教育のヒント by 本間勇人

身近な葛藤から世界の紛争まで、問題解決する創造的才能者が生まれる学びを探して

選択嗜好性【12】 横浜雙葉

2006-04-20 09:34:00 | 学校選択
◆2004年データ 横浜雙葉
鎌倉女学院②・鎌倉女学院①・横浜共立B・田園調布学園②・田園調布学園③・カリタス女子③

◆2005年データ 横浜雙葉
鎌倉女学院②・鎌倉女学院①・洗足学園③・田園調布学園②・湘南白百合学園・カリタス女子③

◆フェリス同様、洗足学園③の台頭は目覚ましい。言うまでもなく慶應中等部の入試3日シフトの影響。洗足ブランドに一挙に集中する動きが、横浜雙葉の併願の動きで見えてくる。横浜雙葉自体の嗜好性の変化はないが、洗足学園には起きているということだ。これは洗足学園の併願上位を見ていても実は気づかない。いまのところ水面下での動きというところか。

選択嗜好性の変化【11】 フェリス女学院

2006-04-19 22:19:58 | 学校選択
◆2004年データ フェリス女学院
鎌倉女学院②・横浜共立B・慶應湘南藤沢・頌栄②・鎌倉女学院③・鴎友学園女子③

◆2005年データ フェリス女学院
鎌倉女学院②・横浜共立B・洗足学園③・頌栄②・鎌倉女学院①・慶應湘南藤沢

◆フェリスの選択嗜好性に変わりはないが、洗足学園の台頭は、洗足学園の教育力アップを表している。洗足学園のブランド力を、フェリスの併願校の分析から改めて発見できる。

千葉エリアの保護者会で

2006-04-16 20:09:15 | 学校選択
◆千葉エリア2箇所で、中学受験生対象の保護者会が開催された。私もそこで話をした。大テーマは東京エリアの私立中高一貫校の学校情報。私は(1)小6の夏休み前までに、学校選択を完了しておくことは、9月以降の受験生の学力アップに大きな影響を与える。(2)学校選択の前に学校探しを。
という2点について話した。

◆基本骨子は、「ホンマノオト060302」「ホンマノオト060329」「ホンマノオト060414」によった。

◆この方向性に、具体的にいろいろな学校の話を結びつけた。偏差値的にはそれほど高くないが、これから化けるであろう学校について語った。口頭でしか伝えられないような話題もあり、ある程度役に立ったのではないかと思っているが、合わせて170人ぐらいの保護者の方がいらしていたので、すべての要望に応じることができなかった。6年生の受験生を持っている保護者ということもあるし、年々父親の参加率も高くなっているので、要求値も高い。私立中学に対する真摯な情報収集の姿勢は、これからの教育に対する思いでもある。大いに歓迎である。

◆ただ、保護者会もリアルスペースとサイバースペースの両方を活用する時代がいよいよやってきたのではないかと痛感した。いろいろなニーズを持っている参加者が一堂に会しているところに、90分前後で、すべて満足できる情報を流すことは物理的に不可能だからだ。

◆「ホンマノオト」や「ホンマのブログ:教育のヒント」がその補足として役立ってくれれば幸いだ。

個人とチームのセルフイメージ

2006-04-15 23:22:54 | 学習プログラム
◆日経産業新聞(2006年4月13日)、エミネクロス代表辻秀一さんの「一流スポーツ選手から学ぶ」という論考が掲載されている。イチロー選手、荒川静香選手、高橋尚子選手は、セルフイメージを大きく安定した状態に持っていくことにたけているという。

◆辻さんによると、「自分」というのは「思考」「言葉」「表情」「態度」の4つの要素から成るという。この4要素をポジティブに持っていくと、セルフイメージを大きくできるようだ。

◆心が乱れていれば実力が発揮できない。セルフイメージを大きくして、心を安定させれば、能力を十分発揮していけるという。

◆セルフイメージを大きくするため、①思考:過去、未来ではなく現在すべきことを見る。②言葉:「お疲れさま」は「ごきげんよう」、「ご苦労さま」は「ありがとう」などポジティブに受け取れる言葉を使う。③表情:みけんのしわを取り、できるだけ笑顔で。④態度:肩を落とさず、明るく胸を張って。

◆チームのセルフイメージとは、個人が最大限セルフイメージを大きくできる状態を作るということ。①理解の姿勢:自分が話すよりも相手の話を聞く。②見直す姿勢:結果より変化を重視。③愛する姿勢:期待するより応援する。④行動する姿勢:話を聞かせるより、やってみせる。⑤楽しませる姿勢:結果より過程を重視。⑥人を巻き込む姿勢:上司から率先してあいさつ。

◆高橋尚子選手が沿道の応援に感謝しながら走る。イチロー選手は、過去や未来より現在すべきことに集中している。これはセルフイメージを高めることになるという。

◆感謝の気持ちと今に集中する思考、これは創造的才能を開発する大きな要素でもある。

英語必修化反対は日本人のアイデンティティ?

