道楽ねずみ

ドイツに関するものを中心に美術展,オペラ,映画等の趣味の世界を紹介します。

はじまり 美の饗宴(国立新美術館)

2016年02月27日 | 美術道楽

国立新美術館で開催中の「はじまり 美の饗宴」と題する企画展に行きました。

倉敷にある大原美術館のコレクションを展示したものです。

展示の内容は、つとに知られたグレコの《受胎告知》や印象派の絵画にとどまりません。古代エジプトや中国の仏像から日本の民芸品、さらには現代アートまであります。

これぞ、ザ・大原美術館という内容の企画展なのです。

 

私も既に大原美術館には2回行っていますが、ここには日本にあること自体が奇跡ともいわれるグレコの《受胎告知》、モネ《睡蓮》、セガンティーニ《アルプスの真昼》、ホドラー《木を伐る人》、キリコ《ヘクトールとアンドロマケーの別れ》といった著名な作品が収められています。しかし、それだけではなく、民芸品なども分館・東洋館に収められていた記憶です。

要するに今回の企画展は、大原美術館の有名な所蔵品をそのまま、すべてのジャンルから抜き出したような企画展でした。

 

印象に残りましたのは、

エル・グレコ《受胎告知》:いうまでもなく大原随一のコレクションです。

セガンティーニ《アルプスの真昼》

ホドラー《木を伐る人》

ジョルジュ・キリコ《ヘクトールとアンドロマケーの別れ》:受胎告知に次いで大原を代表する作品と個人的には思っています。

フォンタナ《空間概念 期待》

のあたりでしょうか。

このほか、ジャクソン・ポロック、マーク・ロスコ、ジャスパー・ジョーンズ、堂本尚郎といった作品のコレクションまであることには驚きましたし、やなぎみわの傘のおばけのような作品(原美術館での展覧会でも映像作品で見たことがあります)まであるのにはもっと驚きました。

常に新しい作品の収集を怠らない美術館ですし、最近では若手作家に活躍の場を提供しているようです。

 

 


新国立劇場オペラ研修所終了公演・フィガロの結婚(新国立劇場)

2016年02月21日 | オペラ道楽

新国立劇場オペラ研修所の終了公演「フィガロの結婚」にお招きいただきました。

今回は、皆の知っている有名な内容のオペラで、わかりやすいといえばわかりやすいオペラではあります。

私は2月20日の回を見に行ったのですが、歌手の方は、フィガロを除き、ほとんど研修生の人たちの出演です。ただ、マルチェリーナやアントーニオなどの脇役は、OBOGが演じています。マルチェリーナ役の歌手は、特によかったと思います。

研修生の皆さんも、一部危うげな部分もありましたが、うまく歌いきったと思います。

ただ、このオペラはなんといっても演劇的要素の高いオペラなので、伯爵役の歌手などは、ぬか喜びをしたり、怒りだしたりと複雑な演技を要求されて大変です。

こうした要素は、実際の舞台で場数を踏んで、養っていくのでしょう。

 

演出も、縦に平行に並んだ2の扉で空間を区切り、その空間を適宜左右に動かすことをベースにした演出で、シンプルながら効果的な演出をしていました。ウェディングドレスの象徴のような白い布のカーテンも印象的でした。

 

 

 


ボッティチェリ展(東京都美術館)

2016年02月14日 | 美術道楽

東京都美術館で開催中のボッティチェリ展に行きました。

2016年は、日本とイタリアが国交関係を樹立してから 150 周年になりますが、この記念すべき年に開催される企画展はなかなか期待できそうです。

 

ボッティチェリ展という名ではありますが、

第1章 ボッティチェリの時代のフィレンツェ

第2章 フィリッポ・リッピ、ボッティチェリの師

第3章 サンドロ・ボッティチェリ、人そして芸術家

第4章 フィリッピーノ・リッピ、ボッティチェリの弟子からライバルへ

と分かれています。

 

第1章では、工芸品も交えて、その時代が紹介されます。もっとも、最初にウフッツィ美術館にあるボッティチェリの《ラーマ家の東方三博士の礼拝》が展示されています。ここで、ボッティチェリやメディチ家の主要メンバーの描きこまれた有名な絵を見ることができます。また、この第1章の中でヴェロッキオ、ポッライオーロの作品も見ることができます。

