今年もあと2日となりました。
2009年もいろいろな美術展を見ました。
まだ紹介が終わっていないものもありますが,2009年に国内で見た美術展のベスト10を作ってみました。基本は客観的な評価にしようと思いつつ,個人的な評価の高さも考慮しています。
第1位
日本の美術館名品展
なんと言ってもこれでしょう。全国からかき集めるというアイデア,見ていると本当に疲れがたまってくるほどの物量,そして集めた展示の質,やはりこれに最高の敬意を払わずにはいられません。全国の美術館を旅して歩く私にとっては,絵との再会という意味もありました。
第2位
THE ハプスブルク
第1位をこれにするかどうかで非常に悩ましかったところです。
最初はシシィの絵くらいだろうと期待していなかったのですが,ウィーンだけではなく,ブダペストからも協力を得ただけのことはあります。絵画の質,量ともに近年まれな充実ぶりでした。
第3位
ルーブル美術館展-17世紀ヨーロッパ絵画
こちらも絵画の質,量共に非常に満足がいく内容でした。
第4位
ゴーギャン展
ゴーギャンの絵を多数そろえただけではなく,その人生そのものもよくわかる内容でした。ゴーギャンの疎外感が痛感されました。
第5位
マーク・ロスコ 瞑想する絵画展
私の個人的な意見では第1位に押したい内容です。ロスコのシーグラム絵画を海外からも集めて展示するという壮大な企画に敬服です。開催場所が川村記念美術館というやや不便なところで,巡回もなかったのが残念です。この内容をもっと多くの人に見てもらいたかったです。
第6位
皇室の名宝展
さすが皇室。幅広いコレクションがあると感心しました。
第1期と第2期に分かれていましたが,第2期は第1期ほどは感激しませんでした。
第7位
レベッカ・ホルン展
今年まだブログに掲載することが間に合わなかったのが残念です。
紹介は来年にします。
もう一度見に行くと息巻くるほど,いい内容でした。特に映像作品を見に行くのが楽しみです。
第8位
ネオテニー・ジャパン展
これも個人的にはもっと上位にしたいという意見です。
これだけの現代コレクションが個人の所蔵とは思えません。素晴らしさは,一言では語れないのでブログの該当記事をお読み下さい。
全国で開催される企画展なので,まだ鳥取県米子市に行けば,来年以降も見ることができるはずです。
第9位
国立トレチャコフ美術館・忘れ得ぬロシア展
忘れ得ぬ絵は「忘れ得ぬ女(ひと)」です。モデルが娼婦という説もあるのには,驚きました。もっとも忘れ得ぬ絵はこれくらいで,あとは美しい絵ではあっても,印象に残りにくい絵でした。
それでもトレチャコフ美術館コレクションの実力を知るには十分でした。
第10位
奇想の王国-だまし絵展
昔からのヨーロッパのだまし絵(トロンプルイユ)や日本のだまし絵は別にそれほど面白いとは思いませんでしたが,ルネ・マグリット等のシュール・レアリズムの作品や現代の芸術は面白く見ました。
番外編
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国宝阿修羅展
データによる客観的評価と私の個人的評価が最も乖離した展覧会と思います。
訪問者数等の客観的なデータからすると,これが第1位になるべきかもしれませんが,正直なところ,自分としては一般公開されていないもの以外は,改めて奈良でゆっくりと見たいと思いましたし,何故ここまで人気だったのかよくわかりません。阿修羅像を360度(といっても入場者が多すぎて死角が多々ありました。)で見るのがそんなに貴重なことなのでしょうか。
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鴻池朋子「インタートラベラー神話と遊ぶ人」展
ネオテニー・ジャパン展で初めて知った芸術家ですが,引き続きオペラシティの美術館で個展をしていたので,見に行きました。ベスト10には入れませんでしたが,とてもスケールの大きな芸術家と思いました。
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No Man’s Land
最近行って来たばかりですが,フランス大使館旧館が取り壊され,プラウド○○(何という名前でしょう。)という野村不動産のマンションに変わるのを前に大使館旧館を使って公開した現代アートの作品です。消化不良に終わってしまいましたが,面白い展示でした。年明けもまだ公開されています。
・安井曾太郎展
もし,私が安井曾太郎と同じ時代に生き,かつ,まだ若く,将来のキャリアに夢が持てていたら,きっとこう思ったことでしょう。職を退くときに,安井曾太郎に肖像画を描いてもらえる人間になりたいと。
安井曾太郎が独特の手法で描く絵は,人物の人柄が伝わってくるようで,とても好きです。
番外編さらに続きます。
以下は今年の初めにドイツを旅行した際に感激した美術館です。
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アルテ・マイスター絵画館(ドレスデン)
ご存じラファエロの「システィーナのマドンナ」を初め,山ほど名画を見ました。
ここの美術館は展示スペースが相対的には大きくないせいか,つまらない展示が少しもないという印象を受けます。
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旧ナショナル・ギャラリー(ベルリン)
気に入った絵は,美術館の中心となっている展示作品よりも,さらに時代が後のキルヒナー,フランツ・マルク,カンディンスキーといった画家の作品です。
そして,最後の最後に
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シュタージ博物館(ベルリン)
今から約20年前に実質的に消滅したドイツ民主共和国という非法治国家にあった,国家保安省(シュタージ)の本部跡を,そのまま博物館にしたものです。その人権侵害の歴史を見ながら,共産主義国家とは秘密警察と不可分一体のものだということを痛感しました。