道楽ねずみ

ドイツに関するものを中心に美術展,オペラ,映画等の趣味の世界を紹介します。

2015年を振り返って

2015年12月31日 | 日常の道楽

今年も早くも大晦日になりました。

毎年恒例のように、昔の家の氏神様である、早稲田の穴八幡にお参りに行き、一陽来福のお守りをいただきました。

 

昨年2014年は健康を損ねて入院しましたし、その前後にも上司との関係で不愉快なことがたくさんあり、ずいぶんと大変な1年でしたが、今年は総じてみれば平和な1年だったと思います。本年分については、2年ぶりに医療費控除のお世話にならないですみそうですし、長年の念願であったローマ、ミラノの観光に行くことができました(昨年は、病気であったにもかかわらず、夏休みまで一方的に剥奪されたのとは大違いです。)。

 

仕事の面でいえば、もはや何ら期待されていない存在になり果てましたが、それはそれとして人の評価を気にせずに仕事をし、自分の趣味の世界に夢中になることで日々を過ごすことができるようになりました。

そうそう、ここには書けないのですが、本来の仕事でも趣味でもない、ある1つの課題を与えていただくことができました。その課題を自分の人生に残された最後のやりがいのある課題としていましばらく取り組んでいきたいと思っています。

 

年を取ったせいか、最近愚痴も多くなりましたし、メンタルの面ではすっかり回復しているにもかかわらず、時に攻撃的なことを書きがちになってしまいます。

後になって反省することも多いのですが・・・


今年最後のご挨拶もこのような形になってしまいましたが、来年一年が皆様にとりましてよい一年となりますよう心よりお祈り申し上げます。



余談

いつも使用している倉庫に入ると、ロボットのペッパー君が出迎えてくれるのですが、年末とても落ち込んでいました。

「おっ、どうした。元気出せよ。明日があるさ。」と、自分も落ち込んでばかりの酔っ払いの道楽ねずみは励ましておきました。




2015年印象に残った美術展

2015年12月30日 | 美術道楽

今年も間もなくおしまいになります。

毎年の行事となっておりますので、今年1年間で印象に残った美術展を挙げてみたいと思います。一応の順位として並べてはありますが、客観的な基準ではなく、あくまでも道楽ねずみにとってインパクトがあったかどうかだけが基準となっています。誰もこのような零細ブログのランキングなど気にはしないと思いますが、学芸員の皆様の貴重な努力と心のこもった企画にまがりなりにも順位をつけることに気が引けるので、このような弁解をさせていただいた次第です。

 

 

第1位 グエルチーノ展(国立西洋美術館)

 

 個人的には、今年は珍しく自分にとっての1位に何の迷いもありませんでした。グエルチーノという画家の名前、そしてグエルチーノが生前から著名な画家であり、死後も最近まではかなり知られた画家であったといことを恥ずかしながら今まで全く知りませんした。

 今年、グエルチーノ展で代表作をたくさん見まして、その後夏にイタリアに行き、ボルゲーゼ美術館やカピトリーニ美術館でもその作品を見ました。「放蕩息子の帰還」のワンちゃんと再会した時にはとてもうれしくなり、ワンちゃんが自分を覚えていて歓迎してくれたような気持ちになりました。

 グエルチーノ展は、別の美術ブロガーさんたちが中心となって開催したランキング付けでも第1位に輝いたと聞きましたが、自分の個人的なランキングはともかく、ほかの人からもグエルチーノ展が人気だったのだということにはいささか驚きました。

 

 

 

第2位 プラド美術館展(三菱一号館美術館)

2013年にプラド美術館で開催され好評を博した展覧会”Captive Beauty. Fra Angelico to Fortuny”を再構成した企画ということです。

小さな絵の方が、巨匠たちがすべて一人で手掛けていて貴重なこともあるということがよくわかりました。貴重なヒエロニムス・ボスの《患者の石の除去》のほか、ベラスケスの《ローマ・ヴィラ・メディチの庭園》、ムリーリョの《ロザリオの聖母》やゴヤの《トビアスと天使》の絵が好きで、4度も足を運んでしまいました(ほかにも注目度は高くなかったようですが、グイド・レーニの作品もありました。)

