クラシック 名盤探訪

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とっておきの名盤 その99 モンテヴェルディ 聖母マリアの夕べの祈り(ミサと挽歌)

2007年08月29日 | とっておきの名盤「声楽曲」
モンテヴェルディは17世紀前半に活躍した初期バロックの作曲家で、私の最も敬愛する古楽の作曲家シュッツの次に傾聴する存在。
彼の手になる珠玉のマドリガーレ「アリアンナの嘆き」などは、いまだに理想の盤にめぐり合っていないのが残念で、是非同好の氏のアドバイスがあればと常々思っている程。
「聖母マリアの夕べの祈り」の素晴らしさを知ったのは、故菅野浩和氏の一文によるものだった。
少し長くなるがその文章を載させていただく。
「こんなに深い味を持った、滋味尽きない音楽を、私はそれまでに全く知らなかった。
ずいぶんいろいろな音楽を聴いてきたつもりだったが、これほど感動的な名曲があるのかと、私はその日からこの曲に夢中になった。
それ以来、しばらくの間は、寝てもさめてもこの曲のどこかの部分が耳に鳴り、この曲以外のどんな音楽も虚ろにしか響かない日々が来る日も来る日も続いた。
まさに中毒症状である。
この中毒症状から脱したのは、およそ一ヶ月くらい経ってからだろうか。
だからといってその後の私は、この曲に感動しないというのではなく、やはり相変わらずこの音楽は、私の最も大切な、いわば「魂の音楽」である。
全部の曲を通すと三時間もかかるこの大曲の、終末に置かれている二曲の「マニフィカート」の壮麗さ、深遠さはどうだろう。
「マニフィカート」は古典派時代にいたるまで、何人もの作曲家によっていくつもの名曲が書かれてきた。
しかしこの二曲のマニフィカートの前には、他の総ては色褪せてしまう。」
__菅野浩和著「神の歌 人の歌」より。
この一文を読んで、この曲を聴きたくないと思う人などいる筈も無い。
すぐにこの曲のCDを買い求めたのだが、なかなか自分の気持ちに合う盤にめぐり合う事が出来なかった。
そしてやっと手にすることが出来た理想の演奏が、ここで紹介するこのシュナイト盤だった。
その古雅で叙情的な演奏は、純粋な祈りと人間的な暖かさが満ち満ちていて、聴いている人の魂を何と心底から暖め慰めてくれることか。
とっておきの名盤として取り上げない訳にはいかない一枚。
・ハンス=マルティン・シュナイト指揮、レーゲンスブルク大聖堂少年聖歌隊、エスウッド・スミス<C-T>、パートリッジ<T>、ハンブルク古楽合奏団 <ARCHIV>