道楽ねずみ

ドイツに関するものを中心に美術展,オペラ,映画等の趣味の世界を紹介します。

オペラトーク「死の都」(新国立劇場・渋谷区本町)

2014年02月26日 | オペラ道楽
新国立劇場でまもなくコルンゴルドの「死の都」が上演されます。
それにあわせたトークショーに行って参りました。
広瀬大介先生(青山学院大学准教授、音楽評論)が最初に解説をし、次いで指揮のヤロスラフ・キズリンクさんから説明があり、最後にこの演目でカバーをつとめるお二人の歌手増田のり子さんと萩原 潤の歌を聞き、お二人からもお話を聞くという流れでした。
広瀬先生は、リヒャルト・シュトラウスのご専門のようで、シュトラウスとコルンゴルドの対比、「アラベッラ」と「死の都」の音楽的な展開の流れの共通点などをお話しされていました。
増田のり子さんは、第1幕より「マリエッタの歌」、萩原潤さんは第2幕より「ピエロの歌」を歌いました。カバー歌手は、本来の歌手が病気等で降板になった際に、すぐにでも交替することができるように常に準備しておかなければならないこと、準備も、自分の個性を殺して本来の歌手に変わっても違和感がなく、観客が見ていられるようにする準備をしなければならないのだというようなお話を聞き、非常に興味深く思いました。NHK朝ドラの「あまちゃん」の中のアイドル誰それのシャドーというような話とダブらせながら聞いていたのですが、なかなかカバー歌手も大変のようです(なお、少なくとも萩原潤さんはカバーとしてだけではなく、新国立劇場の他の演目では正規の歌手として歌っているようです。)。
オペラトークでは演出の話はなかったようです(少し心身の疲れからウトウトしましたので、自信がありません。)。

今から「死の都」楽しみです。
実は、このオペラの演目は初めてなので、もとになったローデンバックの小説「死都ブリュージュ」は読みましたし、その後、DVDを輸入して映像としても見ました。ローデンバックの小説とオペラの話は登場人物の範囲、名前も含めて随分違いますし、ストーリーも正反対の内容です(詳しくは書きませんが、オペラの方は明るい終わり方です。)。
実は買ったDVDはフィンランドの歌劇場の上演のもので、今回の新国立劇場の演出と同じものです。新国立劇場のチラシの写真を見て、どこかで見たことのある場面だなと思いましたら、既にみたDVDの舞台の写真でした。演出もすべてわかってしまっている状態で見に行くので、よくわかるといえばよく分かるのですが、意外感がない状態で見ることになります(この演出、結構こっており、初めて見ると驚く内容なので、意外感がなくなっているのはいささか残念です。)。
予習しすぎてしまったような気もします。

ロダンからはじまる彫刻の近代(神奈川県立近代美術館鎌倉別館)

2014年02月25日 | 美術道楽
神奈川県立近代美術館鎌倉館に引き続き、鎌倉別館にも行きました。

雪の残った週末のことです。




こちらは彫刻の展示でした。

オーギュスト・ロダン「花子のマスク」、エミール・アントワーヌ・ブルーデルの「帽子をかぶった自刻像」、アルベルト・ジャコメッティ「裸婦小立像」のほか、ハンス(ジャン)・アルプの作品などが展示されていました。
日本人の作品も展示されてあり、中原悌二郎「老人の頭像」、堀進二「壺を抱く女」、中村狐雁「若きカフカス人」のほか、高村光太郎の作品もありました。

同時開催で、スビネック・セカールの作品も展示されています。
スビネック・セカールは、チェコ生まれで、強制収容所にも入っていたことのある彫刻家ということです(経歴はHPから転記した下記のとおりです。)。
「仮面を付けた仮面」や「居住」など、抽象絵画を彫刻にしたような独特の作品にひかれました。
神奈川県立近代美術館鎌倉別館は小さな美術館ながら、いつも珍しいいい企画展を開催してくれるので、別の用がなくても美術館を見に行くためだけに鎌倉まで出かけようかという気にさせてくれます。



ズビネック・セカール 略歴
1923年   チェコスロヴァキア共和国(現チェコ共和国)プラハに生まれる。
1934-41年  ギムナジウムと技術専門学校で学ぶ。
1941年   ゲシュタポに逮捕され、オーストリアのマウトハウゼンの強制収容所に収監される。
1945年   強制収容所から解放される。
1947年   パリへの最初の旅行。
1950年   プラハの工芸美術学院を退学。
1952年   出版社に勤務。
1952-53年  兵役。
1953-58年 兵役から戻り、現スロヴァキアのブラスティラヴァで再び出版社に勤務。50年代にフランツ・カフカ著『流刑地にて』『変身』などを初めてチェコ語に翻訳する。
1959年   モスクワとレニングラードを旅行。プラハに戻り、60年代は彫刻の制作に没頭。
1961年   ポーランドのワルシャワとグダニスクを旅行。プラハで個展(以後93年まで、プラハ、ブルノ、ウィーン、ブラスティラヴァ、ザルツブルクなどで個展を開催)。
1964、65年 オーストリアでグムンデン陶器を学ぶ。
1966年 ヴェネツィアへ旅行。
1969年 故国を離れ、翌年からウィーンに居住(~98年)。
1972-74年 ドイツのシュトゥットガルト国立美術アカデミーで教鞭をとる。
1983年 初来日。
1998年 ウィーンにて没。

