道楽ねずみ

ドイツに関するものを中心に美術展,オペラ,映画等の趣味の世界を紹介します。

戦後昭和の新宿風景(新宿歴史博物館)

2016年06月20日 | 美術道楽

既に展示が終了した展覧会です。

5月初めに新宿歴史博物館に行き、「戦後昭和の新宿風景と題する企画展を見ました。

 

文字通り昭和20年代の敗戦直後から昭和のおしまいまでの写真の展示です。

新宿駅の周りは東口、西口ともに昔の面影は残っていますし、南口は現在のような形になる前の記憶も頭の片隅に残っておりましたので、現在の姿と重ね合わせつつ楽しむことができます。

堀があった時代の飯田橋(飯田濠)、昔の神楽坂なども、意外と現在の姿と重なって見えたりもします。昔河田町にあったフジテレビが建築される前のホテル河田会館(その昔は、近くにある防衛省敷地と共に、尾張徳川家のお屋敷だったようです。)の姿などは、さすがに生まれる前のことなので知らず、興味深く見ました。

 

最後に展示してありましたのは、昭和天皇の大喪の礼のときの写真でした。この時は、既に社会人にもなっており、何だかまだ昨日のことのような感じがしました。


フランスの風景 樹をめぐる物語(東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館)

2016年06月19日 | 美術道楽

既に2か月近く前のことなのですが、西新宿の東郷青児記念 損保ジャパン日本興亜美術館に行き、フランスの風景 樹をめぐる物語と題する展覧会を見ました。

HPの企画の趣旨にもありますが、ロマン派やバルビゾン派にはじまり、印象派を経てフォーヴまで、樹木を題材にした絵画の数々が展示されています。

最初はコローやテオドール・ルソーの伝統的な風景画が中心で、その後、ピサロ、モネ、ピサロなどの絵も出てきて、シニャックの絵となります。このあたりから、面白くなりまして、最後の方ではヴァロットン、ドニ、セリュジエ、エミール・ノルデ、クリスチャン・ロールフスの絵なども展示されます。

 

あまりにも期間が経ちすぎていささか記憶も薄れているのですが、ヴァロットン、ノルデ、ロールフスの絵が特によかったという記憶です。

ノルデやロールフスの絵は、ヴッパースタールにあるようなので、いつか見に行きたいと思いました。


ファンタスティック 江戸絵画の夢と空想(府中市美術館)

2016年06月13日 | 美術道楽

だいぶ前のことになりました。

5月にブログの更新をすることができない期間に、府中市美術館で開催されていました、「ファンタスティック 江戸絵画の夢と空想」と題する企画展に行きました。

 

ファンタスティックってなんだろうと思いますが、企画展に出かけてもわかりかねました。

要するに夢、空想といった要素を含むものということであろうかと思いますが、そうであればファンタスティックという主題が正しいのかどうか疑問が残ります。

 

ともあれ、俵谷宗達(伊年印)、円山応挙、司馬江漢、歌川邦芳、歌川国貞、伊藤若冲など江戸時代を代表する作者の様々な作品が展示されていました。

歌川邦芳、国貞は、渋谷のBunkamuraで企画展を開催中の時期でしたし、伊藤若冲も東京都美術館で企画展を開催中の時期でしたので、両者の企画展には行かなかったものの、こちらで作品を見ることができました。


あわれ彼女は娼婦(新国立劇場)

2016年06月12日 | 演劇道楽

新国立劇場で上演中の「あわれ彼女は娼婦」のゲネプロにお招きに預かりました。

ジョン・フォード作の戯曲で、小田島雄志先生の訳ということです。

 

ストーリーはとても陰惨で、いささかも明るいところのない、救いようのないお話です。

 

近親相姦になる兄ジョバンニと妹アナベラを中心に、妹への複数の求婚者、求婚者の中の一人で最終的に妹の夫となる男と不倫関係にあった女性の話などさまざまな話が錯綜します。

最終的に登場人物の大半が非業の死を遂げることになります。

アナベラの夫ソランゾへの復讐に燃えるヒポリタの断末魔の呪いが、ことごとく的中し、アナベラ夫婦が破滅するのが恐ろしいようです。

 

 

非常に重い話ですし、共感を持てる登場人物は誰もいません。

ジョバンニは、神の話をしながら、自分の業の深さを弁解しているようにしか見えませんし、そもそも怒鳴っているだけです。唯一まともなのは、修道女になるフィロティスですが、普通そこで修道女になるということになるかなと疑問に思ってしまいます。

 

