道楽ねずみ

ドイツに関するものを中心に美術展,オペラ,映画等の趣味の世界を紹介します。

下鴨茶寮のお弁当

2014年03月31日 | 食道楽
新宿伊勢丹で京都の物産展を開催中でした。
今回も下鴨茶寮のお弁当を買いました。
少なめですが上品な内容です。
筍のご飯と卵焼きといったシンプルな料理のおいしさが引き立ちます。
天気が良ければ、新宿御苑などにお花見に出かけたい日曜日でしたが、あいにくの大雨で、家で食事をしました。


余談:今回はシグマの105mmマクロレンズを使用して撮影しました。マクロレンズですと画像がアップになりすぎて、撮影がかえって大変でした。

六義園しだれ桜ライトアップ(文京区本駒込6丁目)

2014年03月30日 | 風流道楽
今年もまた六義園のしだれ桜のライトアップを見ました。
いつものように日没よりも前に入園し、しばらく時間を待ってから撮影です。
日没よりも1時間以上前でしたが、それでも9庭園共通のパスポートがないと入場まで随分待たされそうでした。

いつものように撮影です。
今年は時間が早かったのと、レンズを買い換えて性能アップのため画像が明るくなりすぎています(本当はもっと暗いので、レンズを正しく使えれば、もっと暗くコントラストの強い作品になるはずです。)。








参考までに昨年のもっと夜空の闇の強い写真も掲載します。
レンズの違いがかなり出ているように思います。





死の都(新国立劇場・渋谷区本町)

2014年03月23日 | オペラ道楽
オペラ「死の都」を見て参りました。


■指揮:ヤロスラフ・キズリング
■演出:カスパー・ホルテン
■原作:ジョルジュ・ローデンバック Original by Georges Rodenbach
■台本:パウル・ショット (ユリウス・コルンゴルト/エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト)
Libretto by Paul Schott (Julius Korngold, Erich Wolfang Korngold)
■作曲:エーリヒ・ヴォルフガング・コルンゴルト Music by Erich Wolfgang Korngold

■キャスト
【パウル】トルステン・ケール
【マリエッタ/マリー】ミーガン・ミラー
【フランク/フリッツ】アントン・ケレミチェフ
【ブリギッタ】山下牧子
【ガストン/ヴィクトリン】小原啓楼
【ユリエッテ】平井香織
【アルバート伯爵】糸賀修平
【リュシエンヌ】小野美咲

あらすじ:
19世紀末のブルージュ。愛する亡き妻マリーを忘れられないパウルは、妻の遺品に囲まれた「思い出の部屋」に引きこもり、悲しみの中に生きている。パウルは自分を訪ねてきた友人フランクに、街でマリーに瓜二つの女性に出会い、家に招待したと話す。フランクと入れ替わりにその女性が訪ねてくる。彼女はマリエッタという名で、リールから来た踊り子だった。・・・
というところから話は始まります。

ローデンバックの小説「死都ブリュージュ」をベースにしつつも、登場人物の名前もストーリーも大幅に変更されています。
小説では主人公は最終的に亡き妻にそっくりの女性に入れ込み、現実の女性と亡き妻の区別もつかなくなり、周囲から嘲笑と非難を浴びながら、家に女性を招き入れて殺害してしまうのですが、オペラではそのような幻影を主人公が見ただけで、女性とは深い関わりを持たないで終わるという内容です。

オペラはハッピーエンドになっていますし、今回見た演出では2幕目は特に明るく、めまぐるしく、登場人物も盛りだくさんですし、コルンゴルドの音楽も素晴らしいオペラで、十分楽しむことができました。ただ、3幕目でパウルの下半身にマリエッタがかぶりつき、パウルが恍惚の表情を示すのがいかにも外国風の演出という気がしました。
今回のオペラはフィンランド国立歌劇場のプロダクション・レンタルです。道楽ねずみと相方ねずみは実はこのフィンランド国立歌劇場上演の「死の都」のDVDを輸入して予習していたので、演出に全く意外性なく見られてしまいました。これは、全くの個人的な失敗であります。


「死都ブリュージュ」の小説も岩波文庫の方で読んでいたのですが、やはり中身は小説の方がいいように思われます。もちろん小説の方が暗い話ですが、登場人物の心理描写、それと絡めたブリュージュの町並みが巧みに描写されて面白く読めたような気がします。

