今年は、美術展の内容をほとんど紹介しないまま1年が過ぎてしまいました。
ここで美術展のランキングを書いても、以前の記事を引用することもできませんし、かといって改めて全部ここで紹介する余裕もないので、結論だけの紹介になってしまいますが、恒例の行事なので一応書いておこうかと思います。
もっとも、毎年の弁解ですが、私のごとき者がランキングを付けるのはとてもおこがましい限りです。どれだけ自分のセンスにあったかという、完全は主観的評価にとどまります。
1位 カラヴァッジョ展(国立西洋美術館)
なんといってもカラヴァッジョです。去年はグエルチーノ展を見てからイタリアに行きたくなりましたが、今年はカラヴァッジョに焦点を合わせて夏にローマ、ナポリと旅をしました。
《女占い師》は、昨年カピトリーニ美術館に行った際には、それほどいいと思わなかったのですが、日本で改めて見てよいと思いました。ちなみにこの絵は、日本から戻るとそのままマドリッドのティッセン=ボルネミッサ美術館の「カラヴァッジョと北方の画家たち」展に貸し出され、ローマでの再会は果たせませんでした。
閑話休題
そのほか、《バッカス》《果物籠を持つ少年》《洗礼者ヨハネ》《エマオの晩餐》などの有名な作品もあれば、新たに発見された《法悦のマグダラのマリア》もあり、充実度一番の企画展でした。
2位 クラーナッハ展(国立西洋美術館)
多作の作家のためか、ワイマールでもベルリンでもフランクフルトでもドイツでどこにでもある作品というイメージで、あまり有難味を感じない作家でした。でも、今回の企画展に伴い、秋山聰先生や学芸員の方の講演を聞き、少し見方が変わりました。ヴィッテンベルクに住み、ルターとも親しかったクラナッハが、ルターの肖像画を描きつつも、宗教改革により伝統的な宗教画の活躍の場が少なくなり、エロさを感じさせる絵に活路を見出し、しかも、それを狩野派のようにパターン化して量産することができるようにしてきたことなど知りました。ドイツにいたときは、どうでもいい画家と思っていたのに、日本で再発見するという貴重な機会がありました。
3位 ヴェネチア・ルネサンスの巨匠たち展(国立新美術館)
ティッツィアーノの《受胎告知》の祭壇画がそのまま来るなど、とてもいい企画展でした。
4位 黄金のアフガン展(東京国立博物館)
惜しくもベスト3から漏れてしまいましたが、とてもよい企画です。アフガンが西洋、インド、東方の各文明の十字路であることがわかる作品が多々展示されていました。ティリヤ・テペの遺跡には驚嘆するばかりでした。この展覧会をブログで紹介することができなかったことはかえすがえす残念です。
5位 ボッティチェリ展(東京都美術館)
ボッティチェリ作品だけではなく、フィリッポ・リッピ、フィリッピーノ・リッピ親子の作品も紹介されて、興味深く見ました。ボッティチェリの作品は、サボナローラの時代の以降は魅力を失いますが、フィリピーノ・リッピの作品は明るさを失わず、工夫もしてあり、とてもいいと思いました。
6位 デトロイト美術館展(上野の森美術館)
デトロイト美術館のコレクションから、セレクトされて展示されているのですが、道楽ねずみのお気に入りはいうまでもなく、ドイツ表現主義の作品です。カンディンスキー、ノルデ、キルヒナーなど有名な作家の作品を日本で見られて感激です。来年もまだ見られます。
7位 鈴木其一展(サントリー美術館)
朝顔の作品が素晴らしいと思いました。
8位 村上隆のスーパーフラット・コレクション(横浜美術館)
アンゼルム・キーファーの作品を私蔵しているということ自体で驚嘆しました。ほとんどキーファー作品を見るために出かけたのですが、幅広いコレクションに圧倒されました。
9位 「ジョルジョ・モランティ展」(東京ステーションギャラリー)
ひたすら瓶や水差しの絵を描いた画家(正確にいえばそのような画家として演じ続けた画家)の作品です。地味ですが、妙なこだわりをもっているように演出されています。
10位 ポンピドゥーセンター展(東京都美術館展)
各年を代表する作品を一つずつ選び展示するという手法も興味深く見ました。ただし、1945年のコーナーには何も展示されておらず、ただEdith PiafのLa Vie en roseの歌のみが流れていました。ナチが合法的に政権をとった1933年のコーナーには、ユダヤ人で後に強制収容所に送られるオットー・フロイントリッヒの作品が展示されていたのが印象的でした。祖国は、彼にとってfreundlich(親しみやすい)ものではなかったのでしょう。
ピカソ、マティス、デュフィなどの作品は、単体としても十分に素晴らしいものでしたし、その年の世相をよく表した作品も多々ありました。
(番外編)
・ 聖なるもの、俗なるものメッケネムとドイツ初期銅版画展(国立西洋美術館)
・ ピエール・アレシンスキー展(Bunkamuraザ・ミュージアム):同じ作風にこだわらず、いろいろなものから影響を受け、次々と作風を変えるアレシンスキーの作品はとても新鮮で魅力的です。上位にランキングしてもおかしくないほどよい企画展と思いましたが、自分として咀嚼しきれないまま、番外編になってしまいました。
・ レオナルド・ダヴィンチー天才の挑戦展(江戸東京博物館)
・藤田嗣治展(府中市美術館)
(純然たる個人的番外編)
・京都大徳寺聚光院の千住博の襖絵
・今後、紹介する予定のローマ、ナポリの美術館
今日12月31日は、毎年のとおり、早稲田の穴八幡宮に詣でで、夏目坂の中村屋で年越しそばを食べました。
皆様、よいお年をお迎えください。