(RELIEF 813/1981年リリース、LP/モノラル)
フルトヴェングラーの数々の録音は色々と物議をかもすものも少なくない。 写真のLP、1941年11月30日のコンサート・ライヴと云われるベルリン・フィルとのドヴォルザーク/交響曲第9番ホ短調「新世界から」もその一つである。 このLPが登場する以前はフルトヴェングラーのドヴォルザーク交響曲録音はこの「新世界から」も含め存在しないとされていた。事実、彼は実演でもほとんどドヴォルザークの作品を取り上げていないようだ。 ただこのLPジャケットに記載されている1941年11月30日は確かにベルリン・フィルとの定期公演での演奏記録がある。因みにコンサートは同一プログラムで11月29日・30日・12月1日の3日間行われプログラムの最後にこの「新世界」が演奏されている。(フリトヴェングラー&ベルリン・フィル演奏記録/1922-1954、F.A.Brockhaus Wiesbaden, 1965)
さて問題のこのLPレコードだが、1981年に突如としてリヒテンシュタインの「RELIEF(レリーフ)」というレーベルからリリースされた。当時、フルトヴェングラー・ファンはもちろんのこと多くのクラシック音楽愛好家たちを驚かせたことは間違いない。音質も当時の録音としてはまずまずいったところ。しかし、不思議なことにライヴ録音なのに会場の聴衆のノイズが聴き取れない。また演奏後の拍手が収録されてないため本当にライヴ録音なのか判別しにくいことも事実である。
果たしてこの演奏はフルトヴェングラーの指揮によるものなのか? 演奏時間はなんと36分強と全楽章を快速テンポで進めている。第2楽章の「ラルゴ」も11分6秒と速く味気ない。 やはりこれはフルトヴェングラーの指揮ではなく別人によるものではないか等々の説が飛び交った。それは現在も「謎」のままである。改めてフルトヴェングラーはミステリアスな指揮者と頷ける。
尚、この演奏、国内盤でもこのLPリリース2年後の1983年に当時の「日本フォノグラム」より発売されている。(LP/27PC84)