道楽ねずみ

ドイツに関するものを中心に美術展,オペラ,映画等の趣味の世界を紹介します。

松葉蟹(ズワイカニ)

2010年11月30日 | 食道楽
松葉蟹が11月6日に解禁になって,1か月弱になります。
今度は親カニではなく,普通に雄の松葉蟹を買いました。
といっても毎年のように足折れのものです。足が数本かけているだけで,安い値段で新鮮なものが食べられるのでお得です。
生ではなく,ゆでたものを購入しました。
冷凍ではない新鮮なものを食べますと,翌日,腸の消化不良も起こさず,普通に過ごせます(冷凍のものを食べると,便秘気味になるのは保存液の影響でしょうか。)。
このほか新鮮なカニの特徴は,足がさっとむけ,あまり味が生臭くすぎないことのような気がします。

カンディンスキーと青騎士(三菱一号館美術館・千代田区丸の内2丁目)

2010年11月29日 | 美術道楽
道楽ねずみにしては珍しく開館初日に「カンディンスキーと青騎士」展に行きました。普段,美術館には後手後手で閉館間際に行くことの方が多いのですが。

内容ですが,素晴らしいの一語に尽きました。
カンディンスキーの作品がたくさんあります。カンディンスキー以外の作品も,カンディンスキーのパートナーである(正式の妻は別にいましたが,正式の妻ではありません。)ガブリエレ・ミュンター,ヤウレンスキー,マッケ,フランツ・マルクなど素晴らしい作品ばかりです。
カンディンスキーは,モスクワでは学者でしたが,画家を志し,ミュンヘンにやってきて,ミュンターと知り合います。2人は,法律上の婚姻はできませんが,その代わりにオランダ,チュニジア,イタリア,フランス(特にセーブル),ドイツ国内を長期間にわたり旅行します。そして,カンディンスキとミュンターはミュンヘンに戻った後,同じくバイエルンのムルナウを何度も訪問するようになり,第一次世界大戦が起こるとと共にスイスに逃れます。今回の展覧会では,ミュンヘンにいた初期の作品,長期の旅行をした時期の作品,ムルナウの作品,青騎士の作品と時代の流れを追いながら,その変化の軌跡を見ることができます。
最初は具象的な絵から出発したカンディンスキーの絵が次第に抽象化した絵へと変化していく課程が見られて大変興味深かったです。絵は,見たとおりの心証→印象→コンポジション,と抽象化が進んでいくのだそうです,
それとロシア,各地の旅行,ムルナウの自然といったものがカンディンスキーに当然のことながら影響を与えていることもわかりました。
青騎士の旗揚げ後まもなく第一次世界大戦が勃発し,メンバーは国外に逃れたり,戦死したりして,青騎士自体はこれからという時期に解体してしまいます。

今回の展覧会はミュンヘンのレーンバッハハウス(美術館)の改装に伴い実現したようです。レーンバッハハウスはミュンヘンで一度訪問したことがありますが,この館の所有者であったレーンバッハの絵などは一室にしか展示されておらず,カンディンスキーの絵が中心の美術館であった記憶です。ここを訪れた際には,レーンバッハも家を提供したことで,一応お情けで絵をおいてもらったのかと思っておりましたところ,以前にベルリンの旧ナショナルギャラリーを訪れた際に,レーンバッハのワーグナーやビスマルクの絵を見て,レーンバッハもきちんとした画家だったのかと初めて知りました。今回,レーンバッハの作品もさらに見まして,また解説も読みまして,レーンバッハは20世紀最初期のミュンヘンでは画壇のリーダーだったのだと知りまして本当に驚きました。

余談ばかりになりましたが,とても素晴らしい展覧会で一押しです。あまりにも素晴らしかったので,久しぶりに図録を買いました。
私は会期の間にまだ後2回くらいは訪問したいと思います。
この展覧会は,この後,愛知県美術館,兵庫県立美術館山口県立美術館と巡回しますので,多くの人が楽しむことができると思います。







小石川後楽園(文京区後楽1丁目)

2010年11月28日 | 風流道楽
先週小石川後楽園に紅葉を見に行ってきました。
ここは,以前の家の近所ですので,何といっても道楽ねずみがは最も頻繁に徘徊する庭園です。

何といっても朝の散歩は気持ちのいいものです。


涵徳亭の前で


通天橋と紅葉


涵徳亭と渡月橋


池の周り


蓮萊島と紅葉その1


蓮萊島と紅葉その2









六義園紅葉のライトアップ(文京区本駒込6丁目)