九頭竜蕎麦(新宿区神楽坂3丁目)

2014年02月23日 | 食道楽
神楽坂にある越前料理の店、九頭竜蕎麦で食事をしました。
店名に「蕎麦」とあるようにそばが売りの店のようで、昼のランチはそばを中心に食べることができるようです。しかし、夜は普通にお酒を楽しみながら食事をいただくことのできる店です。
今回、出かけたのは、越前蟹をいただき、今シーズン最後の蟹にしようと考えたからです。

いただいたメニューは皆、越前の名物のようで、お酒が美味しくなるようなメニューでした。



卵焼きが暖かくておいしいです。




珍味盛り合わせ
写真の印象よりずっと小さいです。



もう春です。天ぷらはタケノコもありました。


最後のしめは越前そばです。そばのつゆも入った大根おろしを目の前で大盛りにのせてくれて、それをいただきます。大根おろしは写真で見ると見栄えがしませんが、結構辛い大根です。そばも讃岐うどんのようにコシがあって噛みごたえがあります。



最後の最後にそばのお茶がでました。こちらも不思議な甘みとまろやかさがあり、食後に飲むとすっきります。

蕎麦だけという形でも食べて見たくなりました。


光のある場所(神奈川県立近代美術館)

2014年02月16日 | 美術道楽
ここのところ2週続けて週末は大雪です。
相方ねずみも昨日は恒例のレッスンにはでかけられず、道楽ねずみも一日中家の中に閉じこもり、気分も晴れませんでした。

そこで、今日は鎌倉まで思い切って出かけました。
まずは、神奈川県立近代美術館鎌倉館で開催中の「光のある場所」です。



企画の趣旨をHPから引用します。
(引用初め)「美術作品がひとつの視覚的世界として立ち現れるとき、これを「目に見えるようにする」のは、実在する外光と、作品の内なる空間を満たす光―─色彩と明暗によって構成されるイメージであるといえます。西洋の遠近法と陰影法による写実表現を「真に迫る」技として驚嘆をもって学び入れた高橋由一(1828-1894)、松岡壽(1862-1944)らにはじまる明治期の日本近代洋画から、黒田清輝(1866-1924)らが取り入れた外光派の柔らかな色彩、そして大正期の萬鉄五郎(1885-1927)や岸田劉生(1891-1929)が追求した鮮明な光。1930年代には、内田巌(1900-1953)が静謐なリアリズムに時代の不安な空気を、阿部合成(1910-1972)や三岸好太郎(1903-1934)が具象表現にシュールレアリスティックな感覚を帯びさせる一方で、谷中安規(1897-1946)や藤牧義夫(1911-1935)が木版画で「輝く闇」とも形容すべき幻想的な世界を描き出すなど、技法の成熟と時代の諸相を反映した、さまざまな「リアル」のかたちが展開しました。
さらに、カンヴァス上の平面全体を、光をめぐるイメージの実験場とした戦後の抽象表現主義から、空間そのものを作品とする現代美術の内藤礼(1961-)や青木野枝(1958-)まで、「光の現れ」に焦点を当てて当館のコレクション約80点を紹介し、近現代美術にみられる多様な現実感のあり方を考えます。」(引用終わり)。
とのことです。

高橋由一(「絵の島図」どこかの美術館でみた絵です。)、黒田清輝、萬鉄五郎、松本竣介、古賀春江などの作品をみました。

やはり、内藤礼、松本陽子などの現代の作品が印象に残りました。

中庭の写真です。本当はここに内藤礼の「恩寵」が飾られるはずなのですが、雪の日の翌日だったからでしょうか、まだ展示されていませんでした。



画家の目、彫刻家の手(ブリジストン美術館)

