玄文社主人の書斎

玄文社主人日々の雑感もしくは読後ノート

日米横断だじゃれ

2009年03月05日 | 日記
 あまり物見遊山は好きな方ではないが、長野県小布施町には何度も行っている。観光地として非常に優れている第一の特長は、町がコンパクトにまとまっていて、重要な施設にはほとんど歩いていける点にあると思う。北斎の天井画のある岩松院はやや遠いが、そこだって歩いていこうと思えば行ける。
 レトロなバスも走っていて便利だ。高速道路のパーキングエリアに隣接するハイウェイオアシスからバスを出すなんぞは素晴らしいアイデアだと思う。他の目的地に行く途中に、小布施にひっかかることもできるからだ。歴史遺産は葛飾北斎だけと言ってもいいが、それだけでも大したもので、何といっても町の雰囲気が良い。
 あの栗おこわは苦手だが、蕎麦も戸隠よりずっとおいしい店もあるし、ハイウェイオアシスで売っている、果物や野菜類はびっくりするほど安くて品揃えに富んでいる。本当にうらやましくなるような町だと思う。
 そんな小布施のまちづくりに、アメリカ人女性が深く関わっていた。そんなことも知らずに、十九日に開かれた柏崎商工会議所諸業部会主催の「まちづくりセミナー」のセーラ・マリ・カミングスさんの講演を聴かせてもらった。彼女の一所懸命に息をはずませるような話し方にとても共感を覚えた。話し方は決して上手ではないが、誠意がこもっていて、この人は単なる“口説の徒”ではないと思わせるものがあった。
 さらに、セーラさんの言語感覚にも驚いた。日本語と英語を横断するダジャレを飛ばすのである。彼女が関わってつくってきた施設群について、「これだけの建物を維持するのはeasyではありません」ときた。おやじギャグである。ただし、日米横断ギャグとして認めてあげたい。
 〈小布施ッション〉というのも面白い。一カ月ごとに学生ボランティアを集めて行っている会議の名前で、英語でobsession。“妄執”とか“強迫観念”とかを意味し、あまり良い言葉ではないのだが、セーラさんの小布施の町への強い“こだわり”を示したいのだろう。

越後タイムス2月27日「週末点描」より)


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