毎日が観光

カメラを持って街を歩けば、自分の街だって観光旅行。毎日が観光です。

先週の読書

2009年01月13日 12時10分00秒 | 読書
 いや、まさか早稲田が勝つとは思わなかった、大学ラグビー。今年の帝京は強く、また激しく、ちょっと早稲田は厳しいかな、と思っていたのだが、やはり決勝となると伝統校の強みが出た気がする。ずいぶん前だけれど、大阪体育大学との準決勝を思い出した。帝京も大阪体育大学も、もう一度やったら勝ったんじゃないかと思う。


早乙女貢「会津士魂」第1~3巻   新人物往来社

 暮れに亡くなった早乙女貢氏の代表作。全13巻のうち、今週は3巻まで。
 もともと明治維新などというものが嫌いなぼくにとっては自分の主張にかなり近い本なのだけれど、それでもやはり片方を下げすぎ、片方を上げすぎというきらいもなきにしもあらず。事実がどう、というより著述のやり方として。
 明治維新が嫌い、だと言うと、じゃあ、お前はいまだにちょんまげ、刀ぶらさげてる時代劇みたいな世の中がいいと言うのかと質問されそうだけれど、そんなことはない(というか、それはそれで楽しそうな気もするけれど)。薩長と公家の一部が自分たちの野心むき出しに成り上がったことを美称したのが明治維新にすぎない。事実、あいつらは開国を容認する幕府に攘夷しろと迫っていたんだから、時代錯誤もはなはだしい。
 幕府の作ったドライドックが今でもアメリカ軍横須賀基地で現役で使われていることから考えても、薩長などがしゃしゃり出ずとも、十分幕府主導で近代化はできたはずである。
 しかも大政奉還して望み通りになったにも関わらず、薩長は自分たちだけがトップになるために戊辰戦争をしかけてきた。
 戊辰戦争に勝つと、会津藩全体を下北半島に流し、昭和になるまで、会津は朝敵であると教科書に載せ続けた。
 以前読んだ、半藤一利と保坂正康の「『昭和』を点検する」に面白い一節があった。

半藤 こういうこと(日本は戦争でアメリカに勝てる)を言った人、すなわち日本を破滅の淵に引きずりこんだのはみな薩摩と長州の出身であった。いつもこの話になると、ついよけいな話をしたくなるんですが、あの戦争を終わらせなくてはならないといって、命懸けで頑張った人は、みんな明治維新のときの賊軍側なんですね。米内光政は盛岡藩、井上成美は仙台藩、それから鈴木貫太郎は関宿藩、みな御一新の際に賊軍側だった人たちばかりなんです。明治国家をつくったのは薩長かもしれないがダメにしたのも薩長であった。そしてそれを救ったのは賊軍である。

 長州は藩を二つに割って、藩の中で殺し合い、めぼしい者はどんどん死んでいった。維新の元勲などといっても山県有朋や伊藤博文などは、その殺し合いの中で標的にさえならなかった小物ばかりだ。

「天下を奪おうという野望は、金銭をも、湯水のように費消する。公金を女と酒につぎこんで、英雄とされるのが、祇園という色街である。長州の桂小五郎(木戸孝允)と幾松の関係なども、その間の消息を物語っている。こうした風潮が、山県狂介(有朋)や伊藤俊輔(博文)などの後年の破廉恥きわまる行動になってあらわれている。そして、それはたんに好色の問題だけではなく、色街と政治との結びつきという悪習を一世紀後の現代にまで持ちこしてしまうのである。
政治汚職は、色街と政治の結びつきから起こっている。明治維新というものの性格も背面から見ると、いかに私利私欲に裏打ちされたものか理解される」(「会津士魂第3巻」)



中沢新一「対称性人類学」    講談社選書
 中沢新一のカイエ・ソバージュを後ろから読んでいこうとする企画。そんなわけで最終巻「対称性人類学」を読む。
 区別するよりも同質性を重視する対称性人類学は、したがって人間と動物との間に隔絶された境界線を引くことを拒絶する。しかしそれでは人間は生きることができない。同質性を強調していけば、人間は仲間を殺して食うことになってしまう。そこで対称性の論理に対する非対称性の論理と、このバイロジックな論理によって社会は運営されていく。
 しかし、その2つのうち非対称性の論理だけが前面に出てきてしまっているのが現代社会であり、今の社会に多く存在する問題や困難は対称性の論理を喪失してしまったことによる、とこの本は説く。
 その一方で対称性の論理は決して滅びていないとも指摘する。それはわれわれの無意識そのものなのだ、と。
 そこから始まる、無意識、仏教、性を巡る中沢新一の大冒険はわくわくスリリング。

コメント (2)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 今週聴いたCD | トップ | 上野・谷中 »
最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
『会津士魂』 (HN097)
2009-01-26 21:05:09
はじめまして!!
何気なく“会津士魂”で検索し、こちらのブログを見つけました。私は早乙女貢氏が逝去されたということではなく、興味を覚えて会津若松を訪ねたことが引金で、この大作に出くわしたのでした。何となく思うのですが、揺れる時代であるからこそ、所謂“明治維新”の時代等を扱う小説は価値が増すような気もします。
それにしても…この大作を紐解いている最中の同志が見付かって嬉しく思いました。
返信する
はじめまして! (aquira)
2009-01-27 00:17:03
 コメントありがとうございました。
 この本に触発されて、つい先日会津若松へ旅してきました。
 でも、「会津士魂」は4巻で挫折してしまいました。この後は悲しいことばかりになりそうで。でも、また挑戦します。13巻とは言わず、続編までも。
返信する

コメントを投稿

読書」カテゴリの最新記事