ローデンバックのこの小説が刊行される前は、ブリュージュは忘れ去られた汚い街で、小説のおかげで再びブリュージュは注目され、綺麗に整えられた観光都市となり、今日のような姿になったと聞いたことがあります。ブリュージュの人々が、ローデンバックの小説に恩義を感じつつも、ローデンバックの小説は好きではないのもよく分かるような気がしました。


ラファエル前派展(森アーツセンターギャラリー)

2014年03月21日 | 美術道楽
六本木ヒルズの森アーツセンターギャラリーで開催中のラファエル前派展に行って参りました。
一度、休日に出かけましたが、もう芋を洗うような大混雑で、まともに鑑賞できる雰囲気とはほど遠かったので、平日夜に出直しました。六本木ヒルズは、森アーツセンターギャラリーも森美術館も展望台と同じエレベーターに乗り、しかも森美術館に至っては展望台とチケットが同じなので、いつも美術に関心のない、遠隔地からの観光グループと一緒に美術鑑賞を強いられるので、とてもストレスがかかります。六本木ヒルズの美術館は是非とも夜行くことがお勧めです。

さて、本題です。
まずはHPから企画趣旨についての引用です。
(引用初め)「英国を代表する絵画の殿堂、テート美術館が所蔵する名品72点を通し、ラファエル前派を紹介する展覧会を開催します。
1848年、ロンドン。ジョン・エヴァレット・ミレイ、ダンテ・ゲイブリエル・ロセッティ、ウィリアム・ホルマン・ハントを中心とする若い作家たちは、ラファエロを規範とする保守的なアカデミズムに反旗を翻し、それ以前の初期ルネサンス美術に立ち返るべく「ラファエル前派兄弟団」を結成しました。古典的な形式や慣例にとらわれない彼らの芸術運動は、英国のアート界にスキャンダルを巻き起こしました。
本展は、グループの結成から1890年代までのラファエル前派の歩みを歴史、宗教、近代生活、風景、詩的な絵画、美、象徴主義の7つのテーマに分けて紹介します。ロンドン、ワシントン、モスクワ、と各地で話題を集めた展覧会がいよいよ東京に巡回します。どうぞご期待ください。」(引用終わり)

今回の企画展は、テート美術館の所蔵品が世界を巡回するというもののようです。

ラファエル前派というと、ラファエルに影響を受ける前の絵画に戻ろうという組織的な活動のようなイメージを持っていたのですが、実は当時の絵画に反旗を翻す若者のスローガン程度で、実は個々の画家によって作風も目指す方向もバラバラであって、活きのいい若者のグループというのが実態であったようです。

展示は、「歴史」、「宗教」、「風景」、「近代生活」、「詩的な絵画」、「美」、「象徴主義」とテーマごとに整理されていました。
特に宗教画や中世の伝説、古典的な小説(シェークスピアなど)からとったテーマが多かったような気がします。

ミレイの「オフィーリア」は夏目漱石のおかげで非常に有名でありますが、同じくミレイでも「両親の家のキリスト」はおよそ宗教がとは思えない雰囲気の作品で、とても印象的でした。

ウィリアム・モリスの「麗しのイズー」も見ました。モリスが画家として描いた絵というのを見たのは初めてであったような気がします。

このほか、何といってもダンテ・ゲイブリエル・ロセッティの作品が充実しています。同じダンテつながりで「神曲」に出てくる「ベアトリーチェの死の幻影を見るダンテ」、「ベアタ・ベアトリクス」(ロセッティの妻でアヘン中毒で死亡したエリザベス・シダルの鎮魂のための絵)、「アーサー王の墓」などとても印象的な作品が並んでいます。
そして、何よりもロセッティの「プロセルピナ」です。プロセルピナ(ローマ神話。ギリシャ神話のペルセポネー)は、冥界の神プルートーに誘拐され、冥界のザクロの種を食べてしまったため、1年のうち半分を冥府で、残り半分を地上で過ごすこととなったということで、この絵でも食べかけのザクロの実を持っています。このプロセルピナ、私には一目見るだけで見る者を釘付けにして、その絵の前で動けなくなるほどの魔力を持っているように思えます。いかにもfemme fataleというオーラが漂う絵であります。実はこのモデルは、ウィリアム・モリスの妻とジェーン・バーデンということです。ジェーンとモリス、ロセッティは簡単に言えば三角関係にあったようです(詳しくいうと、もっともっと複雑なようですが。)。つまり、モリスとロセッティの間で、揺れ動くジェーンの難しい立場のジェーンを表現しているのだそうです。描かれたプロセルピナに男を虜にする不思議な魔力を感じる訳です。

