毎日が観光

カメラを持って街を歩けば、自分の街だって観光旅行。毎日が観光です。

十三人の刺客

2007年02月04日 23時01分08秒 | 映画

 新しいメディアが出ると、当初は売れ筋の新譜のみの発売になるのだが、メディアの成熟とともに、さまざまな旧作、奇作も登場するようになる。ヴィデオもCDもそうだったし、今はDVDがそうなりつつあるように思える。
 TSUTAYAに行くと、ああ、これもDVDになったのか、と感心することが多い反面、これはまだなのか、と思うこともあるわけで、まあ、成熟の途上って感じか。ウッディ・アレンの「スターダスト・メモリー」とか「マル秘色情めす市場」(タイトルはあれなんだが、日本映画の傑作の一つだと思う)とか早くDVDになんないかな。「血槍富士」や「ロング・グッドバイ」がDVD化されたときは嬉しかったな、と。
 さて、そんなわけでTSUTAYAの棚で見つけたのが「十三人の刺客」。
 制作は1963年。しかし決して古臭くない。むしろテレヴィなどでの時代劇を見慣れた感覚からすれば斬新と言えるだろう。傑作である。
 悪行の限りを尽くす明石藩の殿様。これに手を焼いた江戸家老が老中の門前で切腹をして訴える。老中としてもこれを取り上げないわけにはいかないものの、悪いことにこの殿様ってえのが将軍の弟。しかも来年には老中に取り立てられることも決まっている。
 問題にすると上様の弟を裁かなければならない、ほっておくとそんなものが老中になって国を誤らせてしまう。
 苦渋の末、老中土井大炊頭が選んだ手段が暗殺。失敗すれば当然のごとく死が待っている、成功しても将軍の弟を殺した以上、やはり待っているのは死。暗殺を命じることは、死ねと命じることに等しい。命を下す老中土井大炊頭、命を受ける島田新左衛門。老中土井大炊頭を丹波哲郎、島田新左衛門を片岡知恵蔵。
 一方この殿様を守るのが内田良平演じる鬼頭半兵衛。彼は冷徹にして頭が回る。そしてそれと矛盾することなく熱い人間だ。自分の殿様が悪いことはちゃんとわかっている。一緒になって悪さをして甘い汁を吸おうとも思っていない。切腹した家老の一族を虐殺から免れさせようと努力する人間だ。しかし、武士として主君を守るのが使命と、全力を挙げてこの殿様を守る(この内田良平という俳優がよい。彼はまた「ハチのムサシは死んだのさ」の作詞者でもある)。彼がこの映画に奥行きを与えている。
 さて、この鬼頭半兵衛に対して、片岡知恵蔵たち13人の刺客はどんな策で暗殺をしようとするのか。
 物語の最初あたり、尾張藩でのこの殿様の狼藉が彼の悪さを物語ると同時に、後半のふくらみになるところなど実にうまい(ここの月形龍之介がまたいい!)。さらに、集団での武闘。恰好いいと思っていた刀での斬り合いが、こんなに無様で恰好悪いものなのか。西村晃の倒れざまなど、時代劇の様式美とは180度異なる。長い泰平の江戸時代末期、斬り合いなどしたことのない武士たちの、たぶん生まれて初めての殺し合い。それがここで見られる殺陣である。
 久しぶりに見て、また感銘を新たにした。
 「切腹」なんかもTSUTAYAにおいてないかな。


*「マル秘色情めす市場」はDVDになっていました。「マル秘」の部分を入れると検索できなかったのだけれど、そこを削って「色情めす市場」と入れるとアマゾンがヒット。しかし、品切れでありました。がくし。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする