道楽ねずみ

ドイツに関するものを中心に美術展,オペラ,映画等の趣味の世界を紹介します。

新宿中村屋に咲いた文化芸術(新宿歴史博物館)

2011年02月28日 | 美術道楽
新宿歴史博物館で開催中の「新宿中村屋に咲いた文化芸術」を見に行きました。
中村屋の創業者夫妻は,芸術,文化に関心を持ち,明治末から大正期の文化芸術の支援者となったそうで,その元には荻原碌山,中村つねをはじめ,いろいろな文化人が集まったそうです。
荻原碌山の作品が多かったのですが,「女」,「坑夫」とともに「文覚」などが印象的でした。碌山は中村屋創業者の妻の相馬黒光にかなわぬ恋心を抱いていたそうですので,文覚上人の制作には特に思いもあったのでしょう。
中村屋サロンの人脈の関係で高村光太郎の自画像もありました。
また,会津八一の書などもありました。

そして,中村屋といえば,ラース・ビハーリー・ボースです。
中村屋の夫妻がかくまったボースは,夫妻の娘と結婚し,そのレシピが今日まで生きている印度カリーになっているのだそうです。
ここまで,芸術家を保護し,またインド独立運動を支えた夫妻の活動には頭が下がります。


すみません。更新してしばらくしてから誤りに気づきました。
中村屋のボースとチャンドラ・ボースは別人です。
失礼しました。


サロメ(東京文化会館・台東区上野公園)

2011年02月27日 | オペラ道楽
2月25日,東京文化会館でサロメを見ました。
サロメということで,期待をして前から1階前列5番目中央という,いつになく舞台に近いS席を取りましたが,結論から言いますと,サロメは脱ぎません。
もちろんそのことは知っていたのですが・・・

さてさて,今回もコンビチュニーの演出です。
100分という短時間のオペラですが,コンビチュニーらしい工夫の演出が満載でした。

舞台は第3次世界大戦後の核シェルターということです。
舞台の上には,最後の晩餐のように横に長いテーブルに腰掛けた登場人物が多数揃っています。
中心にいるのはヨカナーン。その周りをサロメ,ヘロデ,ヘロディアスといった主要人物が取り囲み,ほかにもユダヤ人のグループ等みんな登場します。
ヘロデはヘッドホンをつけて,音楽に夢中になり,目はうつろ,目の焦点も合わず,自分の世界にのみ没頭し,周囲の事象に完全に無関心です。余りにも目立たない存在でしたので,最初,誰がヘロデなのかが分からず,苦労しました。
話が進みますと,舞台の上で,醜いヘロディアス(演出です)が男をとっかえひっかえ,所と相手を構わず乱交をしたり,ヘロデが薬物注射をしたり,他の登場人物も飲んだくれていたり,暴れていたりと何でもありです。
サロメ自身も途中で殺されて,皆においしそうに食べられてしまうのに,そのまま生き返ったり,衛兵隊長ナラボート(男性)は死後には男性から代わる代わる犯されるなど,なかなかすごい演出です。上品なご婦人はこういう演出は嫌いかもしれません。

7つのヴェールの踊りです。
サロメは脱がない代わりに,登場人物をコントロールし,次々と踊らせます。そして,最後は皆が,脱出できるはずのない核シェルターの壁にドアの絵を描き,体当たりをして脱出を試みるという狂気の行動を繰り返します。そして,誰も脱出することができないまま,お互いに殺し合いに入ります。全員死亡かと思いきや,もちろんオペラはそれでは追われないので,ここで再びサロメ,ヨカナーンの組とヘロデ,ヘロディアスの組の復活です。サロメが,ヘロデに何度も要求をしてヨカナーンの首を得るところは,普通のオペラと同じです。ただ,その前にヘロディアスはここでもヨカナーンの上にまたがって,ヨカナーンと交わっていきます。ヨカナーンも恐怖におびえながらも恍惚の表情です,これも驚きですが,もっと大きな驚きは,ヨカナーンの首が切り落とされてからです。ヨカナーンの肩から上の人形は,上部につり上げられて空中に去っていきますが,ヨカナーン役の歌手は,舞台に留まり,サロメと交流が始まります。そして,2人というか,2人の精神は結ばれて,舞台の幕を閉じて,観客側に踏み出すことによって,閉塞した核シェルターを後にします。
そして,その2人に対し,観客席から「あの女を殺せ」と日本語で怒号が飛び,終演です。

