玄文社主人の書斎

玄文社主人日々の雑感もしくは読後ノート

北条出身の詩人

2007年07月08日 | 日記
 柏崎市北条出身の詩人・田川紀久雄さんという人を初めて知った。新潟の同じく詩人・鈴木良一さんの紹介である。田川さんは昭和十七年生まれだから正確に言えば、刈羽郡北条村の出身ということになる。三歳で北条村を離れ、現在は川崎で暮らしている。
 田川さんは出版社・漉林書房の代表で、自らの詩集をこれまでに二十冊出版し、“詩語り”ということをやっている。普通の朗読とは違う。三味線を弾き、自作の詩などを演劇的に“語る”のである。これまでに全国各地で詩語りのライブを行い、聴衆に圧倒的な感銘を与えてきた。
 田川さんから新詩集『見果てぬ夢』が送られてきた。そのあとがきに、自分が末期癌であとどれだけ生きられるか分からないことを告白している。『見果てぬ夢』は、死を前にした田川さんの“心の叫び”のようなものだ。
 「詩語りをもう一度行ないたい」では、「もう一度何処かで詩語りを行ないたい/その日があることを期待して/私は自分に負けないように生きていたい/お前はもうすぐ死ぬのだぞ/と言われても/はい、そうですかとは言いたくはない」と書いている。
 ふるさと柏崎での詩語りライブを実現させたいと思う。田川さんの詩集『越後』には、ずっと柏崎で生活している者には分からない、激しい望郷の思いが溢れている。ライブのDVDでは、そんな思いをより激しく表現していて、本当にぶっ倒されそうになる。
 今月二十三日には、出版記念ライブを東京六本木で行うが、案内には「田川紀久雄が急遽倒れた場合、坂井のぶこのみ」と書いてある。坂井さんは田川さんと一緒に詩語りをするパートナーである。
 坂井さんが宮沢賢治の「雨ニモマケズ」を、田川さんが同じく「永訣の朝」を同時進行で語るライブは、賢治の詩の世界のイメージを一変させ、聴衆を圧倒するという。
 田川さん、九月十六日に会場を準備して待っています。それまで斃れないで、柏崎の人たちに、あなたの迫力溢れる“詩語り”を聞かせてください。

越後タイムス7月6日「週末点描」より)