毎日が観光

カメラを持って街を歩けば、自分の街だって観光旅行。毎日が観光です。

先週の読書

2008年07月23日 00時56分47秒 | 読書
 久しぶりに体重が60kgを切った。
 いろんなダイエット法が巷でもてはやされてるけれど、自転車に乗れば簡単に痩せられる。自転車いいね。でも、たった60km走っただけで頭くらくらっすよ、この季節。脳のタンパク質が変質している感じがするんっすよ、走りながら。ああ、また海馬の細胞が壊れていく。台所の引き出しを開けて、あれ? 何とろうとしたんだっけ? などと固まることが多くなるのか。
 それはそうと、どうなってしまったんだ、Fマリノス。
 負のスパイラルというかサッカーの暗黒面というか、何かおどろおどろしたものがピッチに渦巻いていて、マリノスの選手達がみんな引きずり込まれているかのようなそんな6連敗。5月になってから一度も勝ってない。木村和司がJリーグタイムでものすごく不機嫌だったのがおかしかったが。それにしても、たった半年でここまでチームを悪くさせたあの監督の手腕はすごい。オーストラリアに送り込みたいね。


藤田宜永「転々」       新潮文庫
 先日、映画「転々」を見てよかったので。
多くの場合、原作より映画の方がイマイチ感漂ったりすることが多い。一つには詰め込める題材の量。エピソードにしろ、描写にしろその中身は圧倒的に小説の方が濃くできる。誰も全18時間の映画など見たかないからね。それから演出的あざとさ。これも映画の方があざとい。小説にもあざといものがある。しかし、そのあざとい小説を読解し、演出する過程で二重のあざとさが生まれてしまう。
 ところが、この「転々」について、それが当てはまらない。むしろ原作の方があざといのだ。とくに麻紀子。これはあざといだろう。やりすぎだろう。
あの映画は、設定だけ小説から借りて、ほぼ独自のストーリーを展開していたのか。それであれか。すごいな。あの監督は作家としてもすごいんじゃないか。
 映画と違ったよい点、それは小説の舞台がぼくの地元。なんか嬉しくなっちゃうね、そういうのって。
「気がつくと、六義園の横を歩いていた。周りは高級住宅街で、田園調布のお屋敷街に迷い込んだような錯覚に陥った」
 これはこないだ書いた「美意識過剰?」で書いた鳩山邦夫んちのあるところのこと。


梅原猛「神と仏」対論集第2巻         角川学芸出版
 そうか、ニーチェやハイデッガーはフランスの方が研究が進んでいるのか。なるほどね、ナチとの関連でね。それにしても中沢新一は刺激的だ。
 ところが肝心の梅原猛がぱっとしない。中沢新一は関心範囲が重なるからまだいいものの、松井孝典、日高敏隆との対談になると、なんだか上滑りしている感じがする。
 松井孝典の外惑星についての話にはなおざりな返事で流しつつ、柿本人麻呂の話になると、「戦争中も何度も『万葉集』を原典で読んでいた」と発言。おいおい、原典以外の何語で読むんだよ、「万葉集」を。英訳か? 欧米か?
 日高敏隆とドーキンスの話になると、論理性は破綻し、日高の利己的な遺伝子に関する説明に「それもわかるんです、よくわかるんですが、ドーキンスが「これでもかこれでもか」といろいろな事例を挙げますね、利他的に見えているものが、実は利己的なものだ、と。これが僕には耐えられんのです」って、単にあんたの好き嫌いだろうが。
 日高敏隆との対話に至っちゃ

 梅原 植物は何らかの方法でこの世界を感じて、やはり抽象化している。知能があるんです。
日高 植物に知能があるかどうかはわかりませんが。

 なんだか武者小路実篤の「ますます賢く」を思い出す。いや、あそこまでひどくはないが。


高橋源一郎「ジョン・レノン対火星人」   講談社文芸文庫
 ああ、悲しい、悲しい話だ。
 ポルノ小説家の主人公。
 主人公の恋人「パパゲーノ」。
 東京拘置所から釈放されたものの、様々な死体が頭を離れない、精神を病んだ「すばらしい日本の戦争」。
 片方の足の運動機能の損なわれ具合がリリックな「ヘーゲルの大論理学」。
 かつて英雄的闘志であり、現在「横浜福富町トルコ『ハリウッド』のNO.1ホステス」の「テータム・オニール」。そして同僚の「石野真子」。
 これらの人々が「すばらしい日本の戦争」の病を巡って献身的に働く本筋に、なんとも楽しくもの悲しいエピソードがからんでいく。
 勃起しない資本論おじいちゃんをものの見事に勃たせ、性交に導いた石野真子。
「ああ……おまえは資本論・第1巻だね? そうだね?」
「ええ、そうよ、わたしはフランス語版資本論・第1巻よ、おじいちゃん」
 爆笑。わざわざフランス語版ってとこがおかしい。マルクスの改訂が入ってるから、特別なんだね。
 ここに描かれているのは、暴力、エロス、死と他者、そして義。奥泉光の「バナールな現象」につながる感じがする。
 あと、内田樹による解説が白眉。今読んでいる高橋源一郎の「ニッポンの小説」に見事重なるテーマ。内田樹の「死者と他者」が高橋源一郎に与えた衝撃は大きかっただろう。2chでの「お前は俺か」的な。
 死と他者は、たとえばカミュの「異邦人」を読みほどくのにも有効な視点であると思う。今月の原稿は「異邦人」にしようっと。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする