誤発注、利益140億円返上へ UBS・日興・リーマン
(2005年12月14日 (水) 21:38 朝日新聞)
みずほ証券がジェイコム株の誤発注により巨額の損失を出した問題で、欧州系金融機関のUBSグループ、日興コーディアルグループ、米リーマン・ブラザーズ証券が14日、同株の取引で得た利益を全額返上する方向で金融庁などと協議を始めた。3グループあわせると同株の売買で得た利益は約140億円にのぼる。野村証券など、他の証券大手も同様の検討を始めた。ただ、みずほ証券に直接利益を返還した場合には、課税される可能性があるため、業界内に受け皿を作る案も浮上している。
前回の記事では、東証のシステム自体に欠陥があったとまでは知らず、みずほ証券の大チョンボだと思っていたら、旅行に行っているうちに事態の急展開があって驚いていたところです。
47thさんの指摘されているように、今回のように明白なエラーに対して機会主義的な行動によって損害を拡大させた者に思ったような利益は得させないことが、結果的には市場の安定性を高める(今後同様の事態が起きたときに「俺も今度は一丁やったるぜ」というような輩が乱入することとともに、システムエラーに過敏になることで過剰なシステム投資をせざるを得なくなることも防ぐ)ためには必要だと思います。
ただ、みずほ証券に直接返還するにはどういう法的構成をとるのかな、とか利益を還元した場合に課税問題をどうするのだろうなどと考えていたのですが、基金に自発的に拠出という収め方であれば、うまく収まりそうな感じですね。
さすがいろいろ知恵を絞る人がいるようです。
ところで、
リーマンは14日、「誤発注という単純なミスに乗じて、利益を得るべきではないと考えている」と説明している。
と言ってますが、UBSやリーマンなどが「フェアプレイの精神」で利益を還元したかというと、そんなきれいごとではないんじゃないでしょうか(ならそもそも発行済み株式総数以上の株を買い付けるなんてことをするはずがないですよね)
以下、余計な勘ぐりですが
① このままでは世論の反発を受けて金融庁が強制的な利益還元を求められる可能性が高い
② それに対し反発するのも企業イメージが悪い
③ 日本政府の圧力に対してはアメリカ政府などを経由して圧力をかけるという対抗手段が常道だが、今回についてはそんなに威張れる利益でもなく、また小泉首相と親密なブッシュ大統領が味方につくか不透明
④ 金融庁を敵に回して、自分のきな臭い部分(プライベート・バンキングの怪しい商品とかクロスボーダーの租税回避行為とか)を徹底的に探られるのはやぶへび。逆にここで「貸し」を作っておけば、何かの役に立つかもしれない。
⑤ 「なんでもあり」を日本勢に思い知らせて、逆に必死に勉強されてやっかいなライバルに育てるよりは、今しばらく「ぬるま湯」につかっていてほしい(これはないかw)
なんていうソロバン勘定が働いて、今回は殊勝(鷹揚?)なところを見せたのかもしれませんね。
こういう損得勘定で結局妥当なところに収まるのも、一種の市場の効率性っていうのでしょうか・・・
ついでですが、個人のデイ・トレーダーについては、「万馬券」の体験をさせておけば、味を占めてもっと金を落とすようになるでしょうから、業界としては今回は儲けさせておくほうがいいんだと思います。