2010年11月27日 | 風流道楽
いつものように六義園の紅葉のライトアップを見てきました。
見所は3箇所あります。
駒込駅近くの染井門から入ったので,そこからの順番で以下に書きます,大和郷方面の正門からまわった場合には逆の順序になります(正門からまわるのが,本来想定しているルートと思います。)。
最初は駒込駅近くの染井門から入ってすぐのところで,水の流れにそった堤のようなところにあります。




次の写真には月も上の方に映っているのですがわかりますでしょうか。いいカメラでも肉眼で見る感動の全てが伝わらないのが残念です。








2箇所目は,茶屋の近くのところです。





最後はしだれ桜の近くにある庭園の周辺です。








しだれ桜近くの門


正門近くの傘





アドベントカレンダー

2010年11月26日 | ドイツ語
クリスマスの時期に入りますので,ドイツのクリスマスらしく,アドベントカレンダーを買いました。
12月1日から日付けの書いた番号の箱なり窓なりを開けていくと,そこにお菓子等が入っているカレンダーです。
一つはマウスのアドベントカレンダーです。こちらは,どうやら料理のレシピやクイズなどが書いてあるようです。ドイツ語の活字に関心がないとどうかなというアドベントカレンダーではありますが,驚くなかれ日本のAmazonで買うことができました。最近はマウスは日本でも人気のようです。

もう一つはもう少しオーソドックスなアドベントカレンダーです。クリスマスイブにはSwarovskiの時計が出てくるとか。もっともそれ以外は安価なお菓子のようです。Swarovskiのグッズを正価で買った方がいのかと思いつつも,購入してしまいました。

Swarovskiのカレンダー



包みをあけるとこんな感じです。





DEMELのザッハトルテ(伊勢丹新宿店・新宿区新宿3丁目)

2010年11月25日 | 食道楽
新宿伊勢丹で11月19日,DEMELのザッハトルテを買いました。
実は本当に買いたかったのはホレンディッシェ・カカオ・シュトゥーベのシュトレンだったのですが,残念なことに1日違いでまだ発売されておらず,こちらは予約して後日,買うことにしました。しかし,そのまま何も買わないで買えると,家にいる相方がガッカリするなと思い,急きょザッハトルテを買うことにしました。
以前こちらでは,キルシュトルテを買った際に,何故かザッハトルテ風にチョコで固められていて,これは違うんじゃないかと思ったこともあったことから,しばらくDEMELでは買わないでいましたが,さすがにザッハトルテは本場のウィーン風でした。少しチョコの味が強いのですが,そこが本場の味。相方からはクリームがあるとおいしいといわれましたが,クリームが家になくても十分においしかったです。


牛天神(文京区春日)

2010年11月24日 | 風流道楽
文京区の牛天神では11月20日まで牛天神わらべ祭りを開催していました。
文京区を離れて早7年以上も経った今でも,ここにはよく出かけます。
この界隈は相方の方が私より詳しく,昔,相方から教えてもらいました。
菅原道真ゆかりの天神様なので,牛の像もあります。
小さな神社で,春日通りから奥に入らないと行くことができないので,意外に知られていないと思いますが,趣きのあるいい神社です。







神宮外苑の銀杏並木

2010年11月23日 | 風流道楽
明治神宮外苑の銀杏を11月19日に見に行きました。
毎年行くスポットですが,いつ見ても遠近法の演出が見事です。
私が見に行った時には,まだ銀杏が緑色の部分が多く,黄色といいますか,金色になりきっていなかったのですが,今頃はきっと金色に輝いていることでしょう。
朝の散歩は気持ちのいいものです。



アンドレア・シェニエ(新国立劇場・渋谷区本町)

2010年11月22日 | オペラ道楽
新国立劇場でオペラ,アンドレ・シェニエを見てきました。

イタリアの作曲家ウンベルト・ジョルダーノによる全4幕のオペラで,フランス革命期のパリを舞台としています。フランス革命期を舞台とする劇であれば,以前にドイツで「ダントンの死」という劇を見たことがありますが,このオペラを見るのは初めてです。

詩人シェニエと伯爵令嬢マッダレーナ,そして革命前はマッダレーナの家の従僕にして,今やモンターニュ派(山岳派,フランス革命期のジャコバン派の急進派)の幹部となったジェラール3人の恋愛を機軸にしながらも,それだけに終わらないストーリーです。フランス革命史に特別の思い入れのある道楽ねずみは大喜びのオペラでした。

