道楽ねずみ

ドイツに関するものを中心に美術展,オペラ,映画等の趣味の世界を紹介します。

グエルチーノ展

2015年04月30日 | 美術道楽

国立西洋美術館で開催中のグエルチーノ展を再訪しました。

 

別に感想が前回と変わるというものでもないのですが、グエルチーノの最盛期、つまり、ボローニャでグエルチーノを重用したアレッサンドロ・ルドヴィージが教皇グレゴリウス15世になり、教皇とその甥ルドヴィコ・ルドヴィージ枢機卿に呼び寄せられて、ローマで活躍しチェントに帰ったころまでの作品は素晴らしく思われました(反面、ボローニャに行ってグイド・レーニの作品に作風をあわせた以降の作品は良いとは思えませんでした。)。

何といっても「放蕩息子の帰還」のワンちゃんがとてもお気に入りです。

 

 

さて、常設展に行きまして、そこにフェルメール作品があると知り、びっくりです。

17世紀にイタリアで活躍したフェリーチェ・フィレケッリの描いた「聖プラクセディス」をフェルメールが模写したのではないかと言われているそうですが、議論も分かれているそうです。

フェルメール作品が日本にとなれば、すごいことですが、何とも真偽のほどはわかりません。議論の帰趨を慎重に見極める必要があるでしょう。

とはいえ、フェルーメール作品といっても、《真珠の耳飾りの少女》のような緻密な絵もあれば、ドレスデンで見た《取り持ち女》のような荒削りの作品もあるのですから、仮にフェルメールの真筆だったからといって、それで大騒ぎをするほどのものではないかもしれません。

 

追記:その後、家に帰ってその日の日経新聞にも「フェルーメールに帰属」の絵の記事が載っていることに気づきました。この絵は日経新聞の記事のお陰で有名な絵のようです。なるほど、当日、多くの人が美術館員にこの絵の展示期間を確認していたわけです。

 


根津神社のツツジ

2015年04月29日 | 風流道楽
今年も根津神社のツツジを見に行きました。
今年もいささか訪れるのが遅かったようですが,それでも遅咲きのツツジを楽しむことができました。
もうかれこれ15年くらい前からこの時期に訪れております。

昨年は上司の仕打ちに耐えかね、ついにダウンして入院した時期でしたが、あれから一年といえば月日の経つのも早いような気もします。














とっても可愛いワンちゃんたちがいました。





ベスト・オブ・ザ・ベスト(ブリジストン美術館)

2015年04月28日 | 美術道楽
前にも書きましたが、ブリジストン美術館で開催された土曜講座に参加しました。
ブリジストン美術館までわざわざ出かけるのですから、その機会を利用し、土曜講座開催前に「ベスト・オブ・ザ・ベスト」の展示を見てきました。

最初に入館前にびっくりです。
えっ 常設展なのに行列!
前売券を事前に入手することができなかったことが悔やまれます。

もっとも入館制限をしているのではなく、入場券の購入を全て窓口でしなければならないことからくる渋滞のようで、15分並んで無事に入場することができました。

それにしても日本画でもないのに高齢者の割合の高いこと。50過ぎで既にジイさんの域に達しつつある自分が、ここでは若者です。学生の時に参加していた、退官直前の大学の先生のゼミのOBOG会みたいです。きっと、皆さん若い頃には、美術館といえば、ブリジストン美術館、国立西洋美術館、大原美術館くらいしかなく、足繁く通ったのでしょう。青春の思いでも詰まっているのでしょうかなどと想像を膨らませておりました。

閑話休題。
肝心の展示です。私も、ここに通って早30年ですが、見慣れた絵画を沢山みました。
世界に2点しかないという貴重なマネの自画像。モネの《アルジャントュイユの洪水》、同《黄昏、ヴェネツィア》、ルノワール《すわるジョルジェット・シャルパンティエ嬢》、セザンヌ《サント・ヴィクトワール山とシャト・ノワール》、ピカソ《サルタンパンク》など、いつ見たのか、常にあったのかは覚えていなくてももう馴染みの作品です。

