4月14日(水) 地域の統合と発展 その2 平成の大合併
平成の大合併と言われ、市町村の合併統合が促進されて、この所、新しい市町村が、続々
と誕生して来た。全国の市町村数をみると、以下のように、この10年位で、ほぼ半減し
ているようだ。
1999.4 3229
2005.3 2688
2010.2 1747
2010.3 1730
合併後の自治体の名前では、各自治体の面子をかけて、色々な工夫が見られるのは面白
いが、葛藤も多いようだ。ここ20年程の間に行われた合併の中で、市部について、特に、
ネーミング面を中心に調べてみた。全国的には、よく知らない地域も多いので、対象を、
比較的馴染みのある首都圏(一都六県+山梨県+伊豆)に限定してある。
○大きな市町を中心にして、周辺の自治体が、統合編入されるケースが最も多く、この場
合は、大きな方の市町名が継承される。 例えば、
相模原市への統合←神奈川県 津久井郡(城山町、津久井町、相模湖町、藤野町)
土浦市への統合←茨城県 新治郡新治村
神栖市でスタート←茨城県 鹿島郡(神栖町+波崎町)
上野原市でスタート←山梨県 北都留郡上野原町+南都留郡秋山村 などである。
○これに対し、互いの面子を立て、争いを避けるために、統合後は、新たな自治体名でス
タートするケースも多く、新しい市のネーミングについて、色々な工夫が見られる。
・上位の県名や旧国名を付ける
埼玉県 さいたま市 大宮市+浦和市+与野市+岩槻市(後で統合)
栃木県 下野市 河内郡南河内町+下都賀郡(石橋町+国分寺町)
山梨県 甲州市 塩山市+東山梨郡(勝沼町+大和村)
甲斐市 中巨摩郡(竜王町+敷島町)+北巨摩郡双原町
・所属した郡名を付ける
千葉県 匝瑳市(そうさ) 八日市場市+匝瑳郡野栄町
八日市場市は、旧匝瑳郡八日市場町であった。難解な郡名の匝瑳と
は、一説では、“美しい麻布”の意味という。
香取市 佐原市+香取郡(小見川町+山田町+栗源町)
佐原市は、旧香取郡佐原町であった。
山武市(さんむ) 山武郡(城東町+山武町(さんぶ)+蓮沼村+松尾町)
郡名の山武郡(さんぶ)の古名が、さんむ だったようである。統
合する山武町とも区別する狙いもあったかも。
いすみ市 夷隅郡(いすみ)(夷隅町+大原町+岬町)
竜馬伝で話題の攘夷の夷。難解さを避けるとともに、統合する夷隅
町とも区別するため、ひらがなにした?
茨城県 行方市(なめかた) 行方郡(麻生町+北浦町+玉造町)
稲敷市 稲敷郡(江戸崎町+新利根町+東町+桜川村)
・大きな地域名を付ける
東京都 西東京市 田無市+保谷市
あきる野市 秋川市+西多磨郡五日市町
あきる、とは、秋留、阿伎留など、古い地域の名前のようだ。
千葉県 南房総市 安房郡(富浦町+富山町+三芳町+白浜町+千倉町+丸山町+
和田町)
房総半島の南部
埼玉県 ふじみ野市 上福岡市+入間郡大井町
東武線のふじみ野駅は、今回の合併から外れた、富士見市にある!
茨城県 常総市 水海道市+結城郡石下町
常総とは、旧国名の常陸+下総の意。旧下総国に属する水海道市が、
旧常陸国内の自治体との統合を目論んだが失敗。旧下総国内同士の
統合になったが、より広域の地名をつけた?
ひたちなか市 勝田市+那珂湊市
勝田市も、那珂湊市も、以前は、那珂郡勝田町、那珂郡那珂湊町で
ある。他と区別するために、旧国名を冠したようだ。
坂東市 岩井市+猿島郡遠島町
古来、坂東は、関東一円を意味する地名で、坂東太郎は、利根川の異称。
筑西市 下館市+真壁郡(関城町+明野町+協和町)
名山筑波山の西
桜川市 西茨城郡岩瀬町+真壁郡(真壁町+大和町)
地域を流れる、由緒ある桜川
山梨県 南アルプス市 中巨摩郡(八田村+白根町+芦安村+若草町+櫛形町
+甲西町)
南アルプス連邦が近い
中央市 東八代郡豊富村+中巨摩郡(玉穂町+田富町)
静岡県 伊豆市 田方郡(修善寺町+土肥町+天城湯ヶ島町+中伊豆町)
伊豆の国市と紛らわしい
伊豆の国市 田方郡(伊豆長岡町+韮山町+大仁町)
伊豆市と紛らわしい
・それぞれの頭字を取る
栃木県 那須塩原市 黒磯市+那須郡(西那須野町+塩原町)
観光地名を優先している。
茨城県 小美玉市 東茨城郡(小川町+美野里町)+新治郡玉里村
・親しみのある名・夢のある名を付ける
栃木県 さくら市 塩谷郡(氏家町+喜連川町)
群馬県 みどり市 勢多郡東村+新田郡笠野町+山田郡大間々町
茨城県 つくばみらい市 筑波郡(伊奈町+谷和原村)
こうして見ると、茨城県と千葉県に、ニューフェイスが多いようだ。また、さいたま市、
をはじめ、ひらがな名も、増えてきている。ひらがな名といえば、古くは、福島県の、い
わき市などが、元祖だろうか。カタカナが入るのは、全国でも、南アルプス市だけだろう
か?
