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バーバラ・ボニー 「清澄なる歌声」

2007年06月13日 17時54分08秒 | 音楽
 物憂く始まりやがて激していく歌いぶりが素晴らしく、バーバラ・ボニーのファンになったきっかけはシューベルトの「糸を紡ぐグレートヒェン」。
 もともとぼくはこの曲が大好きなのだ。シューベルトが17歳くらいの頃の作曲だが、実にいい。
 話が横道にそれるけれど、シューベルトって、かなりエロティックな気がする。ベートーヴェンにはあまり感じられないエロスをシューベルトには感じるのだ。この曲もそうだし、弦楽四重奏曲の「死と乙女」や孤独と向きあった印象のある「冬の旅」ですら(別に彼が梅毒だったから、とかそういうことではなく。極貧で亡くなったところや女遊びが好きだったとか、啄木を思わせるなあ)。「冬の旅」に孤独という状況下でのエロスの希求、果たせぬあこがれを感じる。だからこそ、より孤独なのだろう。
 そんなわけで、今日のBGMはバーバラ・ボニーの「清澄なる歌声」。いろんな盤からの寄せ集めなのだが、却って、ダウランドやパーセルからロイド・ウェバーまでさまざまなものが楽しめる曲編成になる。基本的には彼女の歌が中心になるのだけれど、共演もなかなかいいのだ。バッハのコーヒーカンタータはレオンハルト、ペルゴレージのスターバト・マーテルはレ・タラン・リリク(レ・タラン・リリクの演奏、歌手にヴェロニク・ジャンス、サンドリーヌ・ピオーを迎えたF.クープランの「聖水曜日のための3つのルソン・ド・テネーブル」はよかったですねえ、とても)。
 ロイド・ウェバーの「ピエ・イェズ」はさすがミュージカルの作曲家、初めて聴いても耳馴染みがいい。
 が、しかし、ぼくの一番のお気に入りは何と言っても(誰も何も言わないが)R.シュトラウスの「けだかくも美しき花嫁に」(「薔薇の騎士」より)。バーバラ・ボニーという歌手とR.シュトラウスの相性はとてもいいと思う。R.シュトラウスの音楽はとても知的でよく計算されていて、そしてドビュッシーとは違ってある意味密室的である。そんな音楽には、彼女のような知的なソプラノ・リリコがいい。この音楽は見事に美しく、その声に触れるとまるで春の夢に包まれているかのよう。
 いいCDなのだが、今日自転車こぎながら聴いていて、まあ、自転車には合わないかな、と。だけど、自転車を停めて、朝の長い光に照らされた岩淵水門を眺めながら聴くには最適でありました。
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