私は知らなかったのですが,驚いたことにアンドレア・シェニエとは実在の人物だったようです。実在のシェニエも詩人で,フィアン派(立憲君主派)に属し,あの「質量保存の法則」で有名なアントワヌ・ラボワジェとも親交があったそうです(因みにラボワジェも,フランス革命期にギロチンによって処刑されます。革命裁判所は「共和国は科学者を必要とせず。」とのたまわって,ラボワジェを「仕分け」してしまいました。)。

閑話休題。ストーリーはおおよそ次のようなものです。
【第1幕】ジェラールは父の代からマッダレーナの家の伯爵家に従僕として仕え,ジェラールとマッダレーナは幼なじみ。ジェラールはマッダレーナに恋心を抱いているが,2人の身分は大違い。マッダレーナの家でパーティーが開催され,そこでマッダレーナに請われて即興詩を作ったシェニエにマッダレーナは恋心を抱くようになる。他方,貴族の圧政に虐げられることに我慢のできなくなったジェラールは物乞いの集団を伯爵家に潜り込ませ,父と共に伯爵家から脱出する。
【第2幕】革命後,詩人シェニエは密偵に監視される身分に,ジェラールはモンターニュ派の幹部になる。シェニエは人の使いでマッダレーナと再会し,2人は恋に落ちるが,ジェラールは2人を捕らえようとし,シェニエと戦って負傷するが,戦った相手がシェニエであることを知ると,マッダレーナを守るようにいい,また2人が逃げた後はシェニエの名前を隠し,自分を傷つけた者は名前は分からないがジロンド派だろうと説明する。
【第3幕】ジェラールは,シェニエ逮捕後,彼を告発する文書を書くが,その行為がマッダレーナを得たいという単なる情欲からのものに過ぎないことに気づき慄然とする。そして,マッダレーナがジェラールを訪れると,その身体を情欲のおもむくままに弄ぼうとするが,シェニエの命を助けてくれるならという言葉に良心を取り戻し,シェニエを救おうと決意する。ジェラールは革命裁判所において,前の告発が虚偽であることを告白し,撤回するが,それでも民衆達はシェニエを死刑にする。
【第4幕】マッダレーナは,ジェラールと共にシェニエの収監されている刑務所に行き,看守を買収して,翌日処刑予定の女性と入れ替わり,自分が処刑されることする。そして,
シェニエと刑務所で再会し,夜明けと共に処刑されるべく革命広場に向かう馬車に乗り込む。

何といってもみどころは第3幕です。ジェラールの揺れ動く気持ちと彼をとりまく環境がうまく表現されています。かつてブルボン王制の圧政の元に苦しみ,そこからの解放を目指していたはずのジェラールが,いつの間にか情欲の虜になっていたことに気づき,マッダレーナの態度を前にして良心に従って行動をしようとします。しかし,民衆はジェラールについて買収された者との烙印を押し,有無を言わさずシェニエを死刑と決めつけていきます(血に飢えた革命裁判所の姿は,アナトール・フランスの「神々は乾く」などにも描かれているところではあります。)。このオペラの話に基づけば,ジェラールもシェニエに買収されて弁護したという疑いがもたれた以上,当然,遠からずギロチンにかけられるという結論になるでしょう。
なお,実在のシェニエはテルミドール反動のクーデターの3日前に処刑されたということですから,実在のシェニエの死後3,4日でロベスピエール,サン・ジュスト,クートンらモンターニュ派の幹部も皆処刑されてしまったことになります。

大変興味深いオペラでした。ストーリー自体が面白いですし,話や舞台の展開は思いの外早いです。歌も音楽もとても綺麗でした。
演出も舞台の幕がギロチンの刃の形になっていたり,幕間のスクリーンにギロチンが細胞分裂のように2の数乗形式で次々と増殖していく様が映し出されたりと,革命の殺伐とした人の心もうまく演出しています。特にギロチンの細胞分裂は,流血の連鎖という恐怖政治の実態を訴えかけてくれます。

今回は初めてのオペラの割に,中身も盛りだくさんだったため,余り細かいところに気を配って見る余裕もなくなってしまい,演出の細かい部分を丁寧に見ることはできませんでしたが,とても素晴らしいオペラでした。主役の3人の歌手は皆,うまかったように思います。







豚組(港区六本木7丁目)