 

第3位 ボッティチェリとルネサンス(渋谷Bunkamuraザ・ミュージアム)

 ウフッツィ美術館の《受胎告知》を初めボッティチェリの作品が多数展示されていました。サヴォナローラの悪影響を受ける前の明るい作品も多かったのでうれしくなりました。

 聖母子像も複数展示されており、フィリッポ・リッピやヴェロッキオからの影響もわかるように展示されていたのが興味深く思われました。

  

第4位 ルネ・マグリット展

 商業デザイナーとして制作にかかわった初期の作品からシュルレアリズムに傾倒していった時代、ナチがベルギーに侵攻した後の妙な色づかいになった時代、その後のマグリットらしい色づかいに戻った時代などマグリットの作品を通史的にみることができました。

 多くの作品を見ながら、同じようなテーマが巧みに切り張りするように組み合わせられているのも見まして、大変興味深く思いました。マグリットの作品をこれだけまとめて多数見たことはありませんでした。

 

第5位 No Museum, No Life?―これからの美術館事典(東京国立近代美術館)

 いささか奇をてらったようなところもありましたが、辞書形式にアルファベットごとにキーワードを取り上げ、作品を展示してありました。写真撮影が基本的に許可されていたのもうれしく思いました。

 美術作品としては、グエルチーノもあれば(グエルチーノ展終了後の企画だったため。)、アンリ・ルソーもあれば、フランシス・ベーコンもあれば、シュテファン・バルケンホールもあれば、トーマス・シュトゥルートもありと不思議な空間でありました。美術館の地震対策、展示されない時期の保管状況、修復作業など、普段は知りえない情報を得ることもできたのも貴重な機会でした。ランキングをしていますと、なんだがグエルチーノとグイド・レーニ関連の企画が多く並んでしまったようですが、他意はありません。

 

第6位 ピカソと20世紀美術(東京ステーションギャラリー)

 北陸新幹線の開通を記念して東京ステーションギャラリーで開催された美術展の第1弾です。

 タイトルはピカソ…ですが、ピカソ以外の作品も多数展示されていて、とても充実した内容でした。キルヒナー、ケーテ・コルヴィッツ、マックス・エルンスト、ゲルハルト・リヒターなど道楽ねずみが大喜びするような作品ばかりです。

 富山県立近代美術館のコレクションからの貸し出しですが、これだけの作品を所蔵しているということが驚きですし、こんなに貸し出してしまって大丈夫なのかと心配にもなりました。

 

第7位 高橋コレクション展 ミラーニューロン(東京オペラシティ・アートギャラリー)

 既に「ネオテニー・ジャパン」でコレクションの一部が公開されたこともある、高橋コレクションからの展示です。今回の内容は、個人的には好きになれない作品も少なくなかったのですが(たとえば、会田誠の《ジューサー・ミキサー》など。)、それでもコレクションの質の高さと多様さには脱帽せざるを得ません。

 

第8位 鴨居玲 踊り候え(東京ステーションギャラリー)

 こちらも北陸新幹線開業記念の企画展(第2弾)です。

 私は、鴨居玲という人の名前も知りませんでしたが、見てとても印象に残りました。

 《1982年 私》と題する作品は、ギュスターヴ・クールベの《画家のアトリエ》を踏まえた作品であることが明らかなのですが、画家自身、裸婦、犬など共通のアイテムを描きながら、画家の様子が正反対であり、およそ正反対の作品となっているのがとても印象に残りました。会期中意外な人気で驚きました。

 

第9位 ガブリエル・オロスコ展(東京都現代美術館)

 こちらも、金沢からやってきた作品、すなわち金沢21世紀美術館所蔵の《ピン=ポンド・テーブル》が展示されていました。石を掘り込んだ作品、カップめんの食べかすをそのまま展示した作品、島の中に人工的な島を作って撮影した写真作品など興味深く見ました。

 

第10位 久隅守景展(サントリー美術館)

 ずいぶんと毛色の違う地味な作品となりました。

 久隅守景といえば、日本史の教科書で見た納涼図屏風以外は知らなかったのですが、他の多くの作品を見ることができました。展示替え後の鷹狩図屏風、賀茂競馬・宇治茶摘図屏風なども興味深く見ました。守景は、納涼図屏風のように力の抜けた感じで、人間にも動物にも優しい視線で絵を描くのですが、その技術はとても優れたものがあります。