このほか日比谷文化図書館の講演の際に貝塚さんがお勧めしておられた、青木繁《海の幸》も見ました。石橋美術館からの貸し出しということです。
やはり小さな作品です。同様に藤島武二の《黒扇》も来ていました。


しかし、私が好きなのはむしろ20世紀美術と戦後美術のコーナーです。モンドリアン、デュフイ、カンディンスキー、クレーの絵などコレクションは充実しています(岡山の美術館でも見た国吉康雄の作品があるのも驚きました。)。正直なところ、若い時はこれらの現代の作品はあまり関心を持っていなかったので、ブリジストン美術館のせっかくの作品も見飛ばしていたのかも知れません(記憶がありません。)。ところが、海外等で現代アートも見るようになり、その良さが分かってから再度ブリジストン美術館の作品を見ると、その良さがよく分かります。
土曜講座で解説していただいたジャクソン・ポロックのほか、アルベルト・ジャコメッティ、アンス・アルトゥング(語頭のHは発音しない。)、ザオ・ウーキー、堂本尚郎の作品なども心ゆくまで鑑賞させてもらいました。

4年ほど閉館の予定ということですが、詳細は未定で、新たな開館の時期も決まっていないそうで、しばらくは東京駅の近くでこの作品群を見ることはなさそうです。ただ、閉館中は貸し出しがされるのではないかということを期待し、また、新たに開館することを期待して立ち去りました。

記念にザオ・ウーキーのクリア・ファイルを買いました。

大英博物館展―100のモノが語る世界の歴史(東京都美術館)

2015年04月27日 | 美術道楽
東京都美術館で開催中の「大英博物館展―100のモノが語る世界の歴史」展に行きました。
大英博物館のコレクションからきっかり100点(ただし、番外編の古代エジプトと現代の棺もあります。)を選び、それによって世界の歴史を学ぼうとする企画です。

まずはHPから企画の趣旨を引用します。
(引用はじめ)ロンドンにある大英博物館は、人類の文化遺産の殿堂として世界中のあらゆる地域と時代を網羅したコレクションを誇ります。「大英博物館展―100のモノが語る世界の歴史」は、700万点を超える収蔵品から選び出した100作品を通じて、200万年前から現代に至る人類の創造の歴史を読み解こうとする試みです。

選ばれた品々は、一見して何気ない日用品から教科書にも登場する芸術的な名品まで多岐にわたります。100の「物」たちは、それらを手にした人々の日々の営み、信仰の対象、激動する社会背景など、様々な「歴史の断片」を私たちに語りかけます。中には初めて目にする地域や文化からもたらされた物もあることでしょう。一方、私たちになじみ深い文化が残した物にも、思いがけない発見があることに驚くはずです。

本展を通じて、地球をめぐる時空を超えた世界旅行をどうぞお楽しみください。
(引用終わり)

最初は200万年前のアフリカの礫石器から始まります。そして、最後は現代のソーラーランプと充電器です。その間に、例えば、「ウルのスタンダード」と呼ばれる紀元前2500年のイラクの箱、有名なロゼッタストーンの模型、1200年ころのルイス島のチェス駒、デューラーのサイの版画、宗教改革100周年記念ポスター、新大陸との奴隷貿易に使用された貨幣、アメリカの大統領選挙のバッジなどもあります。
美術作品に限られず、何でもありです。
例えば、新大陸との奴隷貿易に使用された貨幣などが典型なのですが、展示作品の個々の品を凝視することにはあまり意味がなく、それがどのような意味を持っていたかを知ることに意味がある展示ですので、皆、作品を目の前にしつつ解説の方を見入っていました。不思議な光景ですが、今回の展示に関してはやむを得ません。

アジアやアフリカの古代の文物の展示を見ていますと、ベルリンのダーレムの博物館やハンブルクのVoelkerkundemuseum (昔、近所に住んでいました。)の展示品を見ているような錯覚を覚えました(アジアやアフリカの民族工芸品なのですから当たり前ですが。)。
私のお気に入りの3点は、
1 デューラーのサイの版画
2 宗教改革100周年記念ポスター、
3 バカラの水差し
となりました。
あまり工夫のない選択となりました。