展覧会の最後にはエドワード・バーン=ジョーンズの「愛に導かれる巡礼」が展示されています。この展覧会のエピローグにふさわしい絵です。

ラファエル前派の画家達は、プロセルピナの絵に現れているように、不思議で複雑な(男女にまつわる)人間関係もあるようです。途中でこうした人間関係が図で整理されているコーナーがありました。このコーナーが一番強烈な印象として残りました。

ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団コンサート(東京オペラシティ)

2014年03月18日 | 音楽道楽
東京オペラシティで3月17日に開催されたライプツィヒ・ゲヴァントハウスのコンサートに行きました。
昨年、ライプツィヒには行きましたが、その時には真夏でコンサートが一切なく、何もコンサートを聴くことはできませんでしたので、今回は特別に楽しみにしておりました。


【出演】
指揮: リッカルド・シャイー
ピアノ: ネルソン・フレイレ
オーケストラ: ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団

【曲目】
メンデルスゾーン: 序曲「ルイ・ブラス」op.95
ベートーヴェン: ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調 op.73 「皇帝」                   (ピアノ: ネルソン・フレイレ)
ショスタコーヴィチ: 交響曲第5番 ニ短調 op.47

という内容です。
仕事帰りのバタバタした状況でしたが、どうにか間に合うことができました。
CDで少し予習してから行きましたが、生演奏の迫力はすごかったです。
特に休憩後のショスタコーヴィッチの演奏の際には、コントラバスや打楽器が更に増強されてすごい数になっており、とても迫力がありました。CDで聴いていたのよりも遙かに音量が大きいだけではなく、音の幅が大きく、振動まで伝わってきました。
とてもよいコンサートでしたが、やはりショスタコーヴィッチの音楽は、少し馴染みにくいところもありますし、演奏が一段落付くまで息を止めるように集中して聴くというのは、仕事帰りで心身とも困憊している身にはいささかこたえます。
むしろ、休憩前の「ルイ・ブラス」やベートーベン・ピアノ協奏曲の方が落ち着いて楽しむことができました(余談ですが、今回の曲目を予習するためにいくつかCDを借りましたが、事前予習でも、ショスタコーヴィッチの音楽を聴くのに疲れると、ルイ・ブラスの収録されたCD、それもルイ・ブラスではなく同じメンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」の前奏曲を聴いて気持ちを休めていました。)。

ところで、今日の日経新聞の「旬の人、時の人」を見てびっくりしました。
昨日見た指揮者のリカルト・シャイーが今度はミラノ・スカラ座の音楽総監督に就任予定とのこと。なかなかミラノ・スカラ座は不思議な宿縁で見に行くことができないでいますが、ますますのご活躍を祈念したいものです。


昨年撮影したライプツィヒ・ゲヴァントハウスの写真


世紀の日本画(後期)(東京都美術館)

2014年03月17日 | 美術道楽
東京都美術館で開催中の「世紀の日本画」(後期)に行って参りました。
この展覧会は、前期と後期では総入れ替えになるので、完全に異なる作品を見ることになります。
菱田春草の「四季山水」、前田青邨の「京名所八題」や小茂田青樹の「虫魚図巻」などは連作のうち、前期で見ることのできなかった作品を見ることになるので、前期と後期を続けて見て、連作を見終わることになります。

横山大観の「屈原」、狩野芳崖の「悲母観音」など有名な作品が目白押しです。
前期でワンちゃんの絵で大いに楽しませてくれた小倉遊亀は、うってかわった作品を展示しています。「コーちゃんの休日」と題する絵は越路吹雪の絵だそうで、赤い背景など明らかにマチス風です。

各地の美術館を転々と見て回ってきた自分には懐かしい絵との再会もありました。

今回も足立美術館からの展示がありました。小林古径の「楊貴妃」です

前田青邨の「知盛幻生」は、確か島根県立美術館の前田青邨展で見た絵です。失礼なことなのですが、この絵は見た瞬間笑ってしまいました。この絵は、壇ノ浦で入水した平知盛が亡霊となって、船に乗って逃れる義経一行を苦しめるという話を描いた絵なのですが、この絵の登場人物の顔が皆同じなのです。以前に、青邨が、石橋山の合戦に敗れた頼朝一行を描いた絵(梶原景時に見逃してもらうあの話です。)を見たことがあり、そのときにもこの頼朝の絵は、甲冑の描写にはものすごくこだわっているというのに、登場人物(頼朝主従)が皆同じ顔になってしまっているという話を聞いたことを思い出したからです。今回も、知盛とゾンビの仲間達は皆同じ顔で、やはり青邨は人物の描写にはこだわっていないようです。