2014年02月15日 | 美術道楽
ブリジストン美術館で開催中の「画家の目、彫刻家の手」と題する展覧会に行きました。
企画の趣旨には、
(引用初め)「画家と彫刻家。画家は絵画を描き、彫刻家は彫刻を制作します。1889年、パリのジョルジュ・プティ画廊では『モネ・ロダン展』が開催され、クロード・モネの絵画とオーギュスト・ロダンの彫刻が展示されました。そしてその展覧会を見た批評家オクターヴ・ミルボーは、「彼らは絵画と彫刻というふたつの芸術を今世紀でもっとも見事に、究極的に演じてみせた」と絶賛しました。エドガー・ドガのように、絵画だけではなく、彫刻も重要な表現手段とした芸術家もいました。絵画と彫刻をあわせてご覧いただくことで、それぞれの特徴が際立ってきます。
本展では、ブリヂストン美術館の所蔵する絵画と彫刻、合計約160点をご紹介します。ロダンやブールデル、ザツキン、アーキペンコ、ブランクーシなど、当館の彫刻ギャラリーに常設されている作品にもご注目ください。」(引用終わり)
とあります。要するにブリジストン美術館のコレクション展ではあります。若い頃から何度も訪れている美術館ですので、見たことのある絵が大半であったような気もしますが、常設コレクションをまた見直すというのもいい機会です。
デュビュッフェの絵やアリスティッド=マイヨール、アルベルト・ジャコメッティの彫刻など改めて見ました。

また、今まで見たことがなかったのか意識していなかったのかは分かりませんが、新たな作品との出会いもあります。Bunkamuraで企画展を見て来たシャバンヌの作品も見ましたし、ジャクソン・ポロックの作品なども新たに発見しました。


世紀の日本画(東京都美術館)

2014年02月11日 | 美術道楽
上野の東京都美術館で開催中の「世紀の日本画」展に行って参りました。
東京国立博物館の「クリーブランド美術館展」「人間国宝展」と一緒に、3つの日本美術の展覧会に行くセット券まであったようです。

世紀の日本画ですが、日本美術院の再興から100年にあたります。 これを記念して、前史としての東京美術学校設立から、現在に至るおよそ130年の活動を振り返る展覧会ということです。
前期と後期に分かれ、展示は総取り替えということです。

前期ですが、狩野芳崖や橋本雅邦の作品から始まり、横山大観、奥村土牛など有名な日本画家の作品が目白押しです。
足立美術館所蔵の平山郁夫「祇園精舎」や横山大観「紅葉」、静岡県立美術館所蔵の中村岳陵 「婉膩水韻」、京都国立近代美術館蔵の小林古径「竹取物語」など印象に残りましたが、何故か一番気に入りましたのは、東京藝術大学所蔵の小倉遊亀「径(こみち)」でした。買い物帰りの母娘とペットの犬にしか見えないのですが、石窟寺院を歩む修行僧の姿から着想を得たのだとか。常人には理解できないようなお話ですが、この絵のワンちゃんの足取りが妙に軽くて、見ていてとてもほのぼのしました。クリアファイルを買っておけば良かったと後悔しましたので、後期に行くときに買いたいと思います。

出かけたのは雪の日の翌日でした。




関係ありませんが昔出かけた足立美術館です。日本一の庭園といわれています(アメリカの雑誌の評価)。
もう10年近く前に出かけたのですが、とても懐かしくなりました。
石庭ではなく、大自然をそのまま借景にしているところが、京都でよく見る庭園とは違います。



六代御前の墓

2014年02月08日 | 風流道楽
昨年のことですが、神奈川県立近代美術館(葉山館)に行った際に、六代御前の墓を見て来ました。

葉山の美術館は好きで、折に触れて出かけていますが、逗子駅からバスに乗りますと、必ず「六代御前前」というバス停を経由します。以前にもそこで降りたことはあったのですが、何の勘違いから石碑だけ見て帰ってしまいました。

今回は、きちんとお墓まで出かけました。
丘のようなところを登ったところにありますが、訪れた時はたまたま近所でお祭りが開かれ、屋台があったせいか、食べる場所のない子供がお墓の回りを焼きそばや焼きソーセージをもってウロウロしていました。


六代御前とは、平高清、つまり平重盛の子である平維盛の子で、 平正盛から数えて直系の六代目に当たることに因んで「六代(ろくだい)」と呼ばれていたのだそうです。
平家滅亡後にとらわれますが、頼朝に挙兵を促した文覚上人に助けられますが、頼朝死後に文覚が流罪に処されると六代も処刑されてしまうことになります。これによって平清盛の嫡流は完全に断絶することになるのですが、地元の子供はそんな歴史にも関心はないかもしれません。



クリーブランド美術館展+人間国宝展(東京国立博物館)

2014年02月03日 | 美術道楽
 ようやく心身ともに少しずつ回復してきましたので、散歩がてら上野まで出かけ、トーハクこと東京国立博物館で開催中のクリーブランド美術館展を人間国宝展に行って参りました。
不思議な展覧会です。2つの企画展の同時開催です。音声ガイドも別です。でも、平成館でそれぞれが半分のスペースを使って展示しています。別々の時期でもいい企画なのですが、各展覧会の展示物が少ないためか、2つで1つのような展示です(入場券は別々に買うことができます。)。ちょうどオペラでカヴァレリア・ルスティカーナと道化師をセットで上演したり、またバレエでカルミナ・ブラーナとレイモンダをセットで上演したりする(後者は、取り合わせが悪いので、このようなセットは新国立劇場だけでしょうか?)というようなイメージでしょうか。