 

第2章は、ボッティチェリの師匠のフィリッポ・リッピの作品ですが、あまり作品が多くなく、印象に残るものが少なかったようです。

 

第3章は、いうまでもなく、ボッティチェリの作品群です。ミラノのポルディ・ペッツォーリで見た《聖母子(書物の聖母)》と再会です。ポルディ・ペッツォーリで見たときは、ミラノを歩き回った後、腰かけてゆっくりと時を過ごしながら、悠々と見ましたが、東京ではさすがに人気です。丸紅さんが持っていらっしゃる《美しきシモネッタの肖像》もとても素晴らしいです。絵ではありながら、当時のフィレンツェでも有名な美女だったシモネッタの絵にはほれぼれしてしまいます(メディチ家のジュリアーノにとってのミューズでもあったということです。)。フィレンツェのパラッティーナ美術館所蔵の有名な《美しきシモネッタ》も、久しぶりに見ましたが、こちらも素晴らしいです。このほか、フィレンツェのオニサンティ教会にある《書斎の聖アウグスティヌス》も、明るさの中に何とも言えない厳粛な雰囲気があり、とても好きです。

《アペレスの誹謗》など、サヴォナローラ以降の時代の作品の作風は好きではありませんが、やはりとても関心をひきます。

 

第4章は、フィリッポ・リッピの子(ということは、リッピが駆け落ちした相手の元修道女の子でもあります。)で、ボッティチェリの弟子でもあった、フィリッピーノ・リッピの作品です。

明るい色彩、草花の描写など、ボッティチェリから得た技術を着実に駆使しながらも、背後の景色等にもずいぶんと工夫し、そこに複雑な空間を演出するなどなかなかいい作品です。ボッティチェリの作品のまねではなく、進化させているという印象を受けました。《背聖母子、洗礼者ヨハネと天使たち》(コルシーニ家の円形画)などは、特に印象に残りました。その、フィリッピーノですら、晩年のサヴォナローラ以降の時代のものになると、ボロボロで乞食のようなマグダラのマリアや洗礼者ヨハネの絵もあり、見ていて驚きました。

やはりサヴォナローラの影響を受けた後の作品は、皆、いただけません。

 

とても素晴らしい企画展でした。

もちろんボッティチェリもよいのですが、フィリッピーノ・リッピの作品もとても印象に残りました。

今まで、BerlinのGemäldegalerie等に行っても、フィリッポ・リッピの作品は見ても、フィリッピーノの作品はあまり印象に残っていなかったのでしたが、今回フィリッピーノの作品の良さを発見することができました。

 

 

 

上野公園では、もうカンザクラ?が咲いていました。

春は近づいてきています。


レオナルド・ダ・ヴィンチ―天才の挑戦(江戸東京博物館)

2016年02月13日 | 美術道楽

江戸東京博物館で開催中の「レオナルド・ダ・ヴィンチ―天才の挑戦」展を見に行きました。

 

「芸術家列伝」で有名なジョルジョ・ヴァザーリの下絵による版画のレオナルドの肖像から展示が始まり、最初はレオナルドやフランソワ1世の肖像、レオナルドの手稿などが展示されております。

そして、今回の企画展のメインの作品であるレオナルドの《糸巻きの聖母》の絵画やレオナルドの弟子、追随者の作品が展示されています。

《糸巻きの聖母》は、普段はエディンバラのスコットランド・ナショナル・ギャラリーに寄託展示されているということです。十字架を連想させる糸巻きを持った幼子イエスの色彩が思っていたよりも明るいことと背後に描かれた風景画が印象的でしたが、描きこまれている岩の断面は地質学的にも正確ということです。こうしたところが、レオナルドの面目躍如というところなのでしょう。

