道楽ねずみ

ドイツに関するものを中心に美術展,オペラ,映画等の趣味の世界を紹介します。

ファスビンダー映画祭2008その3(アテネ・フランセ・千代田区神田錦町)

2008年06月30日 | 映画道楽
今週末,再びアテネ・フランセのファスビンダー映画祭2008に行きました。
見たのは,「聖なるパン助に注意」,「キュスタース小母さんの昇天」,「デスペア」です。
あまりに長いので,今回はすべて独立した項目にします。
いずれも90分から120分で,見終わった後,とても疲れました。
ファスビンダー映画祭2008も今度の週末でようやく終わります。

「聖なるパン助に注意」(ファスビンダー映画祭2008)

2008年06月30日 | 映画道楽
「聖なるパン助に注意」というのは全く意味不明のタイトルですが,スペインの邸宅で映画撮影をするグループのドタバタを描いた映画です。

映画の中で,監督は俳優たちよりも遅れてやってきますし,資金も足りず等々の問題も生じます。しかし,最大の問題は人間関係です。とあたかもストーリーを追っているような書き方になりましたが,中身はほとんど意味不明です。複数の登場人物の組み合わせによる脈絡のない話が続きますし,監督は常にキレた状態で,ヒトラーのように俳優を怒鳴りまくり,Schwein, Sau(いずれもブタ)と罵倒します。

見ているのが苦痛の映画でした。私は,先週ストレスのかかる仕事続きでとても困憊していたこともあり,この映画の上映中は熟睡しました。せめて,この映画中映画の作品でも,オペラ中オペラの「ナクソス島のアリアドネ」のように,後半で登場人物が作ろうとしていた映画それ自体を紹介してくれれば,本映画の内容も少しは分かっただろうにと思いました。

「キュスタース小母さんの昇天」(ファスビンダー映画祭2008)

2008年06月30日 | 映画道楽
次に見たのは,「キュスタース小母さんの昇天」です。昇天などといってもいかがわしい話ではありません。
キュスタース夫人の夫が,職場の工場で上司の人事部長を殺害し,自殺したことを夫人がラジオのニュースで知ったことからストーリーが始まります。この事件を契機にマスコミがキュスタース夫人の家に取材に押しかけ,夫人の夫を暴力夫に仕立て上げるような報道がされます。キュスタース夫人の息子夫婦は報道から逃れるように旅行に出かけ,帰国後も,夫人との関係に亀裂が入り,別居します。キュスタース夫人の娘は,父親の事件をことさらに売名のネタに使おうとします。そして,キュスタース夫人といえば,夫の名誉回復を望むあまり,この事件を階級闘争の中で位置づけようと接近してきた共産主義者に取り込まれて利用されます(ただし,ここまでは小母さんの意向にそれほど反していたともいえないと思います。)。さらキュスタース夫人は,より過激な無政府主義者に利用され・・・最後には文字通りの意味で昇天していまいます。

この映画は公開後,激しく左翼勢力から非難され,ファスビンダーは左翼を攻撃する意図ではないと弁明していたと言いますが,見た印象は1970年代の西欧における左翼勢力の実情を極めて正確に表現しすぎているように思いました。しかも映画のタイトルは,ワイマール時代のプロレタリア映画のタイトルのパロディだそうです。これを見れば,左翼が攻撃されたと思ったのもある意味当然であったと思います。

「ベルリン・アレクサンダー広場」で,フランツと同じ共同住宅に住むバースト夫人を演じたブリギッテ・ミラーがキュスタース夫人を演じていますし,同じく「アレクサンダー広場」で邪悪な役割を果たすラインホルトを演じたゴットフリート・ヨーンも本映画に出演しています。

デスペア(ファスビンダー映画祭2008)

2008年06月30日 | 映画道楽
最後に見たのが,デスペアです。これはファスビンダーの映画とは思えないほど,ストーリーが明快です。
舞台は1920年代のベルリン。ロシア系移民のヘルマンは,チョコレート工場の経営者として成功を収めていますが,有体離脱の現象に悩まされるようになります。妻とベッドに入っていても,それを見ている自分に気づくというようにです。あるとき,ヘルマンは自分にそっくりの浮浪者を街で発見し,彼を自分の分身として仕立て上げることを思いつきます。そして,ヘルマンは彼を使って,あることをしようとするのですが,それにはとんでもない結末が待ちかまえていました。

「ロリータ」の作者でもあるナボコフの小説をもとにした映画だそうですが,ストーリーそれ自体は,小気味よく展開し,予想外の結末に向かいます(普通に思いつく予想外の結末は,妻リュディアの夢の中で示されますが,結末はこれと根本的に違います。)。

ところが,ファスビンダーはこの映画はそれだけではすまさず,至る所に当時の世相,つまり,ナチス台頭とホロコーストという近い未来を予期させるエピソードを潜ませています。ヒトラーのポスターや突撃隊の制服は言うに及ばず,ヘルマンが買収のために訪れた工場で,人形の形をしたチョコレートがアウシュビッツの死体の山のように並ぶ場面などは,不気味で,空恐ろしくなりました。