2010年11月21日 | 食道楽
国立新美術館の帰りにその近くにある「豚組」で食事をしました。
国立新美術館入り口のところに掲げられているポスターのすぐ裏手のビルにあります。
ランチの和食バイキングを食べましたが,ひじき,サラダ等もありますが,やはりメインは豚肉料理です。しゃぶしゃぶ,生姜焼き,肉じゃが等様々あります。
最初に店に入ったときは,料理が出払っていて何もなく,びっくりしましたが,次々と皿が出てきました。
しかし,肉ですとすぐにお腹がいっぱいになりまして,意外に食べることができないものでした。
店の中央の通路にバイキングコーナーがあるので,その近くの座席だと,ちょっと狭く,人も頻繁に通るので,なかなか落ち着いてはいられません。
この場所でお手軽な値段ですので,仕方ないことだということは十分に納得しますが。
奥の座席だともう少し落ち着くと思います。
やはり,バイキングで慌ただしく食べるよりも,ゆっくりとしゃぶしゃぶをいただきたいものです。その方がきっとおいしく感じることができるでしょう。

国立新美術館前のポスターの上に「豚組」のポスターが載っています。


ゴッホ展(国立新美術館・港区六本木7丁目)

2010年11月20日 | 美術道楽
国立新美術館で開催中のゴッホ展に行きました。
オランダのファン・ゴッホ美術館,クレラ・ミュラー美術館のコレクションを中心にさらに別の美術館からも集めたコレクションを多数展示しています。
ゴッホの絵だけを挙げても,「灰色のフェルト帽の自画像」,「アルルの寝室」,「ガシェ博士の肖像」などどこかで見たことのある絵が展示されています。
ゴッホ以外の画家,つまり,同時代の画家やゴッホに影響を与えた画家の絵も展示してあります。音声ガイドも聞きましたが,ゴッホの絵がたくさん展示してあるので,ゴッホの絵全てが音声ガイド付きではありません。

美術展では最初に最初期の作品と最晩年の作品を並べて展示し,見る者に何が変わらず,何が変わったのかを考えさせます。そして,その問題意識を持ちながらゴッホの絵をその人生の軌跡を辿りながら見ていきます。
ゴッホはモーヴに絵を習い,またミレー,ドラクロワに大きく影響を受けていきます。このほかにも,クールベ,ロートレック,いわずと知れたゴーギャン等からも影響を受けます。そして日本の浮世絵からも。ゴッホが絵の成熟過程で,ずいぶんと多くの画家の影響を受けたことが分かります。そして,その人生とともに絵の変化を見ていくことは大変興味深かったです。

アルルの寝室については,原寸大に寝室を再現してあるのも面白かったです。

ゴッホの絵は農村で働く人などのテーマの共通性を維持しながらも,時に大きく変化します。その中で,やはり魅力があるのは,ゴッホが精神的に病んでいた時期,すなわちアルルからサン=レミ修道院,そして自殺までの期間であったように思われました。やはり精神的に病んでいた時期の作品の方が鬼気に迫るものがあり,見る者を惹き付けます。

余談:ゴッホのコレクションとして,トリトングループ所蔵の絵もありました。あのKARSTADTの倒産手続の際に,営業譲渡先の候補者として名前の挙がったドイツとスウェーデンの投資会社です。さすがにすごいコレクションを所蔵しているものです。




ハンブルク浮世絵コレクション展(太田記念美術館・渋谷区神宮前1丁目)

2010年11月19日 | 美術道楽
地下鉄の明治神宮前の駅の近くにある太田記念美術館で開催中のハンブルク浮世絵美術館展に行きました。
「日独交流150周年」の行事の一環としての開催のようです。

北斎の富嶽三十六景を初め,河鍋暁斎の作品までもあり,ハンブルクにずいぶんとコレクションがあるものだと感心しながら見ました。

この浮世絵を所蔵しているハンブルク美術工芸博物館はあ,ハンブルク中央駅の近くで,昔,行ったことがある記憶があります。確かそのときも日本のものを展示してあり,美術館の人から話しかけられた記憶です。

さて太田記念美術館ですが,地下鉄の明治神宮前の駅からすぐのところにあります。
こんなに若い人たちが大勢いるところのど真ん中に,どちらかといえば年配者向けの美術館があるのには驚きます。
太田記念美術館は最初に入り口を入ってすぐのところで靴をスリッパに履き替えなければならないので,すぐに脱げる靴を履いていかないと自分も大変ですし,次々と来て,帰って行く双方向の客にも迷惑をかけてしまいます(自分も固いヒモの革靴でしたので,履き替えにくく慌ててしまいました。)。




東大寺大仏展(東京国立博物館・台東区上野公園)