レオナルド以後の作品も、レオナルドの絵を手本にした《岩窟の聖母》、《洗礼者ヨハネ》、《聖母子と聖アンナ》など興味深く見ました。

これらはいずれもレオナルドの完成した代表作からインスピレーションを受けた作品です。

しかし、レオナルドは、遅筆で未完成のものも多いので、レオナルドが完成させずに放置してしてしまった下絵なども、弟子たちにとってはきっと大いにいい手本になったことでしょう。ジャンピエトリーノの《悔悛するマグダラのマリア》ほかの作品は、とても印象に残りました。


若林奮 飛葉と振動(府中市美術館)

2016年02月07日 | 美術道楽

府中市美術館で開催中の「若林奮 飛葉と振動」と題する企画展に行きました。

 

 

 若林奮は、1960年代に鉄を直接刻み、溶接する作品でデビューをしたということです。

府中市美術館の入り口の前には、若林の作品《地下のデイシー》(※ デイシーはひなぎく)がいつも展示されているところであります(といいますか、地下に埋め込まれています。)。

 

今回は、他のデイシー作品として、鉄製の大型作品《Daisy IV》などが別に展示されていました。

今回の企画展のタイトルにもなっている《飛葉と振動》という作品も味のある作品でした。

このほか、犬をテーマにした作品も多く、《泳ぐ犬》、《中に犬 飛び方》、《犬から出る水蒸気》、《境界の犬》、《自分の方に向かってくる犬》など興味深く見ました。

若林は、庭の制作も手掛けていたようで、軽井沢のセゾン美術館(当時は高輪美術館)も、若林の制作によるものということです。軽井沢に行くと、必ず訪れるあの美術館の庭が若林の手によるものとは知りませんでした。

 

ただ、今回の企画展、いささか難解です。作品と解説が離れた場所にあるのでわかりにくいですし、解説の内容も難解です。

若林特有の概念である「振動尺」なども、やはり理解することができたとはいえません。HPでみると、どうも府中市美術館の前に開催された神奈川県立近代美術館葉山館における企画展の際の解説の方がわかりやすく書いてあるので、こちらをよく読んで復習しておきたいと思います。

 


パリ・リトグラフ工房idemから(東京ステーションギャラリー)

2016年02月04日 | 美術道楽

東京ステーションギャラリーで開催中の「パリ・リトグラフ工房idemから」と題する企画展に行きました。

まずは企画の趣旨をHPからそのまま引用します。

(引用はじめ)リトグラフは19世紀から20世紀初頭にかけてフランスで最も花開いた石版を主とした版画の技術です。その後、ピカソやマティス、シャガールといった芸術家が1940年代半ばから70年代にかけて数々の名作を生みだしたことで再び脚光を浴びました。こうした100年以上にわたるリトグラフの歴史を背景に、モンパルナスの地でその技術と創作の伝統を受け継ぎ、1990年代からアーティストとの協働を積極的に行っているのがリトグラフ工房「Idem Paris(イデム・パリ)」です。 最近では、JR、ジャン=ミシェル・アルベロラ、キャロル・ベンザケンなどのフランスのアーティストをはじめ、アメリカの映画監督としても知られるデヴィッド・リンチらがこの工房の磁力に引き寄せられ、また、やなぎみわが今年ここで初めてのリトグラフ制作を行っています。本展はこれらアーティスト20名がIdemで制作した約130点のリトグラフで構成されます。

また本展は、作家・原田マハの最新の小説『ロマンシエ』(仏語で“小説家”の意)と連動するもので、小説は、日本からパリに渡った主人公がIdemを通じて様々な人に出会い、ここで制作された作品によって日本で展覧会が開催されるまでを描いています。最後は小説から飛び出して、読者も展覧会を実際に体験することができるという本邦初といってもいいユニークなアイディアが盛り込まれているのです。(引用終わり)

 

正直なところ、私は原田マハさんの小説は読んだこともありませんしい、関心もないのですが、現代アートのリトグラフということで行きました。

様々な人の作品がありましたが、やなぎみわもリトグラフを製作するのかと驚きました。グザヴィエ・ヴェイヤンの名前はどこかで聞いたことがあったので、その作品も興味深く見ました。

 


フォスター+パートナーズ展(森美術館)