それと、展示会場の後半ではっとした絵がありました。何度も何度も繰り返し見た、見覚えのある絵を見たからです。その絵とは岩橋英遠の「道産子追憶之巻」です。その昔、私は北海道にしばらくの期間出稼ぎに行っていたことがありました。出稼ぎに出ている時の休日の楽しみといえば、北海道立近代美術館で開催される展覧会を見に行くことでした(小樽のペテルブルグ美術館によく出かけたのもその頃のことでした。)。当時は北海道に大きな美術館はまだ余り多くなく、札幌の総合的な美術館(個人の作品だけを収録した小さな美術館ではない総合的な美術館)といえば、道知事公舎近くの北海道立近代美術館でした。この美術館で企画展を見た後、最後に常設展を見ることになるのですが、常設展の最後の方にあったのがこの「道産子追憶之巻」という異常に長大な絵巻でした。北海道の四季の移り変わりが30m近い長さで描かれた作品です。やはり冬の部分が長いのですが、夏の時期のトンボなどもとても印象的でした。
もう何十年も前のことでしたが、何度も見た絵との再会にとても懐かしい気持ちになりました。


お土産には、前期で見た小倉遊亀のワンちゃんの作品(「径」というタイトル)のクリアファイルを買いました。
ワンちゃんの足取りの軽さが気に入り、妙にこの作品の魅力にとりつかれています。



小石川後楽園の梅(文京区後楽)

2014年03月10日 | 風流道楽
今年は梅の開花が遅れているという話も聞きました。

2月中は忙しく、心身の調子も悪かったので、出かけにくかったのでのですが、ようやく梅を見に行くことができました。

冒頭の写真は白加賀です。

こちらは紅千鳥です。
とても強い紅の色です。




こちらは呉服枝垂という梅です。ピンク色で、濃いも薄いもみな紅梅…という感じです。




こちらもピンク色です。





梅林の中に藤田東湖の記念碑があります。




梅の花も多くは散りました。今年のシーズンはおしまいでしょう。


マウスの誕生日

2014年03月09日 | ドイツ語
3月7日はドイツのアニメのキャラクター・マウスの誕生日です。
若干遅くなりましたが、今日マウスの誕生祝いにケーキを食べました。
伊勢丹新宿本店のHenri Charpantier(アンリ・シャルパンティエ)でフルーツタルトを買いました。
ねずみさんにはもっともっと活躍してもらいたいものです。

アルトナの幽閉者(新国立劇場・渋谷区本町)

2014年03月07日 | 演劇道楽
ここのところ新国立劇場ネタです。
今度は、新国立劇場の小劇場で演劇「アルトナの幽閉者」(Les Séquestrés d'Altona)を見ました。サルトル原作の戯曲です。この戯曲は知らず、単に昔ハンブルクに住んでいた時に、しばしばハンブルク・アルトナ駅で電車に乗っており、地名の懐かしさに惹かれて見に行きました。
この劇の主人公の名はフランツ。私の昔のコード名(フランツ・ビーバコップ)と同じ名前です。

あらすじ
(引用初め)1959 年、ドイツ。喉頭癌に侵され余命 6 ヶ月と宣告された父親は、自らが営む造船業の後継者を決めるために家族会議を開く。次男で弁護士のヴェルナーとその妻ヨハンナ、長女レニが参加する中、父親はヴェルナーに会社を継がせ、更に自宅に住まわせようとするが、ヨハンナに猛反発される。一同の心に重くもしかかっているのは、長男フランツの存在であった。
彼は 13 年前にアルゼンチンへと出奔、3 年前に彼の地で死んだことになっていたが、実は第二次世界大戦中に、あることから心に深い傷を負い、以来、妹のレニの世話のもと、ずっと家の 2 階にひきこもったまま狂気の生活を送っていた。フランツを愛する父親の最後の望みは、長男との対面と、彼の世話を次男夫婦がすることであった。ヨハンナの説得により、13 年ぶりに待望の対面を果たした父親とフランツ。はたして一家の辿る運命は……。(引用終わり)

