一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

「みなさん、さようなら。」

2005-12-04 | キネマ
カナダ・フランス合作のモントリオールを舞台にしたフランス(語)の映画「みなさん、さようなら。」

主人公が父親の元大学講師が末期がんであることを告げられる、というところから始まるのですが、この父親が該博な知識を有しながら世間的成功に背を向けている偏屈な人物で、しかも女とみれば教え子だろうが何だろうが見境なく口説くスケベオヤジでもあります(そのおかげで妻とも15年間別居中)

こういう父親を反面教師として、息子はロンドンの投資銀行勤務の高給取りになっています。

この息子が、母親の「父の最後を楽しいものにしてほしい」という願いを受けて、長年の反目に終止符を打ち、幸せな最後を演出しようとするために奔走します。
そして父親は徐々に息子に心を開いていき、死を受け入れていくという話です。


そう書いてしまうとありきたりのストーリーなのですが、フランス映画お得意の食えない登場人物と軽妙&意味深なセリフでとても味わい深い作品に仕上がっています。


息子は嫌っていた父親のこととはいえ、一度スイッチが入るとやり手ビジネスマンの本領を発揮し、父親が頑固に公立病院から動こうとしなければ、理事長や組合に掛け合って空いているフロアを病室に改装してしまうわ、末期がんの苦痛を緩和するためにヘロイン療法があると聞くや、ヘロイン中毒の少女に売人からヘロインを入手させ父親への投与の面倒まで見させるわ、と大車輪の活躍です。

また、父親の最期にと集まった友人の面々も、昔の愛人が2名、ゲイのカップルなどとひと癖もふた癖もある連中です。

友人の湖畔の別荘で最期を迎えたいという父親の希望で友人が集合し、昔の思い出話(それも妻と愛人が一緒になって夫と別の愛人との話を語るなどというものだったりします)に花を咲かせながら、馬鹿な人生だったなぁと語り合い、そしてラストにつながるところは人生を凝縮したような笑いと涙の連続です。


がん患者や高齢者医療などでQOL(quality of life)が語られていますが、大事なのは、それまでの人生のquality、それも最近はやりの「勝ち組・負け組」という他人や世間の基準でなくではなく自分の人生を楽しめたかどうかなんだな、ということだとつくづく感じさせられる映画です。

おすすめです。

※ 2003年度アカデミー賞最優秀外国映画賞受賞作だそうです。







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