クリーブランド美術館展
 海を渡った日本の作品の展示です。冒頭から宗達の工房の風神雷神図屏風が出迎えてくれます。このほか、雪村、河鍋暁斎、伝海北友松、曽我蕭白といった作品が展示されています。
曽我蕭白の「蘭亭曲水図」(蘭亭序で有名な王義之の催したといわれる曲水の宴をテーマにした作品)や雪村の「龍虎図屏風」、尾形光琳を慕ったといわれる渡辺始興の「燕子花図屏風」など印象に残りました。日本に既にない作品なので、あっあの作品という感じではありませんが、これだけのコレクションが日本に戻って来るのは貴重な機会です。それと、ルソーやモリゾ、ピカソ、モネなどの絵画まで見ることができまして、クリーブランド美術館のコレクションの幅の広さを感じることもできました。

人間国宝展
 大昔から日本に伝わった伝統の工芸品とその延長線上にある現代の人間国宝の作品のコラボレーションといってよい展示と思います。古い者では縄文式土器の「火焰型土器」も展示されていますが、平田郷陽の「抱擁」といった現代の作品もあります。現在の作品で特に良かったのは、徳田八十吉(三代)作・耀彩壺「恒河」というものです。九谷焼の作者が、失敗を契機に作り出した色彩表現が遺憾なく発揮されており、とても引き寄せられます。この作品だったら家にあったらいいなと思ってしまいます。このほか、生野祥雲齋作の竹華器「怒濤」もどのような構造になっているのか、不思議に思いながら眺めておりました。

シャバンヌ展(Bunkamuraザ・ミュージアム)

2014年02月02日 | 美術道楽
1月は本業でものすごく忙しく、メンタルも不調になり、しばらく更新することができませんでした。そもそも紹介するネタ自体もなくなっていましたし。
ようやく息を吹き返し、Bunkamuraザ・ミュージアムで開催中のシャバンヌ展に行って参りました。

Qui est Pierre Puvis de Chavannes?
私もそうなのですが、多くの日本人にとって、シャバンヌって誰というところでしょう。

まずはHPで開催概要の紹介です。
(引用始め)19世紀フランスを代表する壁画家として知られるピエール・ピュヴィス・ド・シャヴァンヌ(1824-1898)は、フランスの主要建造物の記念碑的な壁画装飾を次々と手がけ、また壁画以外の絵画においても才能を発揮し、数々の名作を残しました。
 イタリアのフレスコ画を思わせる落ち着いた色調で描かれたそれらの作品は、古来、桃源郷と謳われて来たアルカディアを彷彿とさせ、格調高い静謐な雰囲気を湛えています。また、その含意に満ちた奥深い世界は、象徴主義の先駆的作例と言われています。
古典的様式を維持しながら築き上げられたシャヴァンヌの斬新な芸術は、新しい世代の画家にも大きな影響を与えただけでなく、日本近代洋画の展開にも深く寄与しました。本展はこの巨匠を日本で初めて本格的に紹介する貴重な機会といえましょう。(引用終わり)


シャバンヌは、イタリアでジョットやピエロ・デラ・フランチェスカなどのルネサンスの壁画に深い感銘を受け、その後も多くの壁画作品を残したようです。シャヴァンヌは、色つやを消した独特の色使いで作品を残し、そのテーマはやがてギリシア・ローマ神話などの伝統的なテーマを離れ、自らの理念や感情を表現するようになり、象徴主義の画家の先駆者となり、さらにはゴーギャン、ゴッホ、スーラらにも影響を与えたということです。
なるほど、象徴主義の画家やスーラとの共通点は私にも分かりましたが、ゴーギャンやゴッホへの影響というのはあまりよく分からないような気もします。

シャバンヌの作品の中には普仏戦争の敗北の中で愛国心に訴えるようなテーマの作品もありました。熱気球を描き込んだ女性の絵は、すぐにレオン・ガンベッタ(Léon Gambetta)が熱気球で、プロイセン軍に包囲されたパリを脱出したことと関係があると分かりました。

シャバンヌの作品をいろいろ見ましたが、やはりリヨンの美術館の壁画など、実際にフランスに行って、そこで壁画を見ないとその良さは分からないのだろうなと思っていましたところ、土曜日のテレビ東京の「美の巨人」もシャバンヌの絵がテーマで、日本で忘れ去られた理由の1つに壁画は日本に持って来られないからということを挙げておりました。