○郡制について調べてみると、明治以降、色んな経緯があり、一時は、立派な行政単位と
して、軍長や、郡議会が設置された時もあるようだ。その後、行政単位としての郡は廃止
され、現在は、単なる、地域識別用の名称程度にしかなっていない。今回の合併統合によ
り、郡に所属する町村が無くなった地域では、郡の名称も消滅している。
上述のように、合併後の新しい市の名称として、郡の名前が、何とか生き残ったところも
あり、又、旧郡内の市町村共同で、公立病院等を設立しているところもある。
一方、神奈川県津久井郡の城山町、津久井町、相模湖町、藤野町が集まり、一時的に、津
久井郡行政組合が結成され、郡としての行政が行われたようだが、相模原市への編入で、
この組合は解散している。
○合併で規模が大きくなり、財政基盤が強化されるなど、よくなる面が多いと思われるが、
行政サービスが、却って悪くなる懸念は、無いのだろうか。いくつもの町村が合併して、
待望の市制は敷いたものの、どんぐりの背比べで、中心が無いような地域もありそうで、
今後が懸念されるのだがーーー。
新しい自治体の名前が定着し、行政が軌道に乗るには、少なくとも、10年程度はかかる
だろうか。企業の合併や吸収でも、悲喜こもごもがあるが、市町村の編入や合併でも、旧
地域同士や、旧行政担当者間の、見えないところでの葛藤は、当分は続くのだろうか。
行政の単位や組織は、時代に合わせて、変化していくものであろう。
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平成の大合併と言われ、市町村の合併統合が促進されて、この所、新しい市町村が、続々
と誕生して来た。全国の市町村数をみると、以下のように、この10年位で、ほぼ半減し
ているようだ。
1999.4 3229
2005.3 2688
2010.2 1747
2010.3 1730
合併後の自治体の名前では、各自治体の面子をかけて、色々な工夫が見られるのは面白
いが、葛藤も多いようだ。ここ20年程の間に行われた合併の中で、市部について、特に、
ネーミング面を中心に調べてみた。全国的には、よく知らない地域も多いので、対象を、
比較的馴染みのある首都圏(一都六県+山梨県+伊豆)に限定してある。
○大きな市町を中心にして、周辺の自治体が、統合編入されるケースが最も多く、この場
合は、大きな方の市町名が継承される。 例えば、
相模原市への統合←神奈川県 津久井郡(城山町、津久井町、相模湖町、藤野町)
土浦市への統合←茨城県 新治郡新治村
神栖市でスタート←茨城県 鹿島郡(神栖町+波崎町)
上野原市でスタート←山梨県 北都留郡上野原町+南都留郡秋山村 などである。
○これに対し、互いの面子を立て、争いを避けるために、統合後は、新たな自治体名でス
タートするケースも多く、新しい市のネーミングについて、色々な工夫が見られる。
・上位の県名や旧国名を付ける
埼玉県 さいたま市 大宮市+浦和市+与野市+岩槻市(後で統合)
栃木県 下野市 河内郡南河内町+下都賀郡(石橋町+国分寺町)
山梨県 甲州市 塩山市+東山梨郡(勝沼町+大和村)
甲斐市 中巨摩郡(竜王町+敷島町)+北巨摩郡双原町
・所属した郡名を付ける
千葉県 匝瑳市(そうさ) 八日市場市+匝瑳郡野栄町
八日市場市は、旧匝瑳郡八日市場町であった。難解な郡名の匝瑳と
は、一説では、“美しい麻布”の意味という。
香取市 佐原市+香取郡(小見川町+山田町+栗源町)
佐原市は、旧香取郡佐原町であった。
山武市(さんむ) 山武郡(城東町+山武町(さんぶ)+蓮沼村+松尾町)
郡名の山武郡(さんぶ)の古名が、さんむ だったようである。統
合する山武町とも区別する狙いもあったかも。
いすみ市 夷隅郡(いすみ)(夷隅町+大原町+岬町)
竜馬伝で話題の攘夷の夷。難解さを避けるとともに、統合する夷隅
町とも区別するため、ひらがなにした?
