玄文社主人の書斎

玄文社主人日々の雑感もしくは読後ノート

中村つねのアトリエ

2007年04月10日 | 日記
 「中村彝アトリエ保存会」の続報をお伝えしておく。
 新宿区の区長は女性区長の中山弘子さん。「中村彝アトリエ保存会」の事務局長・今井茂子さんによると、区長は「今井さん、大丈夫ですよ」と約束してくれ、アトリエだけでなく、その敷地百五十坪も含めた保存を検討してくれるということだ。
 しかし、これで安心ということではない。区の予算も絡んでくることだから、区長の独断で決められるものではない。議会の同意も必要になってくる。保存の方法としては、築後九十年を経たアトリエだから、一旦解体して、部材を点検し、老朽化したものは取り替えるなり補強するなりして、組み立て直すという作業が必要となる。新築するよりも経費がかかることは目に見えている。
 区議会の理解がどうしても必要である。今井さんは、そのためにもできるだけ多くの賛同者を集めたいという。現在までに集まっている賛同者は、いかにも少ない。新宿中村屋が萩原守衛や中村彝を庇護した歴史も、今や忘れられつつあるし、中村彝の存在自体も現在の人々の記憶から遠くなりつつあるような危機感を覚える。
 知人に、かつて中村彝の作品を所有していた人がいる。数百万円で画商に売ってしまった後、オークションで七千万円で落とされたことを知って愕然とした体験の持ち主である。中村彝の芸術のよき理解者である彼は、「新宿にはろくに文化財なんかないのだから、彝のアトリエを貴重な文化財として残してほしい」と言う。
 新宿というのは、その名のとおり新興の宿場町であり、現在副都心として大きな発展を見せてはいても、重厚な歴史の記憶というものを欠落させている。中村彝のアトリエは彝の絵を愛する人にとってだけでなく、新宿区にとっても歴史的資産として、極めて重要なものではないだろうか。
 越後タイムス社で賛同の署名を取りまとめたいと思う。協力していただける方の連絡をお願いしたい。署名簿も用意してあります。
電話0257-23-6396
e-mail:genbun@pop07.odn.ne.jp

越後タイムス4月6日「週末点描」より)