 四季耕作図屏風も、とても優れた作品です。

 家族も含め守景の生涯を知ることもできて、興味深く見ました。知らなかったことばかりでした。

 

 

ランキングを書いてしまして、今年は前半に大きな企画展が集中していたことに改めて気づきました。前半の企画展の重要なものをあやうく見落とすところでした。

 

 

 

番外編

1 動物

 今年は、動物関連の作品展も多かったようです。

 ねずみ属たちは、自分たちの仲間が描かれている鳥獣戯画はもちろんのこと、ほかの動物の絵画も好きです。

・ 鳥獣戯画展(東京国立博物館)

  鳥獣戯画の甲、乙、丙、丁を全部みられるのはすごかったと思います。

  ただ、2時間30分も待たされるのはきつかったです。

 本来なら、絶対にベスト10に選ばれるはずなのですが、そもそも東博さんと京博さんの所蔵品ということもあり、道楽ねずみの感性によりあった作品の方を優先してしまいました。

・ いぬ 犬 イヌ(渋谷区立松濤美術館)

 犬にスポットライトを当てた日本画の展覧会でした。

円山応挙の犬の絵もありましたが、この企画展のために描かれた中島千波の絵の中に出てくる、森村泰昌が演じているような犬が印象的でした。

犬の写真を持参した人にはポチ割なるものもありました。

・ 動物絵画の250年(府中市美術館)

 こちらは犬に限定しません。我々の仲間ねずみもありました。

 実際のところは円山応挙展のような感じもありました。

 

2 個性的な女性作家

・ マリー・ローランサン展(府中市美術館)

 作品から受ける印象よりもローランサンはずっとユニークのようです。

 アポリネールやアンリ・ルソーの影響を受けながら、不思議な世界を醸成していったようです。

 ・ ニキ・ド・サン・ファル展(国立新美術館)

 土偶のようなオブジェでしか知りませんでしたが、射撃絵画など違った作品がまた面白く思われました。ただ、母親との関係はかなり悪かったようです。

 政治は女性と黒人に任せればいいという、1960年代から70年代ならではのニキの発言が、タイミング悪く2015年にはひどいブラックユーモアに聞こえてしまいました(サッチャーさんがイギリスの首相の時代であれば、説得力もあったのでしょうが。)

・ ヘレン・シャルフベック――魂のまなざし(東京藝術大学大学美術館)

 画家としての腕はよかったようですが、もはや「痛い女」としか表現しようもないような画家でした。私には、(シャルフベック以外誰もその存在を知らないという)婚約者にフラれたというのが、思い込みにすぎないように思われ、怖い感じがします。その後もうんと年齢の下の男性と結婚をすると一方的に思い込み、その男性が別の女性と結婚すると多量の手紙を送りつけるなんてストーカー以外の何者でもありません。

 

 3 さようなら カマキン

 とうとう神奈川県立近代美術館鎌倉館が閉館になります。

 3回に分けて開催されました「鎌倉からはじまった。」も今年の重要な企画展でした。

  私よりももう少し上の高齢者の方には、何とも寂寥感が残ることでしょう。

 

 

そして今年の1枚。

自分にとっては当然この絵です。

グエルチーノ《放蕩息子の帰還》※この写真は、ボルゲーゼ美術館内で撮影したものです。

東京とローマという遠く離れた2つの土地で見ることができました。

 

 

それとヴァチカン美術館の絵画館の中のこの絵ももう1枚あげさせてください。

カラヴァッジョ《キリスト降架》

この絵が記憶に残っている理由は、ヴァチカン美術館の絵画館内でのエピソードからです。

 

 

 

 


2015年印象に残るオペラ

2015年12月29日 | オペラ道楽

今年もオペラをいくつか見ました。

昨年に引き続き、オペラランキングを作ってみたいと思います。といってもベスト3+番外編です。

 