2016年02月03日 | 美術道楽

六本木の森美術館で開催中のフォスター+パートナーズ展に行きました。

フォスター+パートナーズは、世界45か国で300ものプロジェクトを遂行した国際的な建築設計組織ということです。

建築のことはよくはわかりませんが、自分にとってなじみのある建物の模型もいくつかありました。

 

ドイツの国会議事堂Reichstag

統一後にガラス張りドームを設置して、本格的に修復しようとしたところ、ソ連兵の落書きなども出てきたそうです。

 

 

 

ベルリン自由大学

ベルリンに居住していた際に出入りしていましたが、こんなに新しい建物になったとは知りませんでした。

図書館もずいぶん変わったようです。

 

 

ドレスデン中央駅

ホームの高低差が印象的です。

 

レーンバッハハウス

改築後新しい建物には訪れていません。

昔は邸宅だけの美術館だったのに、こんな形になっているのが驚きです。

いつか行きたいです。

 

 

ドイツではありませんが、北京の空港

ここも利用しました。

 

同時開催で、森美術館の中で村上隆の五百羅漢図展を開催していました。

これは、現代アート大好きな私には珍しく生理的に受け付けませんでした(というか村上隆の作品は、基本的に好きになれません。)。

作品はいいとは思わないのですが、美術市場の動向を的確に読み、どのような作品が高く売れるのかということをかぎ分けることにことのほか長けた村上隆の才能には感心してしまいます(皮肉ではなく本当に感心します。)。これだけの才能があれば、きっと、ビジネスの世界に進んだとしても、名をはせたことでしょう。

 


サイモン・フジワラ・ホワイトデー(東京オペラシティアートギャラリー)

2016年02月02日 | 美術道楽

東京オペラシティで開催中のサイモン・フジワラ・ホワイトデーなる摩訶不思議なタイトルの企画展の内覧会に参加しました。

サイモン・フジワラは、人名であり、名前それ自体から明らかなように日本人の血の混じったハーフです。

 

サイモン・フジワラの作品展というのはわかるのですが、それでは「ホワイトデー」って何ということになります。

ヴァレンタインデーは、本来、恋人たちの愛の誓いの日なのですが、日本では販売促進を企む製菓会社の陰謀により、なぜか女性が男性にチョコを贈る日という誠に奇妙な風習が作為的に作り上げられました。その風習は、さらに愛とは何ら関係のない赤の他人への義理チョコなる世にも奇妙な風習にまで広がり、挙句の果ては、ヴァレンタインのお返しなるホワイトデーなる世界中どこにもないおよそ理解不能な因習にまで極まることになりました。

サイモン・フジワラは、ホワイトデーのような不思議な「システム」に焦点を当て、そのシステムの背後の理由、経緯、思惑を明らかにするのだそうです。つまり、思惑を含んだ社会のシステムの代名詞としてホワイトデーが選ばれたようです。

 聞いていると分かったような気にはなるのですが、実は煙に巻かれているだけで、理解不能なタイトルのようです。

そのことは気にしないとしても、不思議な企画展です。

 

企画展の中に絵画もありますが、それはサイモン・フジワラの描いた作品ではありません。たとえば、パトリック・ヘロンの描いた抽象画の後ろにモニターを設置して、そこにサイモンと少年の会話の場面を映し出しているといった作品です。また、この企画のキュレーターで解説をしてくださった野村さんが子供の時に描いた絵とその絵をもとに野村さんのお母さんが製作したぬいぐるみを合わせて展示して作品にしているといったものもあります。

サイモン自身はアイデアを提供して、展示物を並べているのであって、絵画を描いたり、彫刻を制作しているのではないというところに不思議な点があります。

絵を描いても、彫刻を作ってもダメですが、人と違うアイデアだけは次々と浮かんでくる(というか完全に人と違う発想しかしない変鼠です。)ねずみのFrederickも、このようなタイプの作品なら製作することができるかと思いました。

 

BerlinのHohenzollernplatzの駅にあった鷲

 

ドイツの軍事学校にあった飾り板(鷲がDer Dritte Reichの象徴として抉り取られている。)

 

これらの2つの鷲は、須田国太郎の≪松鷲≫とセットで作品になっていました。

 

レベッカ

兵馬俑のように見えます。実際、兵馬俑と無関係ではない作品です。