2006-04-15 20:29:09 | パラダイム
◆4月6日「ホンマノオト」本シリーズで「戦略的に英語教育を小学校からやるのは大いに結構。しかし内生的成長の仕掛けとしての哲学がないまま実行されれば、結局英語でビジネス会議や国際会議でリーダーシップを発揮できる人材を輩出できない。となれば英語教育は経済と結びつかない。教育と経済を結びつけるのは結局哲学。これはたいへん困った。何せ日本人は無思想が大好き。これが固有の日本人のアイデンティティ。戦略的に教育政策を実施していくと、ここに行き着くわけだから、なんともしようがない。も解消されているはずではあるが」と書いた。

◆ 石原慎太郎知事は6日の首都大学東京の入学式で、「中央教育審議会の専門部会が小学校高学年での英語の必修化を提言したことに関連し、『日本で一番バカな役所は文部(科学)省。あれはまったくナンセンスだ』と批判したという(毎日新聞4月7日朝刊)。

◆ その理由は同紙によると「日本人がものごとを考えるのは、やっぱり日本語で考えざるをえない。日本語のもたらす語感、日本人独特の感性、情緒を皆さんが持たなければいけない」ということらしいが、日本人のアイデンティティを英語で書いたのは新渡戸稲造や内村鑑三ではなかったか。英文学を研究して豊かな日本語で小説を書いたのは夏目漱石ではなかったか。アイルランド人でありながら日本文化を日本人以上に理解し、文学に仕上げたのは小泉八雲ではなかったか。八雲は美しい日本語を創りあげた上田敏や小川未明に多大な影響も与えたのではなかったのか。

◆ 英語を学ぶと国語力が低下するなどというのは、何も考えていないから出てくる虚言である。しかし、この考えないというのは日本人のアイデンティティ。石原知事は日本人のアイデンティティをちゃんと持っているということを言いたかったのであろうか。

◆ それにしてもいつものパターン通り、考えない教師がまたまたあらわれた。毎日新聞(4月15日)によると、中央教育審議会の外国語専門部会が示した「小学校高学年で英語を必修にする」という方針に対し、「現場の教師は『発音に自信がない』と尻込みし、自治体教委は『親のプレッシャーが強まる』と不安を募らせ」ているという。

◆ 一方、教育産業は大歓迎。「最大手NOVA(大阪市中央区)は99年に小学生の教室を全国展開し、2000年には外国人指導助手の派遣も始め」ていて、「広報担当者は『英語の必修化でマーケットは確実に広がる』と期待する」ということのようだ。語学スクールの市場規模は04年度約3600億円らしい。日本における教育と経済の相関は、かくしてここでも乖離している。

◆ それにしても正しい英語の発音とは何だろう。「フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』」によれば、「英語を第一言語としている人の数は3億4千万人程度にすぎず、言語人口第1位の北方中国語(約9億人)には遠く及ばない。しかし英米による覇権により、英語が最有力の言語となり、第二言語 (English as a Second Language; ESL) として用いる人口は約6億人に上る。外国語 (English as a Foreign Language; EFL) として英語を学習・使用する人も多い。そのため、世界各国でイギリス方言・アメリカ方言などの英語の枠組みを超えた『新英語』が出現するようになった」とある。

◆ 何が正しい英語の発音なのか、実際のところはわからないということだろう。かりにイギリス英語が正しいとしても、英語を話す人口の17%弱しか活用されていない。正しい英語の発音を話すことなど、無意味である。

◆ プレッシャーとはこれまた何だろう。閉鎖された島国組織の中でこそ、抑圧が生まれる。外部の空気を入れるのにこしたことはないはず。外国の人々とコミュニケーションが取れた方が逆にプレッシャーは解消される。

◆ 結局またもや市場の原理に英語教育は救われることになるのだろう。市場の条件の1つはオープンであること。それぞれの市場の価値尺度の差異が利益を生む。利益はイノベーションに投資する。再び市場は活性化するというわけだ。金融教育をやっている割には、市場の原理を忌み嫌う教育とはいったいいかなるものだろう。