後味のよくないストーリですが、アナベラを演じた蒼井優は大活躍でした。


東京都現代美術館の一時閉館

2016年06月06日 | 美術道楽

東京都現代美術館は5月29日をもって一時期閉館となりました。

私にとっては、まだまだ開館したばかりの美術館のように思っていたのですが、開館から早20年も経っています。とはいえやはり20年しかたっていないのに工事なのですから、きっと余程耐震面では問題があるのではないかと思ってしまいます。

 

東京都現代美術館が開館した当時は、清澄白河の駅もなく、東西線の木場からバスに乗って出かけた記憶です。

そのころは現代アートも日本では物珍しく、ドイツから帰国して間もなかった私は、日本でも現代アートが楽しめる美術館として、通うようになりました。

マリオ・メルツといった現代の作家の作品も、東京都現代美術館で名前を覚えていったような記憶です。

 

閉館前に開催されていた企画展は、Pixar展で、若い人や子供を中心に大人気でした。

私も、一応見に行き、同じねずみ仲間の「レミーのおいしいレストラン」のレミー関連の展示を中心に見ました。

 

それと「キセイノセイキ」という企画展も同時に開催していました。

HPの企画の趣旨には、「今の社会を見渡すと、インターネットを通して誰もが自由に声を発することができる一方で、大勢の価値観と異なる意見に対しては不寛容さが増しているように思われます。表現の現場においても、このひずみが生み出す摩擦はしばしば見受けられます。そうした中で、既存の価値観や社会規範を揺るがし問題提起を試みるアーティストの表現行為は今、社会や人々に対してどのような力を持ちえるでしょうか。」といった問題提起がされており、こうした問題意識が企画展のテーマになっていました。

展示物のタイトルと解説はあるが、展示物の全くない空間という作品もあれば、ウォーホルのマリリンモンローの作品に手を加えた作品もありました。

キセイノセイキに展示されていた橋本聡の作品

 

しかし何と言っても今回、東京都現代美術館を訪れたのは、常設展のコレクションの展示を見るためです。アンディー・ウォーホル、ロバート・ラウシェンベルク、ロイ・リキテンシュタイン、ウィレム・デクーニングなど現代美術館自慢のコレクションが展示されていました。

 

東京都現代美術館は2018年に耐震工事を終える予定とのことですが、また常設展のコレクションを展示してくれることを望むばかりです。改修後は、アニメやオタク文化の殿堂になってしまうという噂が流れたこともあるようですが、そのようなことにならないよう願ってやみません。

 


神代植物公園 春のバラフェスタ

2016年06月05日 | 風流道楽

すっかりブログを更新する習慣がなくなってしまっていますが、5月には神代植物公園の春のバラフェスタにも行きました。

 

 

春と秋の年2回のバラフェスタは恒例ですが、今年も混んでいました。

さまざまなバラが少しずつ満開の時期を変えて咲くので、いつ行ってもそれなりに楽しむことができます。

 

変わった色のバラもありました。

ブルームーン

 


LOHENGRIN(新国立劇場)

2016年06月04日 | オペラ道楽

1週間近く経ってしまいましたが、5月27日に新国立劇場のオペラLOHENGRINを見ました。

このオペラは2012年に上演したものの再演です。

実は2012年にも単身赴任先から帰ってこのオペラは見ていましたので、今回2回目の鑑賞となります。

 

何と言ってもLOHENGRIN役のクラウス・フロリアン・フォークトの歌にものすごい感銘力があります。新国立のHPには、「神々しい美声、そして端正な容姿」とありますが、本当に神の使いとしてエルザ・フォン・ブラバンドを救出するために現れた聖杯の騎士の神々しい声を聴いているような気がします。フォークトは、Staats Oper unter den Lindenでは「ニュルンベルクのマイスタージンガー」ではヴァルター役で出ているそうですが、このような世界で活躍する歌手が、来日公演ではなく、新国立劇場の通常の上演の演目に出演してもらえることは大変あり難いことです。フォークトの歌声を聴くだけでも、来た甲斐がありました。オルトルート役の歌手も、歌もうまければ憎々しい演技もうまく、邪悪な企みでフォークト=聖杯の騎士の行いを妨げようとする役を上手に演じていました。この2人と比べてしまうと他の歌手は、特別に来日した歌手も含め、いささか見劣りしてしまうことは否定することができず、エルザ(無表情なのは、演出ではなく、演技の余裕がなかったからのように見受けられました)とテルラムントはついていくのが大変だったのではないかと思われました。

 

演出は、シンプルといえばシンプルです。ローエングリンは白鳥にひかれるのではなく、白鳥をデザインしたゴンドラからスーパー歌舞伎のように天井から姿を現します。エルザは、天然系という演出なのでしょうか、第1幕では背中にフードのような不思議なものをつけています(これがブラバンド公国の公女であるエルザの負っている重みの象徴でしょうか。)。第2幕では、LEDライト付きの板の上にのって登場し、その上には“はかなさ”の象徴である傘のようなものがあります。そして、オルトルートから疑念を植え付けられた後に登場する時には、“フープドレス”というらしいのですが、頭上に渦巻きのように巻きついたものがついています。これは、オルトルートの埋め込んだ“疑念”の象徴でしょうか。

