国立西洋美術館で開催中のグエルチーノ展に行きました。
実は、私は恥ずかしながらグエルチーノという人の名前を聞いたことがありませんでした。
グエルチーノは19世紀半ばには既に忘れ去られた画家になってしまっておりましたが、それまではイタリア美術史における最も著名な画家の一人とされていたようです。
HPから企画の趣旨を引用します。
(引用はじめ)グエルチーノ(1591-1666年)はイタリア・バロック美術を代表する画家として知られます。カラヴァッジョやカラッチ一族によって幕が開けられたバロック美術を発展させました。一方、彼はアカデミックな画法の基礎を築いた一人でもあり、かつてはイタリア美術史における最も著名な画家に数えられました。19世紀半ば、美術が新たな価値観を表現し始めると、否定され忘れられてしまいましたが、20世紀半ば以降、再評価の試みが続けられており、特に近年ではイタリアを中心に、大きな展覧会がいくつも開催されています。国立西洋美術館もグエルチーノの油彩画を1点所蔵していますが、今回はこの知られざる画家の全貌を、約40点の油彩画によってお見せします。わが国初のグエルチーノ展です。
出品作品の多くはチェント市立絵画館からお借りします。実はチェントは2012年5月に地震に襲われ、大きな被害を受けました。絵画館はいまもって閉館したままで、復旧のめども立っていません。本展は震災復興事業でもあり、収益の一部は絵画館の復興に充てられます。
(引用終わり)
バロックといえば、カラヴァッジョを思い出しますが、グエルチーノは直接にカラヴァッジョの絵を見て影響を受けたというのではないようで、カラヴァッジョに影響を与えたものと同じ物から影響を受けるなど間接に影響を受けたということのようです。グエルチーノの絵にも強い光が描かれているものもありますが、それでもカラヴァッジョほど明暗のコントラストは強くないようです。
グエルチーノは、きちんと師匠について絵を学んだ訳でもなく、地方都市のチェントの大聖堂でルドヴィコ・カラッチの《聖家族と聖フランチェスコ、寄進者たち》の絵を見るなどして独学で絵を学んだそうです。
因みにカラッチであって、旧ユーゴスラビア国際刑事裁判所に起訴されたカラジッチではありません(私は、カラッチと言おうとすると、いつもカラジッチと言ってしまうので。)。
初期の作品からローマに行く頃までの作品は、特によいと思いました。
《キリストから鍵を受け取る聖ペテロ》などは対抗宗教改革のための絵のようです。
《聖イレネに介抱される聖セバスティアヌス》は、矢にいられている状態の聖セバスティアヌスではなく、治療中の姿です。そして、その絵の中の聖イレネは、別の絵の《巫女》と完全に同じ姿で描かれています。
《マルシュアスの皮をはぐアポロ》は、少し残虐すぎる絵です。
そして、ローマに行く前後の《聖母被昇天》、《放蕩息子の帰還》はグエルチーノの作品の頂点に位置していると思います。同じ頃の《聖母のもとに現れる復活したキリスト》は、既に人物の動きが少なくなっていますが、それでもまだ強い光も使われ、まだまだいい作品です。
しかし、その後の晩年の作品は、落ち着いてはいますが、勢いがなく、正直魅力を感じませんでした。《スザンナと老人たち》も躍動感がないようです。
これらの晩年の作品を見ていますと、後世において忘れ去られたのもやむを得なかったのだと思います。
グエルチーノの《放蕩息子の帰還》では、帰還した放蕩息子のことをまだ覚えていたワンちゃんが2本足で立って、前足でじゃれています。
音声ガイドの案内のシートでも、このワンちゃんの上半身が、トレードマークのように使われており、また、お土産にはこのワンちゃんのトートバッグもありました。
可愛いので、ワンちゃんのトートバッグを買いました。
音声ガイドのシート