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私のレコード・ライブラリーから

私のレコード/CDコレクション紹介

グレン・グルード編曲ピアノ版ーワーグナー

2009-07-25 13:23:25 | 器楽曲
 今週はリスト編曲によるピアノ版管弦楽作品のコレクションを中心に紹介してきたが今日は「孤高の鬼才」とも呼ばれたカナダ、トロント出身のピアニスト、グレン・グールド(Gulenn Gould/1932~1982)自身がピアノに編曲したワーグナーの作品3曲を集めた写真のLPについてふれてみたい。
 グレン・グールドはご承知のように今から四半世紀以上も前に50歳にして惜しまれこの世を去った天才にしてちょと奇人のピアニストであった。筆者が学生時代にはリスト編曲のベートーヴェンの交響曲第5番を演奏したLPがリリースされ話題を呼びよく聴いたものである。その彼が1973年に自らの編曲によるピアノによるワーグナーを録音した。曲目は楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲、楽劇「神々の黄昏」から「夜明けとジークフリートのラインへの旅」、「ジーククフリート牧歌」の3曲である。賛否両論はあろうが私個人的には天才ピアニスト、グールドの感性がにじみ出た鮮やかな演奏である。特に「夜明けとジークフリートのラインへの旅」ではグールドのピアノによる色彩感あふれる音作りが素晴らしい。
 また彼は最晩年の1982年7月(亡くなる約3カ月前)に自身の指揮でトロント交響楽団の13名のメンバーで構成された室内管弦楽で「ジークフリート牧歌」を録音していた。おそらく彼が指揮した唯一のもので最期の録音ではないかと思う。まさに彼の「白鳥の歌」となった。



ピアノ版 ベルリオーズ「イタリアのハロルド」

2009-07-24 01:29:08 | 器楽曲
 昨日の続きになるが今日はピアノ版のベルリオーズ「イタリアのハロルド」のCDを紹介したい。リストは「幻想交響曲」と共にヴィオラ付き交響曲「イタリアのハロルド」もヴィオラ・ソロ・パートをそのまま残しピアノ版の編曲をおこなっている。筆者のお気に入りの1枚は今から15年くらい昔のことになると思うがイギリスのレーベル、「ハイペリオン(hyperion)」からリリースされた写真のCDである。(Hyperion/CDA66683)この演奏はピアノをオーストラリア、メルボルン出身のレスリー・ハワード(Leslie Howard),ヴィオラ・パートをパウル・コレッティ(Paul Coletti)によるものである。
 特にピアノのハワードはリストのピアノ音楽作品全集を1985年10月から1998年12月の足掛け14年の歳月を経て同レーベルに90枚以上に登るCDに録音した人で有名である。またその中には世界初録音のものも多く含まれているそうである。
 さて話を本題に戻しこの「イタリアのハロルド」の録音は上記作品全集録音のさなかの1992年10月にロンドンで行われている。独奏ヴィオラを担当しているコレッティの詳細な経歴を筆者はよく知らないがこのCDを聴く限りなかなか素晴らしいテクニックを持った人だと思う。ハワードのピアノに巧く息の合った演奏をしている。原曲の管弦楽版との聞き比べも大変興味深く編曲者のリストの名人芸がここにも如実に表れている。

ピアノ版 ベルリオーズ「幻想交響曲」

2009-07-23 01:04:44 | 器楽曲
 昨日に続いて今日はベルリオーズ「幻想交響曲」のピアノ版の世界初録音のLP(写真)を紹介したいと思う。このレコードは日本では1978年に当時の「CBSソニー」からレコード番号25AC337としてリリースされた。原盤はイタリア・リコリディである。録音年月は不明だが1976年前後と推測される。
 ピアノを弾いているはブルーノ・メッツェナ(Bruno Mezzena)と言う人でレコードの解説によれば15歳でヴェネツィァのベネデット・マルチェロ音楽院を首席で卒業しさらに1962年にボルザーノのモンテヴェルディ音楽院の作曲科を卒業しベネデッティ=ミケランジェリらに師事し評価を得たピアニストである。またこのLPが彼の日本でのデビュー盤でもあった。
 演奏はこのピアノの魔術師とも言われたリスト編曲ピアノ版の超絶技巧による「幻想交響曲」を無難に弾きこなしているところは見事なものだ。大管弦楽で聴く原曲とはまた違った味わいを感じさせる。その後、ロシアの名ピアニスト、ニコライ・ペトロフが弾くCD(TALENTS of RUSSIA/RCD-13002-チェコ原盤1987年録音)等数種の同曲のピアノ版のCDもリリースされている。
 編曲者のリストはこのほかに「イタリアのハロルド」のピアノ版も完成させておりこれについてはまた次回にふれてみたい。

