUJI:UTMF)についてである。
このイベントは、勿論、富士山の世界遺産登録を期して行われているものだ。アルプスの最高峰モンブランの周囲の、フランス・スイス・イタリアにまたがる山岳地帯で、2003年来行われて来ている、ウルトラトレイル・デュモンブラン(UTMB)(距離168km 制限時間46時間 累積標高差9600m) を参考にして始められたもののようで、UTMBのノウハウを貰いながら実施にこぎつけ、昨年に第1回が行われたようだ。(ウルトラトレイル・デュ・モンブラン - Wikipedia)
今年は、第2回となり、先日の4月26日午後3時に、富士五湖の河口湖畔をスタートして、制限時間46時間内(28日午後1時まで)で、下図のように、富士山を巡って一周する、161km(100マイル)の山道等のコースを走破するようだ。
途中の地点A3から参加し、コースをほぼ半周する、STY(Shizuoka To Yamanashi)もあるようだが、こちらのSTYは、距離は84km、制限時間は24時間という。
コース内に、A1~A10の10か所の支援救護施設(エイドステーション)と、水場Wが2か所設けられていて、飲食物を補給したり、休息したり、治療が受けられるようになっている。A2~A3間の天子山地と、A9~A10間の杓子山が、高低差の大きい難所の様だ。 (COURSE MAP | RACERS | ULTRA-TRAIL Mt.FUJI)
UTMFコース
通常のマラソンは、42km程のほぼ平坦な道を、精々、数時間で走る訳だ。又、駅伝も、平坦な道が一般的で、年初恒例の箱根大学駅伝で、箱根山中第五区の山登り・山下りが、唯一、注目されている程度だ。
これらに比べ、UTMFでは、距離の長大さは勿論だが、山道の累積高低差が、9164mにもなり、夜間も走る、など、参加者にとっての負担の重さは、比べるべくもない。
今年の大会の結果は、一部数字は、入手できていないが、以下のようで、
コース 出走者数 完走率 参加費用 優勝者国籍と時間
UTMF 991 3万6千円 日本人 約20時間
STY 937 92.2% 2万4千円 外国人 約10時間
計 約2000人
全体では、7割程が、時間内に完走したと言うから、凄いことである。 (RACE INFORMATION | ABOUT UTMF )(UTMFプレスリリースVol5_0428 )
今回のNHK番組では、参加した2人の女性ランナーに焦点を当てて紹介されたが、参加者の努力は勿論だが、それを応援・支援する家族・知人の奮闘も大変なもので、感動的な色々なドラマがある。NHKでは、今日10夜の番組 特報首都圏でも、“密着! 富士山トレイル~161キロレースの挑戦者たち~”として、UTMFに参加した、特定の人達の様子が紹介された。
日本でもこのようなレースを行えるようになった、というのは素晴らしいことで、主催側の御苦労に敬意を表したい。準備は勿論だが、長時間に亘る各支援施設の運営等、並大抵のものではないだろう。
それにしても、気になるのは、夜間も、ヘッドランプを付けながら走るが、道に迷ったり、行方不明になる等の事故が無いのなら、不思議な位だ。昼夜の、コースの表示法はどうしているのだろうか。参加者各自が、オリエンテーリングのように、地図と磁石を持っているのだろうか?
また、競技参加者と、応援者や支援施設との間での通信連絡手段だが、無線トランシーバーや携帯電話など、全コースに亘って使えるのだろうか? 山地では、不感地域も、かなりあるのではないか。でも、山頂にアンテナを立てたり、衛星を使えば大丈夫かな?