ブリジストン美術館土曜講座ジャクソン・ポロック

2015年04月26日 | 美術道楽
しばらく閉館となるブリジストン美術館の土曜講座の最後の講座を聴きに行きました。
最後と書きましたが、改修後の開館後には再度このような講座を開催する予定とのことfですから、最後にならないことを期待しております。
今回のテーマはジャクソン・ポロックです。

地方にいてブログを更新していなかった2012年には竹橋の東京国立近代美術館でジャクソン・ポロックの回顧展が開催されていました。今回の講師は、その企画展を担当された東京国立近代美術館企画課長の中村和雄さんです。でもって、講師の紹介をされたのは、日比谷文化図書館の講演の際に講師をされた貝塚さんでした。

ジャクソン・ポロックの作品の流れをスライドで説明してもらいました。
ジャクソン・ポロックの作品の特徴は、剛胆と繊細、抽象と具象、多様性と単一性という相反する要素の中で振れていること、特に剛胆さと繊細さの振れ幅は非常に大きいということでした。また、ポロックの絵画は一般には抽象絵画の典型のように言われていますが、完全な抽象画となっているのは絶頂期にあった時期の中の2作に限定されているということも知りました(そのうちの一作が、東京国立近代美術館の回顧展で見た、テヘラン現代美術館所蔵の「インディアンレッドの地の壁画」なのだそうです。)。

ポロックは、ドロドロとしたイメージを与える具象画から出発し、床に広げたキャンバスに絵の具を注ぎしたらせるポーリング、絵の具をはけや筆に付けて振ることによって飛散させるドリッピングという技法で制作するのですが、彼の制作現場の動画を見ましたが、最初は意外と緻密にポーリングの作業をして、人物と思われるような形で線を描いていくようです。決して機械的な作業で描いているのではありません、完全な偶然性に支配された絵画とは違うようです。このようにして描いた上で、作品の上下などは、最終的に作品完成後の出来を見ながら決めるのだそうです。
余談なのですが、ポロックは、自分の制作の様子を動画に撮ることも精神的に大きな負担であったようで、絶頂期の3年間には完全にアルコールなしで過ごしていたのに、動画の撮影も1つの大きな原因となり、再びストレスからアルコール中毒に逆戻りし、スランプに苦しみ、1954年には全く制作することもできなくなったそうです。
そして、ポロックは1956年には交通事故で死亡(自殺説が有力)するのですが、晩年には具象画の要素が強くなり、作品はつまらない物になったとの厳しい評価になっております。

ブリジストン美術館に所蔵されている作品は、1951年のものでしたので、中村先生の解説を聞く前から既にああ、晩年の評価されなくなった時期のものかと分かりましたが、中村先生のお話によると、最もポロックらしくないポロックの作品とのことです。
月の形、人のイメージ?も入りこみ何だかよく分からないような形ですが、具象の要素は入っているものの、ポロック初期のドロドロとした要素が乏しく、すっきりした線やフォルムなのだそうです。

ブリジストン美術館はポロックの作品を、2006年に石橋財団創設50周年を迎えるのを記念して2005年に購入したそうです。ブリジストン美術館といえば印象派というイメージが強いですが、現代アートの収集にも力を注いでくれるようで、うれしい限りです。


ガブリエル・オロスコ展再訪

2015年04月21日 | 美術道楽
再び東京都現代美術館のガブリエル・オロスコ展に行きました。

今回気づいたのですが、オロスコ展にあわせたアプリが公開されています。



オロスコ展の開催期間に限定して使用することができます。
これをもって行けば、訪れた部屋ごとに作品の解説が出てきます。
写真も豊富なので、これを見ながら作品を鑑賞すれば、作品への理解が深まります。
オロスコが妊娠中の奥さんのお腹の写真を撮った「シモンの島」などはアプリの解説を読む前にはそもそも人間のお腹の写真と思っておらず、果物か何かと誤解していました。

アプリで理解も深まり、以前にも増して楽しむことができました。
アプリはIPhoneもアンドロイドも両方あります。







若冲と蕪村(サントリー美術館)