茨城県 行方市(なめかた) 行方郡(麻生町+北浦町+玉造町)
稲敷市 稲敷郡(江戸崎町+新利根町+東町+桜川村)
・大きな地域名を付ける
東京都 西東京市 田無市+保谷市
あきる野市 秋川市+西多磨郡五日市町
あきる、とは、秋留、阿伎留など、古い地域の名前のようだ。
千葉県 南房総市 安房郡(富浦町+富山町+三芳町+白浜町+千倉町+丸山町+
和田町)
房総半島の南部
埼玉県 ふじみ野市 上福岡市+入間郡大井町
東武線のふじみ野駅は、今回の合併から外れた、富士見市にある!
茨城県 常総市 水海道市+結城郡石下町
常総とは、旧国名の常陸+下総の意。旧下総国に属する水海道市が、
旧常陸国内の自治体との統合を目論んだが失敗。旧下総国内同士の
統合になったが、より広域の地名をつけた?
ひたちなか市 勝田市+那珂湊市
勝田市も、那珂湊市も、以前は、那珂郡勝田町、那珂郡那珂湊町で
ある。他と区別するために、旧国名を冠したようだ。
坂東市 岩井市+猿島郡遠島町
古来、坂東は、関東一円を意味する地名で、坂東太郎は、利根川の異称。
筑西市 下館市+真壁郡(関城町+明野町+協和町)
名山筑波山の西
桜川市 西茨城郡岩瀬町+真壁郡(真壁町+大和町)
地域を流れる、由緒ある桜川
山梨県 南アルプス市 中巨摩郡(八田村+白根町+芦安村+若草町+櫛形町
+甲西町)
南アルプス連邦が近い
中央市 東八代郡豊富村+中巨摩郡(玉穂町+田富町)
静岡県 伊豆市 田方郡(修善寺町+土肥町+天城湯ヶ島町+中伊豆町)
伊豆の国市と紛らわしい
伊豆の国市 田方郡(伊豆長岡町+韮山町+大仁町)
伊豆市と紛らわしい
・それぞれの頭字を取る
栃木県 那須塩原市 黒磯市+那須郡(西那須野町+塩原町)
観光地名を優先している。
茨城県 小美玉市 東茨城郡(小川町+美野里町)+新治郡玉里村
・親しみのある名・夢のある名を付ける
栃木県 さくら市 塩谷郡(氏家町+喜連川町)
群馬県 みどり市 勢多郡東村+新田郡笠野町+山田郡大間々町
茨城県 つくばみらい市 筑波郡(伊奈町+谷和原村)
こうして見ると、茨城県と千葉県に、ニューフェイスが多いようだ。また、さいたま市、
をはじめ、ひらがな名も、増えてきている。ひらがな名といえば、古くは、福島県の、い
わき市などが、元祖だろうか。カタカナが入るのは、全国でも、南アルプス市だけだろう
か?
○郡制について調べてみると、明治以降、色んな経緯があり、一時は、立派な行政単位と
して、軍長や、郡議会が設置された時もあるようだ。その後、行政単位としての郡は廃止
され、現在は、単なる、地域識別用の名称程度にしかなっていない。今回の合併統合によ
り、郡に所属する町村が無くなった地域では、郡の名称も消滅している。
上述のように、合併後の新しい市の名称として、郡の名前が、何とか生き残ったところも
あり、又、旧郡内の市町村共同で、公立病院等を設立しているところもある。
一方、神奈川県津久井郡の城山町、津久井町、相模湖町、藤野町が集まり、一時的に、津
久井郡行政組合が結成され、郡としての行政が行われたようだが、相模原市への編入で、
この組合は解散している。
○合併で規模が大きくなり、財政基盤が強化されるなど、よくなる面が多いと思われるが、
行政サービスが、却って悪くなる懸念は、無いのだろうか。いくつもの町村が合併して、
待望の市制は敷いたものの、どんぐりの背比べで、中心が無いような地域もありそうで、
今後が懸念されるのだがーーー。
新しい自治体の名前が定着し、行政が軌道に乗るには、少なくとも、10年程度はかかる
だろうか。企業の合併や吸収でも、悲喜こもごもがあるが、市町村の編入や合併でも、旧
地域同士や、旧行政担当者間の、見えないところでの葛藤は、当分は続くのだろうか。
行政の単位や組織は、時代に合わせて、変化していくものであろう。
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