 引用したあらすじだけではわからないので、もう少し書きますと、フランツが心を病むに至った事件とは以下の2つの事件です。
フランツは戦前、ナチに協力する父親に反発し、収容所を脱走してきたポーランド人のユダヤ人牧師を自宅に匿ったものの、密告され、父親がナチの幹部に働きかけたことにより辛くも救われますが、軍人としソビエト戦線に赴くことになります。他方で、フランツの助けたユダヤ人牧師は結局ナチスに引き渡されてしまいます。
 そして、フランツは中尉となって赴いたソビエト戦線で、敵兵の疑いのある二人の農民を捕らえ、最終的には農民を解放しますが、フランツが解放した二人のパルチザンは戦後アルトナを訪れ、フランツの軍務違反につき口止め料を要求し、これもまた父親が解決することになります。


 かくして何とか家に戻ったフランツですが、復員した翌年の1947年には妹レーニを乱暴しようとしたアメリカ兵に傷害を負わせる事件を起こし、今度も父親が解決することになります。父親はフランツをアルゼンチンに行かせるという形を取って、事件をもみ消すことになります。フランツはもうアルゼンチンにはいかず、二階に閉じこもってしまい、父親はフランツの死亡証明書を偽造し、フランツは死んだことにされたまま、こうして13年もの歳月が過ぎていきます。
  ところが家族会議で、フランツの弟ヴェルナーの妻ヨハンナがフランツの存在を知ることとなり、父親の依頼を受けて2階にフランツを訪ねるようになります。そこで見たフランツとは、2階を時折訪れる妹レーニと近親相姦を重ねる一方で、戦争の罪のため虐殺されるドイツ人を、被告側証人として「蟹たち」と称する30世紀の裁判官に向かって弁護するというおかしな妄想に囚われた姿でした。他方で、ヨハンナも、フランツの妄想のなかに、かつて女優であった自分、つまり観客の賛嘆の中で自分を正当化していた自分自身との共通点を見出し、自分も幽閉されていた境遇にあったことに気付くのでした。

 最終的に、父親とフランツは13年ぶりに出かけ、残されたレーニがフランツの部屋に閉じこもることになります。明るく出かけた父親とフランツでしたが、その行先は奈落。つまり、自殺です。そして、フランツの部屋からは、フランツが残した録音機から、20世紀を弁護しようとする訳のわからないフランツの演説が流れます。


「アルトナの幽閉者」のフランス語タイトルLes séquestrés d'Altonaですが、ここで気を付けたいのは定冠詞が複数形のlesであり、séquestrésの語尾にもs(ただし、発音されないs)がついていることです。つまり、幽閉されているのはフランツだけではないのです。この登場人物が皆(ではないかもしれませんが)ほとんどが何らかの形で幽閉されているということです。

 サルトルがこの戯曲を書いたのは1959年で、アルジェリア戦争の真っ最中のようです。この中ではユダヤ人迫害の問題やドイツの戦争責任の問題も垣間見えますが、何といってもテーマは「幽閉」されたというか、自らを追い詰めて幽閉された状況に追い込んだ人々の、救いのない窒息感というようなもののように思われます。
 何せサルトル作なので、とても劇を見て、直ちに理解することができるような代物ではありません。図書館で本を借りましたので、もう少し研究してみたいと思います。

Ariadne auf Naxos(新国立劇場オペラ研修所)

2014年03月01日 | オペラ道楽
お招きにあずかり、2月28日に新国立劇場オペラ研修所の「ナクソス島のアリアドネ」を見に行きました。
リヒャルト・シュトラウス作曲、フーゴー・フォン・ホフマンスタール台本によるこのオペラは最初モリエールの「町人貴族」の劇中劇として書かれたものを改訂したものということです。

この演目は12年前にも同じく新国立劇場で見たことがありますが、今回は正規のメンバーではなく、新国立劇場オペラ研修所の14期生から16期生の出演するオペラです。
性質からして、本来のオペラを楽しむというよりも応援する気持ちで出かけたのですが、なかなか立派なオペラでありまして、とても素直に感動することができました。

ツェルビネッタ、執事長などの演目は研修生ではなく、既に活躍している歌手ですが、大半の歌手は研修生たちです。ツェルビネッタ役の歌手はとても素晴らしく、それ以外の歌手も大活躍です。テレビ・ドイツ語講座によく出演していたヨズア・バーチュさんが執事長の役で、やや過剰な発音のドイツ語と歌を披露していました。
歌手達のキャリア不足を補おうとするためもあるのでしょうか、オケも良かったです。「ナクソス島のアリアドネ」は小編成のオケで演奏されると聞いていましたが、なかなか迫力のある音楽でした。また、演出も多くの登場人物に同時並行的にいろいろな芸をさせるなど、凝っていてなかなか楽しむことができました。特に最後の場面で、再び劇中劇(オペラ中オペラ)に戻りまして、パートナーを見つけるのが、アリアドネだけではないという演出はとても面白く思えました。
オペラ研修所のオペラとは思えないほど、本格的でよいオペラを楽しむことができました。