2015年04月20日 | 美術道楽
サントリー美術館で開催中の「若冲と蕪村」展に行きました。

いつもながらサントリー美術館は大混雑です。
今回の展示は、展示替えが頻繁です。会期が6ブロックに分かれておりまして、次々と展示替えが進みます。
所狭しと展示がされていました。
若冲と蕪村は同年齢ということです。

私としては、若冲の動物の絵が気に入りました。
若冲の鳥の絵は有名ですが、他にも若冲による象と鯨の屏風絵、ワンちゃんと箒の掛け軸などのほか、イカ、カニ、海老の絵もありました。
特にお気に入りは丸っこくてコロンとしたワンちゃんの後ろ向きの絵でした。

ゴールデンウィーク中に動物の絵をテーマにした展覧会をほかにも行きたいと思います。


ところで、関係のない話ですが、サントリー美術館は、「鼠草子」という絵巻物を所蔵しています。我々ねずみ属のご先祖様である鼠の権頭(ごんのかみ)という古鼠を主人公にしたストーリーです。同じねずみ属同士の相方ねずみと結婚した道楽ねずみとは違って、権頭は人間の姫君と結婚したものの,鼠であることが発覚して逃げられて、猫と一緒に出家するというストーリーです。今回サントリー美術館に行きましたら、鼠草子の本自体は売っていましたが、絵はがきは売っていませんでした。売り場が足りなくなったのでしょうか。残念でした。


さらに余談
ルーブル美術館展にあわせたサムトラケのニケ



ルネ・マグリット展(国立新美術館)

2015年04月19日 | 美術道楽
国立新美術館で開催中のルネ・マグリット展に行きました。
ルネ・マグリットの回顧展は2002年以来ということです。

時代を追って紹介されます。
最初は、商業デザイナーとして制作にかかわった作品も紹介されます。次いでジョルジョ・デ・キリコの作品《愛の歌》(1914)に感銘を受けて、シュルレアリスムへと傾倒した後の作品が紹介されます。そして、第二次世界大戦でナチがベルギーに侵攻した後の時期の、妙に明るい、印象派のような色彩の作品、さらに戦後のフォービズムのような色彩の作品を経て、再びマグリットらしい作品に戻っていく作家としての活動の遍歴もよくわかりました。

女性のヌード、透明なキャンバス、光と闇などをベースにした不可思議な作品を沢山目にすることができました。
横浜美術館等でルネ・マグリットの作品は見ていましたが、これだけ多数の作品をまとめて見る機会は今までなかったので、非常にいい展覧会でした。
この作品が良かったと1点に絞れない作品群でして、個々の作品もさることながら、まとめてマグリットの世界を味わうことができたのに感激です。

最後のミュージアムショップで、マグリット作品のクッションカバーを売っていて、欲しくなりましたが、1万2000円と余りに高いのでやめました。


惜しむらくは、入場の際にインターネットで購入したバーコードのチケットの入場でトラブり、入場で待たされた上、係員に随分と無礼な扱いを受けたことです。
国立新美術館の職員は、バーコードチケットに慣れていないのか、今回のようなトラブルに既に何度も巻き込まれている上、職員への躾が著しく不良なので、腹に据えかねるところもありますが、いい展覧会だったので、そのことは別の機会に別の方法で問題提起するとして、今回は展覧会を楽しみました。ただ、国立新美術館(できれば渋谷のBunkamuraも。ただし、新美術館の職員とは違い,Bunkamuraの方は職員の方に悪意がないことが明らかであったので、あまり取り上げたくないのですが。)に行くときにはこの種チケットは使わないことを強くお勧めします。





ブリヂストン美術館の魅力 ーベスト・オブ・ザ・ベスト展のみどころ(日比谷カレッジ)