ロジャー・ウッドワードのベートーヴェン・ピアノ版「エロイカ」

2009-07-22 08:20:24 | 器楽曲
 ロジャー・ウッドワード(Roger Woodward/1942~ )はオーストラリア、シドニー出身の著名な世界的ピアニストだが日本でのレコード・CDの発売が少ない為か我が国での彼の知名度はそれほど高くない。残念である。筆者が彼の生の演奏を初めて聴いたことは以前のブログでも紹介したことがあるが1976年3月8日、パリの「テアトル・ド・ラ・ヴィル(Théâtre de la ville)で開催されたフランス国立管弦楽団(ネルロ・サンティ指揮)の演奏会であた。演奏曲目はブラームス、ピアノ協奏曲第1番ニ短調作品15であった。因みに彼はこの作品をクルト・マズアとニュー・フィルハーモニア管弦楽団でRVCにレコーディングしている。その2年後、彼が弾くベートーヴェンのピアノ版(リスト編曲)交響曲第3番変ホ長調作品55「エロイカ」の世界初録音のLP(写真RVC-2206)を聴き彼の驚きのピアノ技巧に感動しファンの一人になってしまった。第1楽章の提示部の反復も実行し全般的にゆっくりとしたテンポで彼はじっくりとこの長大な作品に臨んでいる。リストの編曲も素晴らしいが彼のこの作品に対する力の入れようが伝わってくる。全曲で67分余りを要した聴き応えのある名演である。
 これも何かの縁かもわからないがその7年後の1985年「つくば研究学園都市」で開催された「国際科学技術博覧会ー通称つくば科学万博」のオーストラリア催事で彼の弾く武満 徹ほかの小品に接することができた。彼のレパートリーはバッハから武満まで幅が広く特にラフマニノフの演奏も高い評価を受けている。
 余談ながら写真のサインは彼に「科学万博」での演奏終了後に入れてもらったものである。この時しばしの時間であったが彼と話ができ演奏に対する真摯な語り口が今でも印象に残っている。


「米国ピアノ界のファースト・レディ」と呼ばれたルース・ラレードのスクリャービンのピアノ・ソナタ全集

2009-04-17 17:47:25 | 器楽曲
 今日は「米国ピアノ界のファースト・レディ」と呼ばれた美人ピアニスト、ルース・ラレード(Ruth Laredo/1937~2005)のスクリャービン(Skryabin/1872~1915)のピアノ・ソナタ全集を紹介したい。彼女はスクリャービンのほかラフマニノフ等、ロシアの作曲家の演奏を得意としていた。この1970年にニューヨークで録音されたスクリャービンのピアノソナタ全集・小品集(写真)は彼女の誉れの高い名盤の一つになっている.スクリャービンの作品は5曲の交響曲、1曲のピアノ協奏曲、他に数曲の管弦楽曲を除けばほとんどがピアノ曲で占められている。やはり彼自身ピアニストであったことからこれは当然のことと言えるかも知れない。
 彼は番号つきピアノ・ソナタを10曲書いているがショパンやリストの作品を敬愛していたためかその作風にもその影響が多分にうかがえる。特に初期第4番までのソナタにはそれが強く表れている。第5番以降のソナタは単一楽章となり彼の個性が一段と強く表れた作品と変化する。第7番「白ミサ」(1911年)からは彼の「神秘主義」世界に没入する。副題の「白ミサ」とは「神聖な楽想」からつけられた。また第9番「黒ミサ」(1913年)の「黒」は悪魔的を意味するらしい。
 ルース・ラレードの演奏は彼女の繊細な感性が実にうまくスクリャービンのピアノの世界に溶け込んでいる。
 



シューマン:ピアノ・ソナタ第1番嬰ヘ短調作品11

2009-03-17 21:32:54 | 器楽曲
 ロベルト・シューマン(1810~1856)は未完の2作品を除くと3曲のピアノ・ソナタを書いている。第1番は1832年から35年にかけて作曲された最初のソナタ作品(4楽章構成)の大作と言っていいだろう。第1楽章は1832年作の「アレグロ・ファンダンゴ」を改作転用したことでも知られている。「ファンダンゴ」とはスペイン・アンダルシア地方の舞曲リズムのことらしい。モーツアルトやベートーヴェンのピアノ・ソナタ作品のように人気度の点では今一かも知れないが聴き込んでいくうちに不思議な魅力を感じる作品である。
 私はマウリツィオ・ポリーニが30歳前後に録音した写真のLPを愛聴している。若き日のポリーニがこのシューマンの技巧的作品を実に巧く弾いている。特に第1楽章は聴き応え充分だ。第2楽章Ariaのメロディックな弾きぶりも見事なものである。
 作品は後に(1840年)結婚するクララ・ヴィークに献呈されている。
 


ミシェル・ベロフのドビュッシー「前奏曲集」第1巻・第2巻を聴く

2009-01-26 22:00:05 | 器楽曲
 今日はドビュッシー(Claude Debussy/1882~1918)の印象主義を地でいく「前奏曲集第1巻・第2巻」全24曲をミシェル・ベロフ(Michel Béroff)若き日の録音(1970年/EMI盤)で聴いてみた。さすがに1967年弱冠17歳でメシアン・コンクールで優勝経歴の持主だけあり魅力ある演奏だ。これだけ色彩感豊かな音色でかもし出すドビュッシーの世界はすばらしい。第1巻では第7曲「西風がみたもの(Ce qu'a vu le vent d'ouest)」・第8曲有名な「亜麻色の髪の乙女(La fille aux cheveux de lin)・第10曲幻想的な「沈める寺(La cathédrale engloutie」、第2巻では第2曲「枯葉(Feuilles mortes)」・第10曲異国情緒もにわかに感じる「エジプトの壷(Canope)」・第12曲パリ祭の花火を描写したという「花火(Feux d'artfice)」などは特に彼の鋭い感性がうかがえる演奏である。この作品の「不滅の名盤」の一つにこれからも数えられるであろう。
 尚、彼は1995年ー96年にこの「前奏曲集」を再録音しているが私は今回とりあげた彼のドビュッシーのレコード・デビューとも言えるこのEMI盤に愛着を一段と強く感じている。