新宿区立林芙美子記念館(新宿区中井)

2008年06月29日 | 美術道楽
昨日6月28日は小説家林芙美子の命日なのだそうです。これを記念して新宿区生涯学習財団は,林芙美子の旧宅を特別公開しました。私も事前に申込みをし,無事に当選したので,行って参りました。
写真は書斎です。ただし,本来は納戸として作られたのだそうです。

私自身は林芙美子の作品自体を読んだことはなかったのですが,確か鹿児島を以前に旅行した時にその旧宅があったような気がしていましたが,記憶のとおり,林芙美子は九州を転々とし,尾道を経由して,上京したのだそうです。
林芙美子は,戦中は,積極的に戦地に赴き,あの南京(「あの」という意味はもちろん大虐殺事件のあったということです。)が陥落した後,直ちに訪れたりもしていたため,戦後一時期は,戦争協力者として批判されたそうです。

新宿区は夏目漱石と林芙美子を,台東区は樋口一葉をそれぞれ区を代表する文化人として紹介しているようです。それぞれ,区内に歓楽地を抱えているという事情もあるのでしょうか,文化面でのイメージアップの活動に熱心なようです。

林芙美子記念館の隣には現在分譲中のタウンハウス,○―トデコ四の坂があります。とてもおしゃれな外観で,立地の雰囲気もとてもいいです(ただ,それでも,ボランティアの解説員の方は,このタウンハウスが建つ以前は画家の家があって景観がよかったのにと2回も残念そうに言っていました。)。

右側に写っているのがタウンハウス


北澤倶楽部(新宿駅西口)

2008年06月28日 | 食道楽
新宿駅西口にある回転寿司の店,北澤倶楽部に行きました。
回転寿司とはいえ,本格的なネタが多いです。写真は岩ガキです。岩ガキといえば,隠岐等で夏に食べられるカキで珍しいものです。レモンをたっぷりかけていただきました。
この他にも,北陸名物の白海老もいただきました。
注文をすれば,回っていないネタの寿司も次々と作ってくれます。隣にいた若い女性が次々と注文をするのに刺激を受け,相方と私も次々と注文してしまいました。
やや高めのネタを注文したため,普通の回転寿司よりは高めでしたが,それでも高級店で食べるよりはかなり安い値段で食べることができました。

Panasonic DMR-BW800-K(ブルレーイディスクレコーダー)

2008年06月27日 | 買い物道楽
夏のボーナスで念願のブルレーイディスクレコーダーを買いました。ハードディスク500Gのもので2番組を同時に録画することができるタイプです。
DVDレコーダーのDMR-HS2を買ったのはもう6年も前のことです。その間,我が家の映画道楽を支えるために八面六臂の活躍をし続けた機械でしたが,ここでブルーレイディスクレコーダーに交替することになりました。
DMR-HS2ですっかりPanasonicのファンになってしましたので,今回も迷わずPanasonicの機械を選びました。最上位機種のDMR-BW900の1TBのハードディスクも魅力だったのですが,さすがに1TBまではなくてもいいかという冷静な判断もあり,コストパフォーマンスを考え,BW800にしました。
まだHDMIのコードを購入していないのですが,操作も比較的容易そうで,使い勝手は期待できそうです。

とん加(新宿区若松町)

2008年06月26日 | 食道楽
とん加は「加」の字に濁点がつきます。トンガと読みます。
ランチタイムには職場の同僚同士で,夕食時には家族でといつもにぎわっているようです。味,値段と入りやすい雰囲気が入りやすいのが魅力なのでしょう。店の人も感じがいいです。

よく食べに行きますが,名前からも明らかなようにトンカツが中心のようでして,ヒレカツがお勧めです。魚介類のフライよりやはり,ここに来たら肉ですね。ビーフシチューもおいしかったです。

逃亡する馬(ドイツのDVD)

2008年06月25日 | 映画道楽
相方は,毎日,ドイツの放送Deutsche Welleの番組をインターネットで見ています。
昔は家にアンテナを立てて,CS放送で見ていたのですが,日本での放映会社が一度つぶれた後はインターネットで見るようにしています(今は別の会社が放映しているはずだと思います。)。
その相方が,DWに応募して,「逃亡する馬(Ein fliehendes Pferd)」というDVDが送られてきました。もちろんすべてドイツ語です。
早速,DVDプレーヤーに入れましたが,もちろんリージョンが違うので再生することができません。パソコンでなら見えるかと思ったのですが,リージョン変更が必要。しかもリージョンを変更することができるのは合計で4回で,回数をオーバーすればOSを再インストールしても,もはや変更不可とのことです。
一度,リージョンをEU対応にあわせて変更し,それから日本対応に戻して変更すればそれだけで2回です。一回くらい失敗したら・・・と考えると怖くなり,リージョン変更はやめました。
いずれリージョンフリーの小型DVDプレーヤーを買うことにします。