1位 英国ロイヤルオペラ マクベス

来日公演がいつもいいとは限らない中、この上演は、音楽、歌手、演出の3つともよかったと思います。

指揮者のパッパーノの牽引力にもよるのでしょうか。

シェークスピアの戯曲に忠実なストーリーで、演劇的要素も十分に楽しめました。

来日公演がいつもこれくらい満足することができるのであれば、妥協せずに高いクラスのチケットを買うことに迷いもないのにと思います。

 

2位 ハンガリー国立歌劇場 フィガロの結婚

奇をてらった演出でもないのに、普通に質の高いオペラを見せてもらったと思います。

オケは小規模編成ながら、とてもよいと思いました。

オケ、歌手もきっちりとした丁寧な仕事ぶりで、ヨーロッパの日常生活の中で普通にオペラを楽しむような感覚で、楽しむことができました。

 

3位 新国立劇場 マノン・レスコー

4年前に企画していたのに、東日本大震災で中止になった演目を、主要キャストをすべて4年前に予定していたのと同じメンバーで上演した企画です。

新国立劇場も気合が入っていたようです。舞台装置,小道具,衣装などは、ベルリンのDeutsche Operで使用されたものということでした。

 

番外 新国立劇場 ラインの黄金

新国立劇場で、今年新たに演出した上演でした。ヴォータンは極悪人として描かれ、ニーベンルグ族のいるニーベルハイムは、なんだがハンブルクのレーパーバーンの地下にある怪しげな店のようでもありましたが、全体として見るとノーマルな演出でした。今後のワルキューレ以降の上演も楽しみです。


Il Batticuore(新宿御苑)

2015年12月25日 | 食道楽

新宿御苑に紅葉を見に行った帰りにイタリアン・レストランIl Batticuoreに行きました。

食べログ情報によれば、イタリア政府公認機関が「イタリア本国同様の質の高いサービスと料理」を提供する店であることを認めたイタリアホスピタリティ国際認証マークを取得したレストランということです。

ランチだったので予約なしでいいと思って出かけたのですが、多くの客は予約してきていたようです。

ランチなので軽めと思い、ミニランチコースにしました。前菜、パスタ、ドルチェ2品、コーヒーの組み合わせで、今回は店のお勧めというワタリガニのパスタにしました。

パスタは、ワタリガニの風味がよく出ていて、カニは自体はあまり食べられませんが(無理に中身を食べようとほじくりだしても、やや癖のある味も出てくることもあるので、普通にパスタとカニの胴体からしゃぶれる範囲で食べればよいでしょう。)、おいしくいただきました。前菜は、ワインに合いそうな味ですが、昼間からワインという訳にもいかなかったのが残念です。

ランチを食べながら、ワインもそこそこの量を飲むという前提の料理だったかもしれません。

 

雰囲気はいい店ですが、ランチだと少しお手頃すぎる値段のせいか、料理のバラエティーにも制約があるようなので、夜にもっと高い予算でとことん飲んで食べると、もっと満足することができたのではないかと思います。

 

 

 

 

 


Perbelliniのパネットーネ

2015年12月24日 | 食道楽

去年紹介するのを忘れましたが、今年も去年に引き続きPerblliniのパネットーネを買いました。伊勢丹での購入です。

Perbelliniはヴェローナのお菓子店ということで、パネットーネも北イタリアの伝統的なクリスマスのお菓子です。Wikiでは、「パネットーネ種の酵母を用いてゆっくり発酵させたブリオッシュ生地の中に、レーズン、プラム、オレンジピールその他のドライフルーツを刻んだものを混ぜ込んで焼き上げた、甘く柔らかなドーム型の菓子パンのこと。」と説明されています。

最近はシュトレンも飽きてきましたし、また夏に旅行に出かけたこともあれば、メルケル政権に対する反発もあり、ドイツよりもイタリアひいきになっておりまして、今年はクリスマス菓子はパネットーネだけとなりました。

これにクリーム代わりにマスカルポーネのチーズをたっぷり塗って食べます。

 