第3幕の第2場では、ローエングリンもエルザも黒を基調にした重苦しい衣装に着替えて登場です。

 

演出もシンプルながら楽しめましたし、なんといっても美術・衣装は、あの光の魔術師として有名なロザリエですので、光をうまく使用した舞台セットになっていました。

この上演を最初に見た2012年時点では知らなかったのですが、ロザリエといえば、2013年にライプツィヒに行った際に、造形美術館で、企画展”WELTENSCHÖPFER RICHARD WAGNER, MAX KLINGER, KARL MAY MIT RÄUMEN VON ROSALIE” 「世界の創造者―リヒャルト・ワーグナー,マックス・クリンガー,カール・マイ―ロザリエによる空間とともに―」を見ていますが、あのロザリエです。スクリーンに映し出すワッフルのような格子、LEDライトなど、さすが本業は光を用いた現代アーティストだけありました。

 

大変満足のいくオペラでありましたが、やはりオケのほんの一部、否、管楽器の一部というか、おそらくお一人、今回もまた若干問題があったように思います。フォークトのような歌手の出る演目で、しかも前奏曲の段階から??という演奏は避けてもらいたいような気がします(ちなみにパルジファルの上演の時も同じパターンだったような気がします。)。これでは、オケ全体が悪いといわれかねませんので。

 

スタッフ

【指揮】 飯守泰次郎

【演出】 マティアス・フォン・シュテークマン

【美術・光メディア造形・衣裳】 ロザリエ

【照明】 グイド・ペツォルト

【舞台監督】 大澤 裕

 

キャスト

【ハインリヒ国王】 アンドレアス・バウアー

【ローエングリン】 クラウス・フロリアン・フォークト

【エルザ・フォン・ブラバント】 マヌエラ・ウール

【フリードリヒ・フォン・テルラムント】 ユルゲン・リン

【オルトルート】 ペトラ・ラング

【王の伝令】 萩原 潤

【ブラバントの貴族Ⅰ】 望月哲也

【ブラバントの貴族Ⅱ】 秋谷直之

【ブラバントの貴族Ⅲ】 小森輝彦

【ブラバントの貴族Ⅳ】 妻屋秀和

【合唱指揮】 三澤洋史

【合唱】 新国立劇場合唱団

【管弦楽】 東京フィルハーモニー交響楽団

【協力】 日本ワーグナー協会

【芸術監督】 飯守泰次郎

 

あらすじ

【第1幕】東方からの侵略に備えた兵力要請のためドイツ国王ハインリヒがブラバント公国にやってくると、公国に不和が広がっていた。その訳を国王が尋ねると、ブラバント公の跡取りゴットフリート王子を姉のエルザが殺した、とテルラムント伯が告発する。エルザは無実を訴え、夢に見た騎士が現れて自分を救ってくれるはずだと語る。神明裁判でエルザの代わりに戦う騎士を募ると、白鳥の引く小舟にのった騎士がやってくる。エルザのために遣わされたという美しい騎士は、勝利したら彼女の夫となり国を治めるが、ひとつ約束を守ってほしい、と言う。それは、決して名前や素性を尋ねないこと。エルザは約束を守ると誓う。騎士とテルラムントが戦い、騎士が勝利する。

【第2幕】追放されたテルラムントと彼の妻である魔女オルトルートは、騎士は素性を問われると力を失うと見抜き、復讐に燃える。オルトルートはエルザに、素性を明かさない騎士は突然姿を消すのではないか、と吹き込む。夜が明け、婚礼のため大聖堂へ向かうエルザに、オルトルートは、裁判で騎士が勝ったのは魔法を使ったからだと叫ぶ。騎士はテルラムントに素性を問われるが、エルザ以外に答える必要はないとあしらう。エルザの心は激しく揺れている。

【第3幕】結婚式後、初めて2人だけの甘い時を迎えているが、エルザは愛する人を名前で呼べない辛さを訴え、とうとう騎士に名前を尋ねてしまう。騎士は国王の前で素性を語り出す。彼は、パルジファルの息子で聖杯の騎士、名はローエングリン。素性を知られたからには去らねばならないという。白鳥の引く小舟にローエングリンが乗り、白鳥の首の鎖をはずすと、ゴットフリート王子が現れる。王子は殺されたのではなく、オルトルートの魔法で白鳥にされていたのだ。ローエングリンが去った後、残されたエルザは悲しみのあまり、くずれおちる。