2015年04月17日 | 美術道楽
もう1か月も前のことですが、日比谷文化図書館で開催される日比谷カレッジの「ブリジストン美術館の魅力」と題する講演会を聞きに行きました。
講師はブリジストン美術館学芸部長貝塚健氏でありました。
スライドを使いながらブリジストン美術館の歴史、コレクションなどをご紹介いただきました。
ブリジストン美術館は、建物の外観こそ近代的ですが、1952年竣工の建物で、その構造は相当に老朽化しており、もはや改修ではなく、建て替えの必要があるということです。
そして、新築後もしばらくはコンクリから絵画によって有害な物質(アンモニアと聞いたような気がします。)が排出されるので、しばらくは美術品を入れずにそのままにして、徹底的に換気をする必要があるのだそうで、当面(数年間)は休館ということです。
今回ベスト・オブ・ザ・ベスト展を開催するに当たっては文字通りベストのコレクションを見てもらうために、他の美術館への貸出しは停止しているのだそうです。


ブリジストン美術館の沿革に関連して、会社としてのブリジストンのお話をうかがい、創業者の石橋正二郎氏のコレクション収集のお話をうかがいました。そして、そのコレクションがブリジストン美術館になったことなどを聞き、ブリジストン美術館のコレクションがパリの国立近代美術館で展示されたときの写真や石橋一門の方が作家の方と一緒に写っている写真なども見せていただきました。ブリジストン美術館のコレクションの中でも、私のお気に入りの作家のザオ・ウーキーが来日した際の写真も見ることができました。
貝塚さんのお話によると、皇后様もブリジストン美術館のコレクションが非常にお好きで、お忍びで何度も訪問されているとのことです。


ブリジストン美術館のコレクションは、有名なマネの自画像をはじめ、大変貴重な作品が多いという自慢話も決して誇張ではないようです(マネの自画像は、三菱一号館のマネ展でも展示の中枢を構成していました。)。
ブリジストン美術館というと印象派という感じがありますが、実は現代アートのコレクションも充実しており、ジャクソン・ポロックの作品もあれば、ザオ・ウーキーの作品もあります。

3月30日からは、青木繁の《海の幸》も来ているそうです。
貝塚さんは、是非展示替え前後で2回来て下さいと言われました。
私も既に展示替え前に出かけているので、そのうち展示替え後の作品群を見てみたいと思います。

写真は、日比谷文化図書館のHPからお借りしました。

ピカソと20世紀美術(東京ステーションギャラリー)

2015年04月16日 | 美術道楽
東京ステーションギャラリーで開催中の「ピカソと20世紀美術」展に行きました。
3月に北陸新幹線が開業したのを記念して開催された展覧会です。

実は、このブログを休んでいた2012年の夏に金沢21世紀美術館と富山県立近代美術館を訪ねる旅を相方ねずみと共にしていました。そこで、富山県立近代美術館のコレクションがいかにすごいかを知っていたので、今回楽しみにして出かけました。

期待を裏切らない充実した内容です。
企画展の名称にはピカソと付いていますが、もちろんピカソだけではありません。といいますか、他の作品がよいので、相対的にピカソの存在感が薄まっています。
キルヒナー、クレー、ケーテ・コルヴィッツ、マックス・エルンスト、ポール・デルヴォー、ゲルハルト・リヒター、フランシス・ベーコン、アンディ・ウォーホル、ロバート・ラウシェンベルグ、ドナルド・ジャッド等々もう挙げたらきりがありません。展示作品は63点と小規模ではありますが、とにかく幅広いジャンルの現代アートが来ています。しかも、皆一流の作品ばかりです。
しかも、コンパクトに作者や作品の潮流についての解説も付いていますので、現代アートの入門者にも楽しめるようになっています。

私が特によいと思ったのは、ゲルハルト・リヒターの作品でした。アブストラクト・ビルダーでありますが、緑色をベースに明るい色彩で、隣の部屋から展示している空間を見ると、オーラを放っているように見えました。
ドナルド・ジャッドの作品も久しぶりに見ることができました。

私も現代アート大好きで沢山作品を見ていますが、それでもまだ知らない作家の作品も展示されていました。富山県立近代美術館は、地方にありながらこれだけのコレクションを持っているのですから、すごい美術館と思います。

北陸新幹線に乗ったら、金沢21世紀美術館だけではなく、富山県立近代美術館にも行って見ることをお勧めします。


東京ステーションギャラリーは駅のクーポラの中にあります。








三井の文化と歴史(三井記念美術館)