核シェルターが舞台でしたり,最後に2人がそこから出て行き,新たな世界の始まりを予知させるなど,何かニーベルングの指輪のような演出でもありました。
不思議な演出で興味深いことは間違いありません。
しかし,少し盛りだくさん過ぎて,舞台の演出を目で追うと,目が回りそうです。
カニバリズムや同性愛,殺し合いの演出も興味深いですが,死んでしまったはずの登場人物がまた生き返るのはどうしても違和感がありますので,やはり演出が過剰なのではないかと思います。以前にもコンビチュニーの演出のオペラを見ましたが,「魔笛」は非常にうまくまとまっていましたが,「アイーダ」は第3幕以降の演出でそれまでの演出についていけなくなったり,「皇帝ティトゥスの慈悲」でも過剰な演出が多かったりと,前衛的な演出に敬意を払いつつも,オペラ全体にそれを貫き通すことの難しさを感じます。

ともかくも,この困難な演出に何とかついていった歌手やオケにも敬服します。

道楽ねずみのオペラ道楽は今回が最終回です。
ブログの更新を止める3月末までにもうオペラ鑑賞の予定は入っておりませんので。
長文の駄文におつきあいいただき有り難うございました。

湯島天神の梅

2011年02月26日 | 風流道楽
だいぶ前になります。2月13日に湯島天神に行って参りました。
ここも梅を見るためにいつも出かけるスポットです。

その後,いろいろと思いがけない出来事が発生し,大混乱の中で何も書けなくなっていました。
まだまだ満開というところではありませんでしたが,季節らしい景色を楽しめました。
いつものことながら人が多いのが難点です。
「東風吹かば」の道真の歌も,旅立ちを控えたフランツには人ごとではありません(別に旅立ち自体に不満があるのではないのですが,今の環境と離れることに一抹の不安と寂しさを感じます。)。









ヴェルナー・パントン

2011年02月20日 | ドイツ語
先週のDeutsche Welleのeuromaxxでヴェルナー・パントンのことが紹介されていました。
パントンは1926年デンマークに生まれ,コペンハーゲンの王立美術アカデミーで建築を専攻した後,椅子,照明などインテリアの分野で活躍しています。日本でも1昨年にはオペラシティでヴェルナー・パントン展が開催されました。
パントンは,1955年チボリチェアで有名となり,1960年代に自身の名前をつけたパントンチェアを売り出すと,一躍有名になりました。
1970年台にはパントンシリーズといわれる椅子類がレストランで導入されるようになりました。
パントンの椅子は,くびれた独特の形や円錐形の形もありますが,ほかにも動物の体内のように複雑にくびれていて,場所によっては普通に座って仕事をしたり,休んだり,横になって眠ることもできる形のものもあります。

道楽ねずみの旅立ち

2011年02月19日 | 日常の道楽
道楽ねずみことフランツは4月に旅立ちます。
旅立ちによって生活環境も一変するので,この「道楽ねずみ」のブログもいったん終了する予定です。
もっとも,またどこかで別の名前でブログを開設するかもしれませんが。

フランツは一生旅をする仕事をしておりますし,一度は職業上のキャリアや家も含め,それまでに持っていた物の大半を喪失した経験もしております。その時と比べれば,今回の旅立ちは遙かに打撃の少ないものですので,まだまだ前向きな気持ちで頑張れそうです。

もっとも,ここのところは仕事や旅立ちと無関係なことで,毎週末に最強度のストレスを受け続けており,今日も心が壊れそうな大きな出来事がありました。
今年に入ってからブログのお休みが多いのも,この毎週末のストレスによるところが大きいのです。

4月の新たな旅立ちはストレスでもありますが,今は現在抱えているこの嫌な出来事から逃避するためにも,むしろ早く旅立ちたいという思いでいっぱいになっています。

愚痴が多くてすみません。
また,抽象的な話でわかりにくくてすみません。具体的には書きにくいことばかりですので。

今は新たな旅立ちを前向きに受け止めたいという思いでいっぱいです。
(注)相方ねずみとの関係は良好で,問題ありません。

六代御前の墓(逗子市桜山)

2011年02月15日 | 日常の道楽
先日,神奈川県立近代美術館の葉山館に行ったときのこと,バスからの景色を眺めていると「六代御前の墓」というような表示を発見しました。
六代といえば,平家の嫡流重盛の子の惟盛の子です。
平家物語にも六代被斬という項があったような気がします。
頼朝に挙兵を促した文覚上人に助けられた六代が処刑された(ただし,処刑の場所については異説もあるようです。)のは,鎌倉からも遠からぬこの地だったということは初めて知りました。