新国立劇場のパンフレットから転載します。

(引用初め)

あらすじ
〈プロローグ・舞台裏〉(注・実質第1幕)富豪の邸宅では祝宴の準備中。主人の命により新作の悲劇オペラ「ナクソス島のアリアドネ」が上演されることになっていたが、きまぐれな主人の好みでオペラの後に陽気な歌芝居を追加せよとの司令が下り、音楽教師、作曲家や歌手たちは困惑、一方の舞踊教師と女優ツェルビネッタは大喜び。混乱の中で、主人は悲劇と喜劇を合体させて上演するように、と命ずる。
〈オペラ・ナクソス島のアリアドネ〉(注・実質第2幕)夫テーセウスに捨てられ、嘆き悲しむアリアドネ。道化師たちの慰めも効き目がない。ツェルビネッタは人生と愛について語り、彼女を慰める。そこへバッカス登場。彼を死神と信じるアリアドネは身を委ねようとするが、バッカスはアリアドネの美しさに魅せられ……

配役
【執事長】ヨズア・バールチュ(全日出演)
【音楽教師】駒田敏章(2/28・3/2)/小林啓倫(3/1)
【作曲家】今野沙知恵(2/28・3/2)/原 璃菜子(3/1)
【テノール歌手(バッカス)】伊藤達人(2/28・3/2)/菅野 敦(3/1)
【士官】菅野 敦(2/28・3/2)/伊藤達人(3/1)
【舞踊教師】日浦眞矩(全日出演)
【かつら師】小林啓倫(2/28・3/2)/駒田敏章(3/1)
【下僕】大塚博章(全日出演)
【ツェルビネッタ】天羽明惠(2/28・3/2)/清野友香莉(3/1)
【プリマドンナ(アリアドネ)】林よう子(2/28・3/2)/飯塚茉莉子(3/1)
【ハルレキン】村松恒矢(全日出演)
【スカラムッチョ】岸浪愛学(全日出演)
【トゥルファルディン】松中哲平(全日出演)
【ブリゲッラ】小堀勇介(全日出演)
劇中劇
【アリアドネ】林よう子(2/28・3/2)/飯塚茉莉子(3/1)
【バッカス】伊藤達人(2/28・3/2)/菅野 敦(3/1)
【ナヤーデ(水の精)】種谷典子(全日出演)
【ドリアーデ(木の精)】藤井麻美(全日出演)
【エコー(やまびこ)】原 璃菜子(2/28・3/2)/今野沙知恵(3/1)
【ツェルビネッタ】天羽明惠(2/28・3/2)/清野友香莉(3/1)

【ハルレキン】村松恒矢(全日出演)
【スカラムッチョ】岸浪愛学(全日出演)
【トゥルファルディン】松中哲平(全日出演)
【ブリゲッラ】小堀勇介(全日出演)
(ここで引用終わり)






以下、また道楽ねずみのどうでもよい余談です。
要するに、テセウスにクレタ島の迷宮から脱出する方法(出口を見失わない方法)を教え、これによって怪物ミノタウロスを倒すのを助けたのに、何故かテセウスにナクソス島に置き去りにされたアリアドネのその後の物語です。アリアドネが、テセウスに見捨てられた悲しみから立ち直り、悲しみを乗り越えて新たにバッカスとの愛に目覚める話が、本体といえば、本体なのですが、その上演に至るドタバタを含めて描かれます。
テセウスといえば、プルタルコスの「対比列伝」でも、ローマのロームルスと対比され、確か冒頭に出てきた人物だったような記憶です(内容はもう思い出せません。思い出そうとして出てきたのはペリクレスのことで、それもペリクレスがschwulだったとかどうでもいいことばかりです。)。

それと、改めてオペラを聞きまして、ZahlungsunfähigkeitとかDas ist Ihre Sache.とかドイツにいたときによく耳にしたドイツ語を聞きました。このオペラは純然たる謳いではなく、台詞の部分も多いので、ドイツ語の勉強にも適しているようです。