玄文社主人の書斎

玄文社主人日々の雑感もしくは読後ノート

吉田昭一さんが亡くなった

2011年04月27日 | 日記
「越後タイムス」前主幹・吉田昭一さんが亡くなった。二十日の夕食時に「斃れて救急車で運ばれた」との連絡があり、病院に駆けつけたが、「死亡確認」の後だった。
 吉田さんは昭和三十年に中村葉月の後を継いで主幹となり、平成十三年に引退するまで、四十七年もの長きにわたって「越後タイムス」を背負って来られた。生涯を「越後タイムス」に捧げられたと言ってもよい。
 それだけでなく、吉田正太郎の作品をまとめた『縹亭余技帖』、タイムス同人・小竹久爾の随想集、『評伝・柏崎市長小林治助』、柏崎商工会議所創立五十周年記念誌『柏崎産業経済の歩み』、柏高創立百周年記念誌『回顧百年』など、柏崎の出版史上に輝く多くの仕事を残された。
 引退時に自分自身の本をと、タイムス紙上の編集後記「テールランプ」を厳選した『石ぐるま』を私が編集し、出版した。『石ぐるま』を残すことができたのは、吉田さんに対する最大の孝行だったように思う。
 引退時、三冊の本を書くことを約束されたが、健康状態は悪化する一方で、それが果たされることはなかった。タイムス紙上に連載した「『黒船館』吉田正太郎」が完結されなかったことは、大いに悔やまれるところだ。
 今年二月に百周年記念事業として開催した「鬼灯」柏崎公演を「どうしても見たい」と言って電話して来られたのは、公演の半月ほど前のことだった。以前から柏崎育ちの獄中歌人・島秋人に強い関心を持っておられたのだ。
 二十七日には、福祉タクシーを手配し、二階から吉田さんを降ろして車椅子に乗せ、車椅子のまま観劇してもらうことができた。公演後、非常に喜んでおられた姿が忘れられない。久しぶりに多くの知人に会うこともできた。「越後タイムス」五代目として、先代に対する最後の孝行であった。ご冥福を祈る。

越後タイムス3月25日「週末点描」より)


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