2010年11月18日 | 美術道楽
正倉院の宝物が展示される時期(11月2日から11月21日)にあわせて再度,東大寺展に行きました。
蝋染め,墨絵の仏像,桂心などの展示がありました。
しかし,基本的には「宝物」というほど大それたものではなく,あまり感動もしませんでした。基本的には,それ以外の会期に公開中のものを見れば十分のようです。

東京国立博物館内の黄色く色づいた樹木が綺麗でした。



円山応挙展(三井記念美術館・中央区日本橋室町)

2010年11月17日 | 美術道楽
日本橋の三越前駅直結の位置にある三井記念美術館で開催中の円山応挙展に行きました。
京都に住んでおりましたころは日本美術にも関心のあった道楽ねずみも,最近は西洋絵画,しかも現代アートに関心の比重が高まっていますが,さすがに円山応挙という名前を聞きますと,出かけたくなります,

円山応挙の初期の作品から晩年の代表作までを展示しています。

応挙は最初,凸レンズを通して見た姿をもとに,遠近法をことさらに強調して描く眼鏡絵を描くところから,そのキャリアを出発しました。眼鏡絵自体は,オランダから輸入されたものだそうです。その技法から左右対称になった絵もあるようでして,応挙の作品にも金閣寺を描いた左右逆の絵がありました。応挙はまた金比羅宮の作品も残しています。この眼鏡絵の技法は,その後,応挙が飛躍するための基礎となったようです。

そのほか,波濤図,雨竹風竹図屏風,蘭亭曲水図襖,山水図屏風などの作品が展示されています。迫央構図とよばれる,屏風の左隻と右隻との間の中央の空間にあえて何も描かず,巨大な空間を演出するのが応挙の技法ということです

淀川下りをするような視点で,淀川の両岸を川の上下に描き,下の部分は倒立の絵とした「淀川両岸図」も面白かったです。見ている人が,淀川下りを一緒に楽しむことができるような絵です。

そして,最後に三井記念美術館の所蔵する「国宝雪松図屏風」と香住(兵庫県美方郡香美町)にある大乗寺の所蔵する「重要文化財 松に孔雀図襖」が同じ空間で,競演しています。

襖絵につきましては,一つ一つの絵ももちろん素晴らしいのですが,実際に用いられる場所を意識して,本当にうまく演出した絵を描いているようです。どれが奥に置かれ,どれが手前に置かれるか,そして奥の本尊の手前に来るのは何の絵になるのか等々よくよく計算して描かれています。遠近法を学んだ技術が,空間の演出に遺憾なく発揮されています。
やはりこうした襖絵は,実際の寺で見られたらどれだけいいのにと考えてしまいます。

それにしても,所蔵品だけでも三井記念美術館のコレクションはすごいと思います。そもそも,雪松図屏風はそもそも,応挙が三井家のために描いたものだそうです。三井家自体が応挙のパトロンで,代々円山派と深い関係があり,円山派で絵を学んだ三井家の当主(いくつか家があるようですので,宗家の当主かどうかよくわかりませんが。)までいたのだそうですから,三井家が応挙の作品を所蔵しているのは当然といえば当然のことなのですが,その当然であることのすごさに驚きます。
同じく財閥系でも,一代で成り上がった丸の内方面のところとは,歴史の長さも文化の厚みもずいぶんと違うなと実感します。こうした違いが企業のカラーの違いにも連なるのでしょうか,不動産もやはり三井の方がずっとグレードがよさそうだし・・・と最後は財閥系企業の比較からとても俗なことを考えてしまいました。

ドイツの森村泰昌?

2010年11月16日 | 美術道楽
euromaxx情報ですが,ドイツの写真家Josef Fischnallerも森村泰昌のように,有名な絵画をもとに写真を撮影しているということです。
Fischnallerは,ラファエロの「一角獣を抱く貴婦人」(ボルゲーゼ美術館所蔵,日本にも来ました),レオナルドの「モナリザ」などの古典的な絵画をもとに,モデルを使った写真撮影するそうです。
絵画の構図そのものの再現ではなく,そこに一工夫をして演出をするところは,森村と共通ですが,自分ではなくモデルを被写体として写真撮影をすることは森村とは違います。
Fischnallerは,金色の紙,タルト,パスタ,自転車といったものまで小道具に使って演出をするそうです。彼の好きな絵画は,カラヴァッジョの絵ということですが,カラヴァッジョの「聖ヒエロニムス」をもとにした写真の撮影では,骸骨の代わりに銀色にひかりかがやく骸骨の模型,机の代わりに積み上げたファッション雑誌を使用していました。