書籍の「逃亡する馬」は日本でも翻訳がでています。


エメラルド・マウンテン・ブレンド(キャピタルコーヒー・新宿伊勢丹)

2008年06月24日 | 食道楽
キャピタルコーヒーのエメラルド・マウンテン・ブレンドを買いました。
缶コーヒーのジ○ージアに似たような名前の商品がありましたが,缶コーヒーよりは相当程度おいしい味です。私のお気に入りの煎りの深いコーヒーとは違い,豆も明るい色で苦みよりも酸味のきいた味でした。
最近は酸味のきいたコーヒーも飲むようになりました。



フィレンツェブレンド(カフェジーノ・田園調布)

2008年06月23日 | 食道楽
カフェジーノのブレンドはよく買うコーヒーです。
深い煎りと香りのよさが特徴です。ブレンドの名前には,ミラノ,ベネチア,フィレンツェ,ローマ,ナポリとイタリアの名前が付いています。まだナポリブレンドだけは味わったことがありませんが,試した範囲では皆,煎りが深く,香ばしくてお気に入りです。


ファスビンダー映画祭2008その2(アテネ・フランセ・千代田区神田駿河台)

2008年06月22日 | 映画道楽
再びファスビンダー映画祭2008に行ってきました。
今週末からは,会場はアテネ・フランセに移りました。
見たのは,「出稼ぎ野郎」,「悪の神々」,「何故R氏は発作的に人を殺したか?」です。

映画の内容は独立した項目にしました。
1日に3本の映画を見るのは大変です。

「出稼ぎ野郎」(ファスビンダー映画祭2008)

2008年06月22日 | 映画道楽
「出稼ぎ野郎」のテーマは明瞭です。ドイツ語を使わせてもらえれば,Auslaenderhass(外国人に対する敵意)です。ミュンヘンの郊外に,不思議な関係で結びついていた8名程度の男女の中に,ギリシャ人ヨルゴが入ってきたことから波紋が広がります。それまでの登場人物の世界は,およそ生気のない,ただれたような世界でしたが,ヨルゴがやって来ると,男達はヨルゴを排撃するという点では意見が一致します。「ブタ」,「共産主義者」等1930年代のドイツに見られたのと同様の非難の言葉が,ヨルゴに向けられます。彼らの外国人排撃感情は,虚実ないまぜにした噂の中で次第に増幅され,ついには暴力事件へと発展します。
これに対し,女性たちは,ヨルゴに惹かれる者,ヨルゴを収入源と見なす者等も現れ,必ずしも一枚岩ではありません。
ナチス時代のドイツを嫌がうえにも思い出さざるを得なくなるような内容で,(昔の)ドイツ人のメンタリティーの最も嫌な部分をえぐり出すような作品です。ヨルゴをファスビンダー自身が演じていることや,ファスビンダー特有のカメラの技法が発揮されているシーンがあることも見所です。

「悪の神々」(ファスビンダー映画祭2008)

2008年06月22日 | 映画道楽
「悪の神々」は主人公フランツ・ヴァルシュが刑務所から出所してからのストーリーです。フランツは探していた兄弟マリアンが殺されたことを知った後,仲間のギュンターと共にスーパーマーケットの強盗計画を立てますが,その計画は交流のあった女性を通じて事前に漏れ,射殺されることになります。登場人物の整理が難しく,見ていた時に面白いと思った割には,うまく感想を表現することができません。なお,細かいことですが,フランツはホテル代を踏み倒す場面で,偽名で「フランツ・ビーバコップ」と名乗っています。刑務所を出てからストーリーが始まるところといい,ファスビンダーは後年に映画化する「ベルリン・アレクサンダー広場」をこの時点で既に意識していたようです。

「悪の神々」の最後の場面は,ワイダの「灰とダイヤモンド」のような結末になるのかと思いました。終わり方は違いますが,ファスビンダーも「灰とダイヤモンド」も参照したのではないかと思いました。


「何故R氏は発作的に人を殺したか?」(ファスビンダー映画祭2008)

2008年06月22日 | 映画道楽
「何故R氏は発作的に人を殺したか?」は極めて不思議な映画です。
R氏とその家族の日常が,あたかもホームビデオのような単調な映像で延々と続きます。R氏がホームパーティーで周りの空気を読めず顰蹙をかってしまう場面,R氏の子供アマデウスが集中力が乏しいと保護者面談で指摘される場面,R氏の昇進が話題となる場面,R氏が私用電話が長いと怒られる場面,R氏の健康診断の場面等々,日常のありきたりの場面の映像が絶えることなくずっと続きます。
そして,最後にR氏は,家でうるさくしていた妻子を突然,燭台で殴り殺し,翌日,職場で自殺してしまいます。職場の同僚が警察に対し,R氏とプライベートのつき合いはなかったと言い切ってしまうところも興味深かったです。衝動殺人ということを改めて考えさせられる映画です(この映画は,古くて音質が悪く,字幕が極端に見にくいという難点もありました。)。