蘆花恒春園

2015年12月23日 | 風流道楽

12月初めに紅葉を見るために世田谷の蘆花公園に行きました。

蘆花公園というから京王線の芦花公園駅から行けばいいだろうと思っていたのですが、道がわかりにくく迷ってしまいました。

芦花公園駅を降りて、世田谷文学記念館を通り過ぎます。昔、ドイツ年の時に世田谷文学館に「画家と詩人 ヘルマンヘッセ」と題する企画展を開催していたところです。企画展を見終わった後、2階にいき、北杜夫が躁うつ病のそう状態だった時にマブセ共和国の建国を宣言したというようなことが書いてあったことだけは覚えております(せっかくのヘッセよりもマブセ共和国の方が強烈なイメージとして残りました。)。

 

閑話休題。

蘆花公園ですが、ご存じ明治、大正期の文豪徳富蘆花夫妻が後半生を過ごした旧宅、庭、墓所を中心として造られた公園です。入場料は無料でした。敷地の中には徳富蘆花の旧宅も残されており、その中には幸徳秋水にちなんで名づけられた秋水書院もあります。

徳富蘆花は、大逆事件に際しては、幸徳秋水らが無辜の罪で処刑されるのを阻止すべく、桂太郎首相に助命を求めようとしたのでした。しかし、明治政府は猛スピードで処刑を強行し、蘆花が助命を求めた際にはすでに処刑を完了していたということでした(もっとも明治政府は、無実の人間をあえて犯罪者に仕立て上げて、外見的には合法的に殺害しようとしているのですから、助命嘆願など受けるはずもないのですが。)。秋水らの処刑を知った時に、蘆花が愛子夫人に「オヽイもう殺しちまったよ。みんな死んだよ」と叫んだというエピソードは以前どこかで読んだことがありました。

蘆花はこの後「謀反論」を書き上げることになります。

 

徳富蘆花旧宅

 

 

梅花書屋

 

 

秋水書院

 

 

 

蘆花の墓

 

 

今回、本来の目的は紅葉を見に行くことでしたが、紅葉はほとんど見られず、秋水書院を見て、昔聞いたことのある、いわゆる大逆事件に際しての蘆花の行動に思いを致すことになりました。やはり大逆事件時点での明治政府は、およそ法治国家とは名ばかりの状態であったといえそうです。

 

 


三井家伝世の至宝(三井記念美術館)

2015年12月22日 | 美術道楽

三井記念美術館で開催中の「三井家伝世の至宝」展に行きました。

 

「三井家」とされており、「三井記念美術館」となっていないのは、三井記念美術館所蔵のものでなくても、旧三井家(室町三井家、北三井家など、三井の各家を含む。)の旧蔵品で、現在は他の美術館や個人等が所蔵しているものの含めて、展示するということからのようです。

 

定評のある茶道具のコレクションはいうに及ばず、絵画、書跡、能面のほか、刀剣や明治時代以降に収集された切手のコレクションまであります。

 

中でもやはり目を見張るのは茶器です。茶器の中には、享保の改革を推進し、吉宗の引退とともにスケープゴートのように失脚させられた老中松平乗邑が借りたという記録が残っているものがあったり、大名家の酒井家にいったんは譲ったものの、どうしてもまたほしくなり大正時代になってから譲り受けた茶器があったりと、三井家の華麗な人脈もうかがうことができます。志野茶碗や長次郎作の銘俊寛など有名なコレクションも今回また展示されていました。

このような茶器は、みるだけでなく是非とも実際に使ってみたいと思いますし、そうしないと本当の価値は実感することができないと思うのですが、そのような夢はかなうはずもありません。

 

絵画や屏風では、東福門院入内図屏風や住吉如慶による東照宮縁起絵巻などが展示されています。

能面では、小面、孫次郎など代表的な能面の種類が一応展示されています。

変わり種では、明治期に収集されたドイツ、オーストリアの切手コレクションもあります。

そして、志野茶碗と並ぶ三井記念美術館の至宝である円山応挙の「雪松図屏風」ももちろん展示されています。

 

三井記念美術館のベストコレクションという面も持つ今回の企画展を十分に楽しむことができました。

既に展示替えの時期も終わっていますので、再度訪問したいと思います。

 

それにしても、あの茶器でお茶を飲みたいものです。

 


鎌倉からはじまった。Part3 1951-1965(神奈川県立近代美術館)