2015年04月15日 | 美術道楽
三井記念美術館で開催中の「三井の文化と歴史」と題する展覧会に行きました。
この展覧会は前期と後期に分かれ、前期は「茶の湯の名品」、後記は「日本屈指の経営資料が語る三井の350年」というタイトルが付けられています。
三井文庫開設50年と三井記念美術館開館10年を記念しての企画のようです。
後期の方は、江戸時代の豪商から明治維新後の三井財閥に至るまでの三井家の発展をテーマにしたもので、歴史的にみてもとても貴重な文物の展示がありそうですが、私は正直なところ前期の方にしかあまり関心はありません。

4月11日のオープン直後に出かけ、念願の年間パスポートも入手しました(去年は退院してから買いに行きましたら、もうないと言われてしまっていましたから。)。

茶器は、三井家の自慢の国宝《志野茶碗 銘卯花牆》はもちろん、重要文化財の長次郎作《黒楽茶碗 銘俊寛》、本阿弥光悦作《黒楽茶碗 銘雨雲》などが展示されています。このほか、中国や朝鮮の茶器も展示されており、茶器のことをよく知らない自分にも、分からないながらも不思議な気品と趣を感じることができました。

このほか、三井家の一門の絵などの作品も展示されていました。
それが皆見事なこと。以前に漱石展に行きましたときは、漱石のへたくそな絵画を見させられて、興ざめでしたが、三井家の一門の作品はいずれもプロのレベルに達しており、すごいと思いました。三井高就の絵は特に素晴らしかったのですが、この方は商売人としてはダメであったそうです。また、三井の当主と紀州藩主のコラボ作品「紀州御庭焼 赤楽亀絵茶碗」なども、二人とも本来的には芸術家としての職に就いていた訳でもないのに、その完成度に感心させられました。



ワシントン・ナショナル・ギャラリー展(三菱一号館美術館)

2015年04月14日 | 美術道楽
三菱一号館美術館で開催中のワシントン・ナショナル・ギャラリー展に行きました。
ワシントン・ナショナル・ギャラリー(NGA)は、アメリカ唯一の西洋美術を集めた国立美術館ということです。
ワシントン・ナショナル・ギャラリーは、アメリカのメロン財閥のアンドリュー・W・メロンが、美術館設立のための基金と、自身の美術コレクションを連邦政府に寄贈したことによって創設され、アンドリューの遺志を引き継いだ娘エイルサ・メロンによって拡充され、エイルサが寄贈したフランス印象派とポスト印象派のコレクションをあわせて今日の基礎が築かれたそうです。今回の企画展の情報によれば、エイルサのコレクションは自宅を飾るために、繊細で洗練された感性によって収集されたもので、極めて上質で上品な印象派作品群ということです。
メロンといえば、日本ではニューヨークメロン信託銀行株式会社が知られていますが、そのメロンです。ついでに言いますと、ニューヨークメロンなどといいますと、トマト銀行と同様に安直に果物の名前を使ったような印象を与えますが、メロン財閥のメロンと知ると、急に立派な銀行のように聞こえてきます。

閑話休題。さて、今回は、ワシントン・ナショナル・ギャラリーの中の印象派コレクションの展示です。
小規模な作品が中心ながら、モネ、ルノワール、マネ、セザンヌなど、印象派の作品が目白押しです。


HPによれば、見所の1つとして、3つの親密なintimateコレクションと書かれています。すなわち、1.身近に置くために収集。エイルサ(注・基礎となる収集をしたコレクター)にとって親密な作品群、2.家族、親友、身近な風景・・。画家たちにとっての親密な主題。3.恋人同士、飼い主とペット、パトロンと踊り子・・。モデル同士の親密な関係が挙げられています。

マネのワンちゃんの絵《キング・チャールズ・スパニエル犬》《TAMA》は、3.の範疇に属しますが、マネ自身はワンちゃんが好きではなく、依頼主に無理矢理ワンちゃんをアトリエに連れ込まれたようです。ワンちゃんの表情が硬いのは、マネが嫌いなワンちゃんを前に嫌々筆をとっていたからなのでしょう。
ルノワールのネコちゃんの方が自然な絵に仕上がっています。

