かつて水銀は丹とも朱とも呼ばれ、非常に価値のあるものであった。
金を採集したり、金銅仏などに金メッキを施したりするために使われるほか、仙薬や化粧品としての用途もある。
丹生(にゅう)という地名はそうした水銀にちなんだ地名である。
かつて伊勢の丹生には、日本で唯一水銀座があったほど、水銀が豊かであった。
それもこの中央構造線によるものである。
写真は丹生大師。天の岩戸から40キロほどのところにある。
隣に丹生神社が隣接している。
もちろん大師は神宮寺であり、明治以前は渾然一体だったのだろう。
水銀あるとこに弘法大師、とアステカの古い諺にもあるように(ない)、ここにも弘法大師が足を運んでいる。
この神社近くに水銀の大鉱脈があり、奈良の大仏の鍍金にはここの水銀が使われたといわれる。
丹生一族はまさに水銀によって栄えた一族であったに違いない。
しかし、往古のにぎわいはすでになく、さみしい風情の場所だ。
丹生大師、丹生神社、少し長居したのだが、誰一人として出会うことはなかった。
写真は参考までに高野山の丹生明神。
さて、ここまで来たら中央構造線、じかに見たいではないか。
ここからなら100キロほど。
レンタカーを帰す予定の松坂までは250キロほど。
走ることにしよう。
今日一日で300キロ近く走ることになる。
次は伊雑宮そばにある。日本百名水の一つ恵利原の湧水。
カルスト湧泉である。
カルストとは、石灰岩が水によって浸食され穴が開いた地形。
石灰岩は一様に水に浸食されるわけではなく、その弱いところを集中的に溶かされる。 そのため奇異な地形や湧泉、洞穴などとして姿を現す。
秋吉台が有名だけれど、日本中に存在する。
集中的に溶かされるところが小さな一点であれば、水が通るだけの穴だろうし、人が入ることができる程度に大きければ、鍾乳洞などとなる。
この集中的に溶かされるところが断層である。
したがって、こうしたカルスト地形は断層と切っても切り離せない。
そしてこの伊勢近くには前述の通り中央構造線という大きな断層が走っている。
水銀だけでなく、こうした湧水も断層のたまものである。
さらに湧水地から山奥へ300メートルほど行くと、湧水より大きな穴のあいた、天の岩戸がある。
ここに至る道からすでにものすごい雰囲気で、一人でここに来たことを激しく後悔した………。
ここの写真はあまりありません。早足での訪問でした。あー、こわかった。
鳥羽でレンタカーを借りる。
トヨタヴィッツ。ちっこくてかわいい。おまけに車体が軽いからビュンビュン軽快に走ってくれるのでよく借りる。
一昨年長野に行ったときも、去年東北に行ったときも、ヴィッツ。
今日はなかなかハードな旅になりそう。
まずは鳥羽から15キロほど南下して伊雑宮へ。
写真は伊雑宮本殿。伊勢神宮と同じく横へ遷宮予定。小さな祠は遷宮した際、真の御柱を建てる場所。
天照大神について、もう一つ面白い特徴がある。
それは非常に中国的である、という点(もっとも天皇という称号そのものが中国的なのだが)。
この伊雑宮には非常に有名な田植え祭があり、そのときの竹取という行事に使う旗に大きく「太一」と描かれているのである。天照大神が中国の最高神と習合しているのだ。
驚くことは別にない。中国起源の陰陽道を天武期以降日本では政府あげて研鑽、実践しているのだ。
ここにも伊勢神宮を巡る謎の一つが存在する。ここには内宮の謎があり、たぶん、丹後の国には外宮の謎がある、と思う。