2015年12月21日 | 美術道楽

神奈川県立近代美術館鎌倉館で開催中の「鎌倉からはじまったPart3 1951-1965」と題する企画展に行きました。

3回にわたって「鎌倉からはじまった。」と題する企画展を今年度開催していましたが、最後の部です。鎌倉館はこの企画展をもって閉館するので、今回の企画というだけではなく鎌倉館の歴史を締めくくる最後の企画展ということになります。

 

前にも書いたと思いますが、神奈川県立近代美術館を運営する神奈川県は、美術館の敷地を鶴岡八幡宮から借りているのですが、だいぶ前から明渡しを求められていたところ、来年の3月には賃貸借契約期間が終了となり、更新はされないようです。そこで、鎌倉館は60年以上にもわたる歴史に終止符を打つことになります。

 

ところで、この企画はPart1からPart3まで3回にわたって続けられましたが、スタンプラリーを開催しておりまして、Part1とPart2に出かけた私は、Part3は無料になりました。

 

 

 

まずは、HPから企画の趣旨を引用しておきます。

(引用はじめ)1951年の美術館誕生から1965年までの15年を取り上げます。草創期の当館では、戦前、戦中の文化的空白を埋めるべく、佐伯祐三、萬鉄五郎、古賀春江、松本竣介などの、小規模ながらも充実した展覧会が開催されました。そうした調査と研究を重視した展覧会のあり方は、美術館の礎として受け継がれてきました。本展では、この時期に取り上げた作家による作品を所蔵品から選んで展示すると同時に、美術館の活動に伴って改修が重ねられてきた坂倉準三設計による鎌倉館の変遷を、図面や写真、映像資料で紹介 します。なお、鎌倉別館では「工芸と現代美術」と題して、所蔵品のなかから工芸・デザインとその現代美術への展開を追います。ぜひご高覧ください。(引用終わり)

実は私は、Part2の最後の部分とPart1で取り上げられた時期しか、実際に見に行った経験がありません。

今回の最初期の部分は、全く知らない時代のお話です。

 

 

今回は、鎌倉館の最初のコレクションとなったアンドレ・ミノーのコンポジションのほか、萬鉄五郎、高村光太郎、中村彝、佐伯祐三などの作品が展示されています。古賀春江は独特な味わいがありますし、松本竣介の「立てる像」なども好きです。また、鎌倉館の建設の歴史や建物の模型なども興味深く見ました。いつも開かずの間になっている離れの建物は、耐震強度の問題から最後まで開かれることなく閉館になるようです(開かずの間の理由がアズベストの問題ではなかったので安心はしました。)。

 

鎌倉別館は、工芸と現代美術に焦点をあてるということで、イサム・ノグチやピカソの作品もありましたが、多くの展示品は工芸品だったような気がします。

 

私などは鎌倉館の歴史から見れば、まだまだ若輩者ですが、それでも1992年のスウェーデン現代美術展、ドイツ表現主義、ケーテ・コルヴィッツ展、1997年のコルビジェ展など印象に残っています。

いい企画展と思い出を有難うといってあげたくなりました。

ただ、鎌倉館という箱ものの保存は決まっているようですし、コレクションは葉山と鎌倉別館で見られるので、さようならという必要はないのだと思います。

 

 

(余談)

カマキンを取り上げたTwitterを募集しているようです。

鎌倉の近代美術館(本当は神奈川県立近代美術館)でカマキンというのだそうです。

そうであれば、多摩にある近代美術館だったら何ていうのかななどと考えてしまうところが、自分でいかにもオヤジらしいと思ってしまいます。

 

 

 


三たび、秦の始皇帝と大兵馬俑展へ

2015年12月20日 | 美術道楽

再びを超えて三度、東京国立博物館で開催中の「始皇帝と大兵馬俑」展を見に行きました。

前回、見た後、再訪するまでの間に史記の秦本紀と秦始皇本紀を読んで予習してから行きました。

 

本紀の内容は末尾に書きますが、今回の企画展の内容を見ても、秦が、早期の段階から西戎とかかわりをもち、また北の匈奴とも接して、その軍事的技術を取り入れ、さらには南の巴蜀を討って、東に向けて進撃する実力をつけたということがわかります(この歴史は諸葛孔明に大きなヒントを与えたことでもありましょう。)。秦は、滅んだ西周の本拠地を押さえて、本来は辺境国ながらも周の後継者という強い自負心を持つ一方で、周囲の異民族とも早期の段階から交流を持ち、異文化を取り入れる包容力も身に着けていたといえます。