セザンヌのリンゴやマネの牡蠣の静物画も良かったのですが、一番充実していたのは、やはりボナールとヴュイヤールのコレクションでしょうか。エイルサが特に力を入れたコレクションのようで、展覧会の最後の部屋にまとめて飾られていました。



グエルチーノ展(国立西洋美術館展)

2015年04月13日 | 美術道楽
国立西洋美術館で開催中のグエルチーノ展に行きました。

実は、私は恥ずかしながらグエルチーノという人の名前を聞いたことがありませんでした。
グエルチーノは19世紀半ばには既に忘れ去られた画家になってしまっておりましたが、それまではイタリア美術史における最も著名な画家の一人とされていたようです。

HPから企画の趣旨を引用します。
(引用はじめ)グエルチーノ(1591-1666年)はイタリア・バロック美術を代表する画家として知られます。カラヴァッジョやカラッチ一族によって幕が開けられたバロック美術を発展させました。一方、彼はアカデミックな画法の基礎を築いた一人でもあり、かつてはイタリア美術史における最も著名な画家に数えられました。19世紀半ば、美術が新たな価値観を表現し始めると、否定され忘れられてしまいましたが、20世紀半ば以降、再評価の試みが続けられており、特に近年ではイタリアを中心に、大きな展覧会がいくつも開催されています。国立西洋美術館もグエルチーノの油彩画を1点所蔵していますが、今回はこの知られざる画家の全貌を、約40点の油彩画によってお見せします。わが国初のグエルチーノ展です。
出品作品の多くはチェント市立絵画館からお借りします。実はチェントは2012年5月に地震に襲われ、大きな被害を受けました。絵画館はいまもって閉館したままで、復旧のめども立っていません。本展は震災復興事業でもあり、収益の一部は絵画館の復興に充てられます。

(引用終わり)

バロックといえば、カラヴァッジョを思い出しますが、グエルチーノは直接にカラヴァッジョの絵を見て影響を受けたというのではないようで、カラヴァッジョに影響を与えたものと同じ物から影響を受けるなど間接に影響を受けたということのようです。グエルチーノの絵にも強い光が描かれているものもありますが、それでもカラヴァッジョほど明暗のコントラストは強くないようです。
グエルチーノは、きちんと師匠について絵を学んだ訳でもなく、地方都市のチェントの大聖堂でルドヴィコ・カラッチの《聖家族と聖フランチェスコ、寄進者たち》の絵を見るなどして独学で絵を学んだそうです。
因みにカラッチであって、旧ユーゴスラビア国際刑事裁判所に起訴されたカラジッチではありません(私は、カラッチと言おうとすると、いつもカラジッチと言ってしまうので。)。

初期の作品からローマに行く頃までの作品は、特によいと思いました。
《キリストから鍵を受け取る聖ペテロ》などは対抗宗教改革のための絵のようです。
《聖イレネに介抱される聖セバスティアヌス》は、矢にいられている状態の聖セバスティアヌスではなく、治療中の姿です。そして、その絵の中の聖イレネは、別の絵の《巫女》と完全に同じ姿で描かれています。
《マルシュアスの皮をはぐアポロ》は、少し残虐すぎる絵です。
そして、ローマに行く前後の《聖母被昇天》、《放蕩息子の帰還》はグエルチーノの作品の頂点に位置していると思います。同じ頃の《聖母のもとに現れる復活したキリスト》は、既に人物の動きが少なくなっていますが、それでもまだ強い光も使われ、まだまだいい作品です。

しかし、その後の晩年の作品は、落ち着いてはいますが、勢いがなく、正直魅力を感じませんでした。《スザンナと老人たち》も躍動感がないようです。

これらの晩年の作品を見ていますと、後世において忘れ去られたのもやむを得なかったのだと思います。

グエルチーノの《放蕩息子の帰還》では、帰還した放蕩息子のことをまだ覚えていたワンちゃんが2本足で立って、前足でじゃれています。
音声ガイドの案内のシートでも、このワンちゃんの上半身が、トレードマークのように使われており、また、お土産にはこのワンちゃんのトートバッグもありました。
可愛いので、ワンちゃんのトートバッグを買いました。