◆ この点に関しては、石原知事の発言は正しい。文部科学省は「日本で一番バカな役所」なのだ。ただし、この表現が石原知事の言う「日本語のもたらす語感、日本人独特の感性、情緒」であるかどうかは疑問である。日本語の品格としてかなうかどうかは、「国家の品格」の先生に聞いてみたいものである。

都教委の職員会議採決禁止の通知はおかしい

2006-04-15 18:45:24 | パラダイム
◆14日あるいは15日、新聞各紙によると「東京都教育委員会は13日、職員会議で、挙手や採決によって職員の意思確認を行わないよう指示する通知を都立高など全263校の都立学校長あてに出した」ようだ。

◆理由は「都教委では98年、『職員会議は校長の職務を補助する機関』と定義しており、今回の通知は、その趣旨を徹底するため」ということだ。

◆職員会議は校長がメンバーを選任した「企画調整会議」で決めた学校経営プランを教職員に報告、連絡などに限定したものなのに、実際には多数決などを校長が行っているから徹底するというのだろうが、全く愚かしい。

◆民主主義の理念や方法論を学校は学ぶ場所である。その教師が、民主主義的な基準に反する意思決定をして、学校経営をしているのは、「違憲」である。

◆毎日新聞(4月14日22時52分更新)によると、都高等学校教職員組合は14日、「学校現場を荒廃させる愚挙」と、撤回を求める声明を発表したそうだが、きちんと法廷で権利の闘争を行う智恵を働かせたほうがよいのではないだろうか。

◆朝日新聞(2006年04月15日00時10分)によると、識者から「都教委の顔色ばかりが気になり、校長のリーダーシップが発揮できなくなるのでは」との懸念の声もあがっているようだ。縦社会にありがちな島国的な組織の中間管理職の姿だ。自分の考えや信念に従わないから、理由もなく上司の言うことに振り回され、右往左往している姿。こんな中間管理職をリーダーにもつ組織は、弱体化するに決まっている。

◆このような教育行政が人材を潰していく。税金を払っている都民として、それは許せない。税金の有効活用をしていないからだ。恫喝している教育行政のトップの姿が目に浮かぶようだ。

◆同紙は3人の見識者の意見を収集している。元高校教師の「夜回り先生」、水谷修さんは「職員会議で反対しても、校長が決めたことには従ってきた。でも教師全員が意見を表明して議論を尽くすことこそ大切」と語っている。

◆教育評論家の尾木直樹氏は、「全校一斉に通知するのは、校長の手足を縛り、都教委の顔色だけをうかがう校長にすることが狙いなのではないか」と手厳しい。

◆漫画家のやくみつる氏は「校長先生には、みんなの意見を広く勘案して決断する度量の大きさが欲しい。教員の意見に右往左往するような校長を据える方が危ないのでは」 と。

◆いずれももっとも。そして同日の同紙の社説にはこうある。「通知や指示で学校をがんじがらめにするのが、どうやら都教委の流儀のようだ。学校運営の決定権を持ちながら、ハシの上げ下ろしまで枠をはめられる校長は気の毒である。挙手や採決を禁じられる先生も、まことにかわいそうだ。いや、だれよりもかわいそうなのは、児童や生徒たちだろう。学校の活力は、校長や先生の意欲と熱意から生まれる。先生が決定事項に従わされるだけの存在になれば、学校の活力が失われかねない。そんな学校で学ぶのは、子どもたちにとって悲劇である。こっけいな話というだけでは、すみそうにない。」

◆全くその通りである。


選択嗜好性の変化【10】 栄光と聖光

2006-04-15 12:28:17 | 学校選択
◆2004年データ 栄光学園
浅野・聖光学院②・サレジオ学院B・鎌倉学園③・麻布・逗子開成③

◆2005年データ 栄光学園
浅野・聖光学院②・鎌倉学園③・麻布・逗子開成③・サレジオ学院B


◆2004年データ 聖光学院
浅野・聖光学院②・サレジオ学院B・攻玉社(特)・駒場東邦・桐蔭中等教育学校

◆2005年データ 聖光学院
浅野・聖光学院②・サレジオ学院B・攻玉社(特)・駒場東邦・桐蔭中等教育学校

◆両校とも変化なしと言える。このように両校の併願校を併記してみてわかることは、栄光―麻布、聖光―駒場東邦という微妙な嗜好性の違いが見えてくる。

◆サンデー毎日2006年4月23日によると、麻布の東大合格者はは86名、慶應は121名。栄光は、東大が70、慶應76。駒場東邦は東大が46、慶應132。聖光は、東大43、慶應108である。