清澄庭園散策(江東区清澄2・3丁目)

2011年02月14日 | 風流道楽
このところ週末も思うように自由にならず,ストレスの強い毎日でしたし,悪い天気も続きました。
久しぶりに暖かく,いい天気となった昨日は清澄庭園にまで出かけました。
といいましても,この庭園は梅はほとんどなかったようです。
今回のテーマも鳥です。
いくつか綺麗な写真が撮れました。









おまけに池からパックリと口を開けて顔を出した鯉,それから庭園で(おそらくは)唯一咲いていた梅の写真も載せておきます。






退職後は庭園めぐりや旅行をしながら過ごしたいものです。

シュルレアリズム展(国立新美術館・港区六本木7丁目)

2011年02月13日 | 美術道楽
国立新美術館で開催中のシュルレアリズム展に行きました。
パリのポンピドゥーセンターからの展示とのことです。
シュルレアリズムの展開に沿って時代ごとに分類して展示してあります。
キリコ,マン・レイ,ハンス・アルプ,ミロ,アルベルト・ジャコメッティ,マックス・エルンストなどの作品がありました。
キリコの「ギョーム・アポリネールの予兆的肖像」,ルネ・マグリットの「赤いモデル」,アルベルト・ジャコメッティの「テーブル」(ブロンズ)などが印象的でしたが,そのほかにマックス・エルンストの百頭女のシリーズの話も音声ガイドで興味深く聞きました。femme cent têtes(百頭女)は音だけだと,femme sans tête(頭のない女)と区別がつかないのです。確かに100のcentとサン・スーシーやサン・キュロットのsans(ohne, without)とは音では区別がつかない訳で,このあたりはフランツがフランス語を苦手とするゆえんであります。

作品も面白かったのですが,音声ガイドからうかがわれるシュルレアリズムの人間関係,とりわけ強烈な個性をもったと思われるブルトンの話がとても面白かったです。ブルトンはシュルレアリズムの中心的な存在でしたが,晩年まで法王と呼ばれるほどの実力者で,意に沿わない人物を次々とシュルレアリズムから「除名」したのだそうです。およそ政治的な出来事とは無縁な社会でもこういう専制君主のような人がいるというのは,どこの世界でもそうなのかとフランツにも身につまされるお話です。

ほかに,映画「アンダルシアの犬」,「黄金時代」の2作品も展示作品として上映されていますので,見ることができました(椅子がスクリーンに近すぎて,かつ,2つの作品が90度に交わる隣接したスクリーンで上演されているので,見にくかったのですが。)。

館内の仕切りなどのプレゼンテーションの仕方もとても工夫があり,楽しむことができます。ただ,パネルに書いてある文章は,お世辞にも上手とは言えない訳文(フランス語からの直訳)で,さっと読んでもとても理解しにくかったのが難です。




現代中国の美術展(日中友好会館・文京区後楽)

2011年02月12日 | 美術道楽
小石川後楽園の帰りに日中友好会館で開催中の「現代中国の美術展」に行きました。
5年に1度開催される中国の大規模公募展「第11回全国美術展」の受賞作品より選りすぐりの作品を日本にて公開ということだそうです。
以前,ここでは中国の現代アートの作品展を見ましたが,今回の作品は前衛的なものに焦点を絞ったものではないようです。
根底に中国の経済発展を強烈に意識したものも目立ちましたが,今風の若者たちの様子,世代間の意識の差などを踏まえた作品もあり,興味深く見ました。
女性の裸体と武器という似つかわしくない取り合わせの作品などが印象に残りました。



VOLCAN(新宿区細工町)

2011年02月11日 | 食道楽
コーヒーは大概の場合,牛込中央通りと小さな通りが交わる交差点(ピッツェリア・ヴォルパイアが立つ交差点)から一歩,牛込柳町に向かって歩いたところにあるVOLCANで買います。
その場でコーヒーを飲むこともできるので,カフェにもなります(ただし,店内は広くはありません。)。コーヒー豆も種類が多く,その時々に応じておいて,いつもはない豆があることもあります。よくセールをしてもらえるのも有り難いところです。
このときに買ったのはメキシコでした。

