上海の歴史は、1840年のアヘン戦争に勝ったイギリスが南京条約に基づき香港の割譲と上海を始めとする5つの港の開港を強制し、上海に治外法権的な租界をつくったところから始まります。
なので名所旧跡というようなものはあまりなく、名物は
テレビ塔に代表される高層ビル群と、
昔の建物、ということになります。
上海は建築規制が少ないため、かなり自由な設計がされています。
特にそれぞれのビルが天辺のあたりの装飾を競っていて、(僕から見ると)意味のない曲線やぎざぎざのあるビルがやたら多いように思えます(上右の写真の右端にある「パイナップル頭」はシャングリラ・ホテルです)。
逆に設計者にとっては天国のようで、日建設計(日本最大の設計事務所)は100人規模のスタッフをかかえているそうです。
森ビルの世界一の高層ビルも資金の目途が立ったので建築を再開したようです(でも、台湾だかドバイだかにすぐ抜かれちゃうようですが)のでしばらくは建築ラッシュが続きそうです。
また、超高層ビルでも窓が開く(上部に蝶番があって下側がちょっと開く程度ですが)のも、妙な感じがします。台風はこないのでしょうか?
先端技術といえば、空港と市内を結ぶリニアモーターカー(「磁浮(マグレブ)列車」と呼びます)も名物です。
これは最高時速431kmで約40kmを約7分で結びます。
一緒に行った工学博士によれば、日本でもリニアモーターカーを走らせる技術はほぼ実用域らしいのですが、線路の切り替えや複数の列車の制御技術が一番難しいとのことです。
ところが上海のマグレブは、2つの列車がそれぞれ別の軌道を往復するしくみ(登山列車によくあるような)で、線路の切り替えや列車制御の問題を割り切っています。
そのへんを割り切ってすぐ実用化してしまうところは、「世界最高速」「世界初」への意地が感じられますね。
ただ、このような「外面」は、資金と最新の技術があればどうにかなってしまうのですが、昨日もちょっとふれたように、下水道などのインフラのような蓄積がものを言う「足腰」の部分が追いついていっていないという印象があります。
実はマグレブも、ホームの端にオーバーラン防止の輪留めどころか柵もなく、万が一止まらなければ通り向こうの高層住宅に突っ込んでしまう、という映画のようなことがおこりかねません。
でも、これを「背伸び」とばかにしちゃいけないと思います。
もともと「背伸び」は近代日本の得意技で、明治政府は欧米列強に馬鹿にされながらも目いっぱい背伸びをして、結果アジアで真っ先に近代国家として認知されるようになりました。
日中間の 領土問題 も、日本が明治時代にいち早く国際法上の手当てをしていたからこそ領有権を主張できるわけです。
中国も今はWTOへの加盟、オリンピック、万博など、目一杯背伸びをして、あとから体力をつけようということだと思います。
それによるひずみもいろんなところで出てくる(既に出ている)と思います(身長が急に伸びると関節がついていけなくなるのと似てますね)。
それらは高度成長時代に日本が経験してきた事でもあります。
「個体発生は系統発生を繰り返す」ということでしょうか。
ただ、その規模とスピードが尋常でないので、世界経済、特に日本への影響が大きいわけです。
上海で、そんなことを考えました。