◆栄光の昨年の東大合格者数は56名であるから、今年は上出来だったとすれば、両校の合格実績に甲乙をつけるのは意味がないと考えた方がよい。

◆とすると併願嗜好が麻布と駒場東邦の違いに表れていると考えたくなる。麻布の破格な思想性志向と駒場東邦の堅実な理工系志向の違いが、栄光と聖光の選択の嗜好性の違いだろう。

◆ただし、聖光学院自身はこのような受験生自身の嗜好性を必ずしもよしとしていない。アインシュタインのような破格な思想的科学的物の見方のできる人材育成をイメージしているからである。



選択嗜好性の変化【9】 早稲田

2006-04-15 12:01:13 | 学校選択
◆2004年データ 早稲田
市川①・東邦大東邦(前)・渋谷幕張①・芝②・立教新座①・本郷③・早稲田②

◆2005年データ 早稲田
市川①・芝②・渋谷幕張①・東邦大東邦(前)・立教新座①・早稲田②・本郷③

◆嗜好性に変化はない。併願校を見ると、早稲田中と同程度以上の大学実績のある(6年後の可能性も含めて)学校を選択していることは明らかである。そして、同時に教育の豊かさや余裕のあるところを選んでいる。


麻布の論集

2006-04-11 22:00:43 | パラダイム
◆麻布学園の一番新しい「論集05’」を見せてもらった。学習プログラムをサポートしてもらっているスタッフに麻布出身の青年がいて、彼が持っていたから、少し拝見。

◆相変わらずの圧巻であるが、プラトンやアリストテレス時代から中世のトマス・アキナスまで言及した、政治論集が掲載されていた。さらにルソーやホッブスなど啓蒙自由主義、フランス革命の自由と正義論が論じられ、最後はJ.ロールズまで検討されているのだから驚きだ。

◆大学の政治学の論文顔負けである。しかもこの政治論集の動機は、麻布の自由とは何かを考えるところ辺りにあったらしい。理念や校風が在学生によって言語化されているのは麻布学園ぐらいなものではないか。

◆そういえば麻布の創設者江原素六は、プロテスタントであった。欧米の市民社会的自由にそのルーツはある。創設者の精神が古くて新しい表現で今も継承されているということなのか。実際江原素六は時の政府から多くの抑圧を受け、その度に不屈の自由の精神を現実化した人物らしい。麻布の自由は筋金入りでもある。

玉石混交の週刊ダイヤモンド

2006-04-11 00:12:55 | 学校選択
◆「週刊ダイヤモンド(2006/04/15)」は特集「息子・娘を入れたい学校」。実に真面目な記事もあれば、ミーハーものもあり、そして首をかしげたくだるような記事も載っている。

◆Part1の「名門校の教育内容」は圧巻。「かつての旧制中学・旧制高校のリベラルアーツ(教養教育)の伝統は、一部の名門校を除けば公立高校よりむしろ、私学に引き継がれた面が大きい」などなかなかの見識。ただし、「父親だからわかる教育の本質」というサブタイトルはどこかおかしい。

◆ほかのパートには、表層的な記事や首をかしげるような矛盾した記事もある。それは母親向けということか。母親が怒るのではないか?

◆「入りやすくてお得な学校」などというパートは、偏差値と大学進学実績の相関だけで学校選択を考えていて、ちょっと??。そこに通っている生徒たちの存在というものを無視することになりかねない。

◆小石川の遠藤校長先生の言葉を引用していることになっているが、本当だろうか。公立中高一貫校の適性検査に関して、「正解が1つしかない私立の問題とは違い、ものの見方の本質を問う。塾で勉強した子は答案がワンパターンだから、そういう生徒はうちに向かない」と言ったそうだが、信じられない。知識人遠藤校長先生が、こんな素人のような発言をするだろうか。

◆正解が1つしかない私立の問題?そういう問題もあるだろう。しかし御三家クラスの問題は必ずしもそうではない。ものの見方の本質を問う?ハイデガーも間違ってナチに入党するほどの哲学的難問。適性検査でそんな難問だしているはずがない。塾で勉強した子は答案がワンパターン?そんなことどうしてわかるのだろう。事前に塾に通っていたかどうか、個人情報を調べるようなことをしていたかな?

◆だいたい、適性検査と入試問題は違うと最初から言っているのに、その違いを引き合いに出して、結果的に適性検査の優位性を語るのは、比較の方法論が違うのではないか。

◆しかし、その校長の発言を「舌鋒鋭い」と持ち上げるのも本誌。これはもしかして皮肉?だとしたら、すごいチャレンジャブルな編集ではないか。一読に値する。購読もしくは図書館で読むことをオススメする。