音声ガイドのシート


ボッティチェリとルネサンス(渋谷Bunkamuraザ・ミュージアム)

2015年04月12日 | 美術道楽
Bunkamuraザ・ミュージアムで「ボッティチェリとルネサンス展」を観てきました。
サブタイトルに「フィレンツェの富と美 Money and Beauty」とありますが、最初はフィレンツェの経済的発展に関連して、フィオリーノ金貨、為替手形、金庫、鍵などが展示されています。
マリヌス・ファン・レイメルスヴェーレに基づく模写《高利貸し》などは、金貸しの脇にぴったりと張り付くように悪魔のような人物が描かれています。

ボッティチェリの作品は、サヴォナローラの悪影響を受ける前の明るい作品もいくつも来ていました。
ウフッツィ美術館の《受胎告知》は5mを超す大作で、天使の吹く息吹が伝わってきそうです。
ストラスブール美術館所蔵の《聖母子と2人の天使》は、ヴェロッキオの影響を受けた作品ということです、ボッティチェリの師匠といえば、フィリッポ・リッピと思っていましたが、ヴェロッキオからも影響を受けた時期があるそうです。
個人蔵の《受胎告知》(1505-1508)は、天使の躍動感がありすぎて、厳かな感じがなく、天使が聖母の家に飛び込みでセールをするために走り込んできたようです。

サヴォナローラ以降のボッティチェリの作品には関心はありませんが、この時期の作品も展示されています。

このほかフラ・アンジェリコの《聖母マリアの結婚》、《聖母マリアの埋葬》などの作品や陰謀で有名なパッツィ家の紋章(テラコッタ)なども展示されていました。

一日でわかるルネサンスの社会と美術(新宿歴史博物館)

2015年04月11日 | 美術道楽
3月の終わりの土曜日に新宿歴史博物館で開催された「一日でわかるルネサンスの社会と美術」と題する講演会に参加しました。

講師は、現在、東京造形大学准教授で、今期NHKのラジオイタリア語講座応用編を担当しておられる池上英洋先生でした。

渋谷Bunkamuraザ・ミュージアムで「ボッティチェリとルネサンス」と題する展覧会を開催しておりますが、この展覧会が開催されることに関連して開催された記念講演会です。

池上先生のお話は、展覧会で展示されるものをスライドで説明するというようなものではなく、ルネサンスの時代背景、経済活動、メディチ家の台頭など歴史の話を中心に経済や美術の話をして下さり、しかもイタリアの都市のスナップ写真を交えながらのお話でしたので、随分と興味深く聞きました。なかなかこのように面白いお話は、美術館の学芸員の方からは聞けないような気がします。

ルネサンスが始まったのは、十字軍による「侵略」、「略奪」(注・これは私の用語です。)によって経済交流が盛んになったことが背景にあること、その中でフィレンツェとヴェネチアで金貨が造られたこと、金貨の輸送を大商人、両替商の子弟が行うようになったことから、「トビアスと天使」の絵が描かれるようになったこと、やがて金貨を全て輸送することは危険が伴うので、為替手形が流通するようになったこと、商人の経済力と影響力が高まることにより、自治都市国家(コムーネ)が成立するようになったことなどを聞きました。また、金融業者が、金貸しではなく、他の通過への「両替」という形をとることで、金貸しを禁止するキリスト教の教義に違反することを免れるようになったことなども興味深く聞きました。フィレンツェの経済は、ルネッサンス開始前の時期の方がより繁栄したものであり、英仏百年戦争に際しては、フィレンツェの金融業者はイギリス、フランスそれぞれに莫大な融資をしたものの、英仏それぞれから借金を踏み倒され、次々と金融業者が倒産した話などは聞いたこともなかったので、興味深く拝聴しました。

このほか、当然のことではありますが、カルミネ教会のブランカッチ礼拝堂にあるマザッジョの「楽園追放」の絵をはじめとするルネッサンスらしい絵画や今回の展覧会にも展示されるボッティチェリの聖母子像などのスライドも見ることができました。

とても、充実した楽しい講演でした。