乗りかかった船が漂流を続けてしまったためズルズルと記事を書いてきましたが
耐震偽装マンション 政府支援策決定 (2005年12月 6日 (火) 16:44 産経新聞)
ということで、ここでひと休みしようと思います。
≪支援策骨子≫(順序は元記事と入れ替えてます)
1 マンションを退去する住民に公的賃貸住宅を提供
2 移転費、家賃、自治体の相談態勢の整備費に地域住宅交付金を使い公的支援
3 自治体がマンションを買い取り解体し、建て替えて住民に再分譲する緊急対策事業を創設、都市再生機構に事業を委託できる
4 償還期間の延長、据え置き期間の設定、期間中の金利下げで住民のローン負担を軽減
5 全希望者に耐震診断を実施
1,2について
居住者に対しては今月中に退去を求める。マンションの解体や居住者の生活支援のため、平成十七年度に創設した地域住宅交付金(今年度は五百八十億円)などを活用。
賃貸住宅提供の期間は建替え完了までですかね。期間限定でないと一般の応募者との不公平の問題が出るかもしれません。
また、ヒューザーは広い物件が売りだったそうなので、移転先の広さとか、家具の保管費用とか詳細も問題になりそうです。
その意味では、公的資金の枠を決めてしまう方式のほうが確かにいいかもしれません。
3について
自治体がマンションを買い取る形にすることで、売り主と買い主の間に生じる瑕疵(かし)担保責任を行政が引き継ぎ、個々の買い主に代わって自治体が一括して売り主への費用負担を求めることができるようにする。
建物には価値がないため、土地の価格だけで住民から買い取る。解体は全額公費で負担、建て替え費用は階段やエレベーターなど共用部分を中心に補助し、完成後は希望者に再分譲する。
① 転売しされた場合、元の売買契約が引き継がれるわけではないので売主(ヒューザー)は当然には瑕疵担保責任を負わないはずですが、そのへんどうするのでしょうか?
② ①が実現されても住民はヒューザーへの不法行為責任の追及はできる、ということですかね(損害は出るので)
③ また都市機構は債権者として他の購入者の瑕疵担保に基く損害賠償請求権と競合することになるけど公的資金の回収をゴリゴリやるんでしょうか。都市機構がヒューザー倒産の引き金をひくことになったりして・・・
④ 建替を都市機構がやることで昨日指摘した問題はクリアできますね。よかった。
4について
住宅ローン対策では、返済困難な居住者を中心に返済期間の三年延長や、金利の最大1・5%引き下げなどの特例措置の適用を決定、金融機関に要請する。
「決定」といっても、政府が決定できるのは公庫融資くらいのはずなので、これは金融機関や金融庁がどう出るかですね、担保がなくなってしまうので、追加担保提供を求めるかどうか、無担保の債務者は要注意先債権になってしまい、自動的に対応が厳しくなる?という問題もあります。
また、建替え後の物件の購入資金については自力で調達する、ということになりますね。そこまで公的資金で補助するのはさすがに公平を欠くということでしょう。個人的には妥当だと思います。
その他
対象となるのは耐震強度が基準の50%未満で震度5強の地震による倒壊の恐れがあり改修での対応が困難な物件。
ここの線引きでもめそうですね。
また。この買取はそもそもマンション住民の全員同意があって始めて発動されるのでしょうか。買取り価格が土地価格だけ(後記参照)、となるとローンがかなり残る人も出ると思うので入り口で大変かもしれません。
総じて国としては民間の取引に対してかなり踏み込んだ支援策を作ったと思います。
ただ、昨日toshiさんやろじゃあさんのところでコメントさせていただいたように、国交省としては燎原の炎が広がる前に迎え火で延焼(批判や結果的に野放図な公的資金の投入)を食い止める作戦という意味合いもあるのではないかと思います。
政府が六日決定した分譲マンション住民への支援策は、住民の早期の移転を促すとともに、耐震強度の偽装を見抜けなかった行政にも責任があるとの判断からまとめられたものだ。また、異例の早さで対策が決まったのは、世論の関心が高いことも踏まえ、「住民の不安を一刻も早く取り除きたい」(与党関係者)という政治判断があった。
支援策決定に際しては、政府・与党内に、「対策が後手に回れば、さらに批判を浴びかねない」(与党筋)という危機感もあった。
ということですね(まぁ、政治的に言えば公明党の北側国土交通大臣の存在意義をかけた、という部分もあるかも)
あとは住民の自助努力や、地元自治体、支援している弁護士などの専門家の方のサポートが重要になると思います。