道楽ねずみ

ドイツに関するものを中心に美術展,オペラ,映画等の趣味の世界を紹介します。

「20世紀のはじまり ピカソとクレーの生きた時代」(Bunkamuraザ・ミュージアム)

2009年02月26日 | 美術道楽
渋谷のBunkamuraに「ピカソとクレーの生きた時代」展を見に行きました。
ドイツのデユッセルドルフ(州都)にあるノルトライン・ヴェストファーレン州立美術館が改修工事のために休館するのを機会に,そのK20アートコレクションと呼ばれるコレクションが来日したのです(因みに本館のコレクションがK20で,新館のコレクションはK21と呼ばれているようです。)。

ピカソの作品では,およそピカソらしくない普通の絵画の「2人の座る裸婦像」(腕や足がとてもエネルギッシュな裸婦です。)のほか,いかにもピカソらしいキュビズムの「鏡の前の女」や「ひじかけ椅子に座る女」等の作品が来ていました。いずれもK20の重要なコレクションのようです。
クレーのコレクションにつきましては,そもそもこのコレクションがもとになってこの美術館が開設されたのだそうです。つまり、ノルトライン・ヴェストファーレン州がクレーの作品をコレクターからまとめて購入し,そのコレクションをもとに美術館が開館になったということなのだそうです。クレーはバウハウスの教職を辞めた(無断欠勤が続いて辞めさせられたのかもしれません。)後,デュッセルドルフに来て教鞭を執っていましたが,退廃芸術との烙印を押され,故郷のスイスに帰らざるを得ませんでした。そうした経緯も踏まえてNRW州政府としては,是非クレーコレクションを再びデュッセルドルフにと考えたのです。
クレーの作品は,チュニジア旅行後に描かれた「赤と白の丸屋根」や,音符のようにもみえる「リズミカルなラクダ」の絵など,見たことのあるような作品が多く,初めて見る作品であってもなじみやすい作品が多いのですが,逆にあまり強い印象に残らないようにも思います。その中で面白かったのは,1939年に鉛筆で描かれた「ベルリンのまぬけ」です。ヒトラーを揶揄したものともいわれています。そのほか筆で黒一色で荒削りに描かれた単純な構図の「助けを呼ぶ声」も,人物が鉤十字の形にされています。

ピカソとクレーの名前が代表として挙がっていますが,K20の様々なコレクションが展示してあります。
冒頭にくるマティス,ドラン,ブラックの三部作はK20でも同じ展示室にあるそうです。
フランツ・マルクは相変わらず動物の絵で,今回は猫の作品でした。
ジョージ・グロスとマックス・ベックマンは不気味な絵を描いています。特にベックマンの「夜」はK20の重要なコレクションだそうです。
ほかにもルネ・マグリット等のシュルレアリスムの作品も面白かったです。

デュッセルドルフには,以前に出張で行った際に短時間滞在しただけで,何も観光をしていません。州立美術館が再度開館した後,是非ゆっくり観光してみたいものです。相方を有名なケーニッヒス・アレーの界隈にショッピングに連れて行ってあげたいとも思います。