トレイル(trail)とは、普段あまり聞かない言葉だが、元々は、森林・原野・山地などの踏み分け道、と言うことのようで、細い山道を踏み分けて行く、と言うことだろうか。後に付いていく、と言う意味で、牽引型のトラック、トレーラーの語源も同じようだ。トレイルランニングと言う言葉が、急速に定着しつつあるようだが、強いて日本語に訳せば、山地マラソンとでもなるだろうか。
競技の管理団体である、日本トレイルランニング協会(JTRA)によると、競技として規定されるコースの条件は以下の4点である、となっている。(トレイルランニング - Yahoo!百科事典)
(1)走行コースの75%以上が未舗装道路であること。
(2)泥や木の根などの自然の障害物があること。
(3)激しい高低差があること。
(4)大自然の美しい景観が得られること。
クロスカントリーなど、類似の競技もあるようだが、 この、トレランでは、(1)~(3)と、敢えて、厳しい条件を付けているところが面白い。 でも、苦しいながらも、(4)は救いで、今回は、全コースでいつも秀麗な富士山が見える、というのは最高の歓びだろうか。
駿河湾から日本海の糸魚川に抜ける、フォッサ・マグナに沿って、本州を横断するイベントを、以前、TVで見たことがある。ネットで調べると、足かけ4日間で、フルコースだと、281kmと大変な距離だが、宿泊時間は別になっていたり、部分的に参加したり、鉄道との併用も出来る等、思った程には厳しいレースではないようだが、これは、トレランとは言わないのだろうか。(1021フォッサ・マグナを攻める本州横断280km!)
富士山は、姿形の素晴らしい独立峰として、広大な裾野を有している。今回のUTMFは、この裾野や周辺の山地を、足だけで一周するものだが、これに因んで、幾つかの富士山一周について調べてみた。
①富士山の周囲の平地の道を、時間をかけて、ゆっくり歩いて廻る事も出来る訳で、現代の健脚者向けに、何回かに分けて一周するイベントなどもあるようだ。
以前の富士講の参拝者達には、富士登山は、勿論主目的なのだが、その折りに、富士五湖や、胎内樹型や白糸の滝等を巡る楽しみもあったであろうか。
②自転車で富士山麓を一周するイベントもあるようだ。下図の、約120kmのコースを廻るようで、制限時間は10時間とある。でも、単なる時間の競技だけでなく、環境美化のゴミの収集などもやるようだ。(富士山一周「Mt.FUJIエコサイクリング」)
自転車で一廻り
③車で、富士山を一周する場合は、どのくらいの距離と時間になるのだろうか。
ネットには、ゆっくり時間をかけて、一泊二日、二泊三日等で廻った体験談が多く載っている。最短と思われるものでは、ルートは下図のようで、殆どが、国道利用になっているが、一周約110kmを、休憩を入れて、約5時間で廻るというのがあった。(指定の地点 から 富士パノラマライン/国道139号線 - Google マップ)
車で一周
④山腹の、5合目までは、バスや車で登れるのは周知のことだが、この、5合目近傍を巡って、富士山を、水平移動で一周することは出来るのだろうか。
以前、5合目近傍から、山腹を一周できる登山道・遊歩道がある、やに聞いたことがあるのだが、今回改めて調べた所では、そのような、周回する登山道は無いようだ。
ただ、現在は、山梨側を主体に、「お中道」と称して、中程までいって戻ってくるような遊歩道は、いくつかあるようだが、静岡側には、大沢崩れや宝永山などがあって危険なため、周回するのは、難しいのだろうか。
仮に、この様な周回登山道が出来るとすれば、地図上の概算では、全長およそ20km位になるだろうか。
所がである、あれこれネットで調べていたら、往時は、難度の高い修行の道として、下図の様な、立派な、お中道があったことが判明した! この一周コースは、高度は2300~2800m位で、長さは約24kmだったと言う。 大沢崩れが難所だった様だが、事故が起きたために昭和52年に閉鎖され、現在に至っているようだ。
以前、自分が登ったのはその前だから、その頃には、伝聞通り、まだあったのだ。
以前の一周するお中道
⑤そして、最後に嬉しいことに、山頂では、「お鉢巡り」と称して、最短距離となる噴火口の周囲約3kmを、1時間半程で、峰伝いに、歩いて一回りする事が出来るのである。
お鉢巡り
この、お鉢巡りは、以前、夫婦で登頂した時の、忘れられない思い出にもなっている。