道楽ねずみの手術

2011年02月10日 | 日常の道楽
もう昨年のことになりますが,実は道楽ねずみことフランツはプチ手術を受けることになりました。
小さな手術で腫瘍を取るだけですが,それでも嫌なものです。
その準備も大変なのですが,準備の苦痛など手術がうまくいけばどうでもいいと思えるようになります。

サチュレーションとかポリペクトミーとか言葉は耳で聞いたことがありましたが,初めての経験です。
手術中にも自分の意識は残っていますので,自分の身体の内部の様子は見えますし,切除後にクリッピングをする場面まではっきりと分かりました。体内に残されたクリップはどうなるのだろうかなどと朧気に考えているうちに,あっという間の手術も終わりました。
無事で良かったのですが,近くもう一度,検査をする必要があります。そこで,クリーンコロン(腫瘍のない状態)になっていればいいのですが。

牛天神紅梅祭り(文京区春日)

2011年02月09日 | 風流道楽
2月5日の土曜日に文京区の牛天神に行きました。
春日通りから奥に入ったところにあり,飯田橋からも春日からもさほど近くない小さな神社です。
普段は参拝客も少ないと思いますが,2月5日ではちょうど大学の入試シーズンと重なっています。意外なほど混み合っていました。文京区のお散歩ツアーの人と合格祈願の人と半々か,後者の人の方がやや多い位でしょうか。
ここは牛天神という名前から分かりますように,菅原道真ゆかりの神社ですので。
心身共に疲れ果てていた9年前に相方に連れてきてもらったのが初めてですが,それから2回目の旅立ちをまもなく迎えます。








小石川後楽園の鴨(文京区後楽)

2011年02月08日 | 風流道楽
昨日,小石川後楽園の梅のことを書きましたがその続編です。
小石川後楽園は季節の花や紅葉を愛でるのにいい庭園ですが,それ以外に見逃せないのが庭園にいるカモたちです。
観光客がえさを与えると寄ってきてくれますし,カモの数も多く,人気者です。そしてカメラマンたちにも人気です。
今回,久しぶりにカモたちの写真を撮ってみました。




これらよりもさらに躍動感にあふれる写真も撮れまして満足しています。
が,しかし,これは皆Canon7D+ EF70-200mmF4L IS USMで自動で撮っただけのこと。カメラとレンズの威力,特に後者の威力を見せつけられてしまいます。
いい機材を入手したから写真がうまくなったように錯覚できるのだとよくわかりますが,他方で,それだけのことを成し遂げるレンズの実力はすごいものと思います。
道楽ねずみ,またレンズの種類を増やしたくなりました。

春を呼ぶ小石川後楽園 黄門様のお庭で梅まつり(文京区後楽)

2011年02月07日 | 風流道楽
小石川後楽園に梅を見に行きました。
初日でしたので,まだまだ咲いていない梅も多かったようですが,出店もできておりました。
なお,小石川後楽園は現在,円月橋が修復中のため,一部通ることができない部分があり,やや庭園内の雰囲気が損なわれています。

さてさて,長く通った小石川後楽園ですが,道楽ねずみの旅立ちにより,4月以降はどの程度,行くことができるのか不明です。
少なくとも,花のシーズンには必ず出かけるという訳にもいかないと思われますので,今回の梅を見るのは少し寂しい思いです。



マイセン磁器の300年展(サントリー美術館・港区赤坂9丁目)

2011年02月06日 | 美術道楽
サントリー美術館で「マイセン磁器の300年展」を見ました。
今回はマイセン国立磁器美術館の所蔵品を展示した企画展です。
ベットガーの発見,ヘロルトの絵付け,彫刻家ケンドラーの躍動的な作品等マイセン磁器の発展の歴史を辿ることができます。
ケンドラーの作品を見ますと,その躍動的な表現に本当に驚きます。木を彫ったような細やかな表現がされています。
それと,アール・デコの作品や現代の作品も展示してあったので興味深く見ました。アール・デコの時代のマックス・エーサーの「かわうそ」など日本の高村親子の彫刻作品のようです。
個人的にはやはり現代の作品が好きですが,しかしこれらの作品は一般にマイセン焼きのイメージで抱いているものとは随分と変わってしまいます。
それにしてもマイセン・トリビッシュタール駅の近くのマイセン国立磁器美術館はきちんと見学しているはずですが,このようにたくさんのコレクションがあるとは知りませんでした(あるいは以前には見落としたのかも知れませんし,また常設で何でも展示しているのではないのかも知れません。)。