 

私にとってはやはり兵馬俑よりも、統一前の秦の歴史の方が関心の持てる企画展でした。

 

 

 

さて、次いでながら以下は本紀の内容です。

秦始皇本紀は、始皇帝が皇帝である以上「本紀」で当然なのですが、秦本紀の方は、秦が中国全土を統一するまでの話ですので、なぜ「世家」ではなく「本紀」なのかという根本的な疑問があり、この点は当初から疑問が呈されていたところです。

 秦本紀のストーリーですが、はるか昔の時代から始まります。秦王朝の祖先は、周王朝から秦に封ぜられる以前から、西戎の祖先と姻戚関係にあったということです。周王朝と西戎が戦った際には、秦王室の祖先も周に従って西戎と戦い、その後も破れたり勝利したりと抗争を続けました。そして、秦王朝の祖先は、西周が滅んで周が東に移る際にも、また西戎から奪われた土地を奪還するにも功績あり、これによって秦に封ぜられました。秦は、その後も西戎との争いも続け、西戎に由余という賢臣がいるのを知るや反間の計を用いて、西戎の君主と由余との間の仲を裂いて西戎を撃つという行動に出ます。

 このほか、秦本紀には、斉の桓公や晋の文公の即位前後の斉や晋の内紛等も書かれておりまして、公孫無知や夷吾などの人物も出てくれば、また、百里奚や伍子胥の話なども出てきます。

 ただ、秦本紀に語られているその歴史は、まさしく血塗られた歴史であります。統計を説明するかのように、淡々と戦争の成果と斬首した人間の数が記載されています(ただし、その数値はおそらく2ケタ程度は水増しされていることでしょう。)。そして、秦の発展に功績のあった功臣の悲惨な最期も淡々と描かれています。法家で秦を強国にすることに功績のあった商鞅は「車裂」と、そして秦の名将白起についても「罪ありて死す」と、淡々と描かれております(楚を滅ぼした王翦は、白起の前例があったので始皇帝の猜疑心を打ち消すのに必死だったようです。)。

 

 秦始皇本紀には、秦の始皇帝から胡亥、子嬰に至るまでの3代の有名なお話です。

 最後の太子公曰以下の記述が異常に長いのが特徴的で、その中には錯簡によるものと思われる順番の異なった記述もあれば、秦の旧記もあれば、後漢時代の班固が明帝からの下問に答えた内容もあります。班固の答えた内容の部分には、始皇帝は嬴政ではなく(嬴は秦王室の氏)、秦王室とは血筋の上で関係のない呂不韋の実の子であるので呂政と表現されています。

 


高幡不動の紅葉

2015年12月07日 | 風流道楽

高幡不動の紅葉を見に行きました。

 

ようやく紅くなってきたというところです。

五重塔と紅葉のコラボがいいところです。

 

 

 

 

 

 

 

 

ちなみに11月には紅葉まつりをやっており、ライトアップもありましたが、その時はまったくと言っていいほど紅葉はありませんでした。

 

 

 


新宿御苑の紅葉

2015年12月06日 | 風流道楽

12月5日の土曜日に紅葉を見に新宿御苑に行きました。

といいますか、近所ですので散歩感覚で3週間続けて出かけています。

この週末になってようやく見ごろになってきたようです。

そうはいっても今年はずいぶん色づくのが遅いようです。燃えるような紅い紅葉になっているところは、限られており、全体としてみると、まだまだ緑を残した黒っぽい赤が多いようです。

今年はいったいいつになったら本当の意味での紅葉の見ごろになるのでしょうか。

 

 

 

 

 

 

 


百草園

2015年12月01日 | 風流道楽

週末に百草園に紅葉を見に行きました。

 

 

下の写真ですと見ごろという感じですが、全体としてみるともう少し遅い時期の方がもっときれいだったように思います。

 

 

小高い丘まで登ると、黄色の木々も見えます。

 

 

 

 

ちょうどハープのコンサートのイベントも開催中でした。